こんばんは。
アルツ君の息子ヤッチです。
(^_^)/~
最近のアルツ君ですが、身体を動かすのが億劫なのか、『散歩に行こう。』と言っても、なかなかよい返事が返って来ません。
散歩に行く場合は、少しでも歩行距離を稼ぐために、居室のある三階から歩行器を使って一階のエントランスまで歩いてもらい、そこから車椅子を使って出かけています。
ですが先週も、一緒に散歩に行こうというところまで漕ぎつけたのですが、施設のエントランスに向かって廊下を歩いている途中、眠くなってしまい、廊下に設けてある長椅子に座りこみ、そこで座ったままコックリコックリ…。
歩行距離にして、およそ30メートルといったところでしょうか…。
結局、散歩は断念し、居室のベッドで寝てもらい、その日はヤッチも帰ってきてしまいました。
少しでも歩いてもらって体力を維持してもらいたいところですが、無理をさせれば疲れてしまい、その反動で返って体力が落ちてしまうことになりかねません。
なにか本人のやる気を起こさせ、楽しんで体力を保持できるものは無いんでしょうかねぇ…???
口のほうは相変わらず衰え知らずというか達者ですが、こちらもまあ、意味不明、理解不能なことを言う場面が少し増えて来たかなという気がします。
昨日も面会に出かけてきましたが、ヤッチが居室の扉を開けると、ベッドに横たわりながら、一人で何かをしゃべっています。
しかも、上着を床に脱ぎ捨て、半袖の下着のシャツ一枚で…。
目を閉じたまま、まるで誰かと会話をしているようです。
急に話し掛けちゃいかんと思い、しばらく聞いていましたが、全く内容がわかりません。
ヤッチは居室の片隅に立ったまま、その会話を聞いていましたが、アルツ君がヤッチの気配に気づき目を開けます。
アルツ君:「お?お前、いつからそこにいるんだ?」
ヤッチ:「『三年前から』って言ったらどうする?」
アルツ君:「ちぇっ、中途半端だな。どうせなら十年前にして下さいよ。十年前に…。」
ヤッチ:「ところで、今、誰と話してたんだ?寝言にしちゃあ、長かったような気がするけど…。」
アルツ君:「誰ともしゃべってなんかいやしませんよ。お前の空耳だろ!?なっ?コウちゃん?」
ヤッチ:「んっ?誰だ?その『コウちゃん』って?」
アルツ君:「お前は知らないけど、『コウちゃん』っていうのがいるんだよ。」
ヤッチ:「前に『ケンちゃん』っていうのは聞いたけど、また新しい登場人物か?」
アルツ君:「そうだ。」
ヤッチ:「あんまり登場人物増やすなよ~。どっかのドラマみたいに視聴率が落ちて、わけわからなくなるから…。」
アルツ君:「そうは言っても、昔から『コウちゃん』っていうのがいるんだから仕方がないだろ!?『コウちゃん』っていうのは俺より背が高いんだぞ。」
ヤッチ:「だいたいさぁ、いつの話しなんだよ~?」
アルツ君:「俺が『十三七つ』の頃だ!」
▽引用(始)
- 十三七つ(じゅうさんななつ)とは…
- 『お月さまいくつ,十三七つ』の童謡から出た言葉。
十三夜の七つどきの月の意で、まだ若いこと。
△引用(終)
ヤッチ:「また難しい言い回しだなぁ~。何だかオオカミでも出てきそうだな?」
アルツ君:「オオカミは出てこないけど、赤犬は美味いぞ。お前、食ったことないでしょ?」
ヤッチ:「もう、いいよ!ゲテモノ食いの話しは…。」
どうやら、アルツ君の少年時代、もしくは幼少期が脳裏に映り、それを回想して会話をしているような気配です…。
ヤッチ:「ところで何で上着を床に脱ぎ捨てているんだ?」
アルツ君:「知らん。俺が寝てるあいだにオオカミでも食いちぎりに来たんだろ!?」
ヤッチ:「どうでもいいけど、半袖一枚じゃ風邪ひくぞ?」
アルツ君:「いいんだよ。引いたって足したって。」
ヤッチ:「『風邪を足す』ってどうやるのかね?」
アルツ君:「知らん!」
ヤッチ:「まあ、どうでもいいけど散歩に行こうぜ?」
アルツ君:「今日はやめとく。」
ヤッチ:「そのセリフ、もう聞き飽きたよ。」
アルツ君:「俺は飽きてない。」
ヤッチ:「行こうよ?」
アルツ君:「やだ。」
ヤッチ:「どうして?」
アルツ君:「どうしても。」
ヤッチ:「なんで?」
アルツ君:「なんでも。」
ヤッチ:「かんで?」
アルツ君:「なんでもかんでもっ!!」
ヤッチ:「じゃあ、ここまで車椅子を持ってくるからさ~。なっ?」
アルツ君:「持って来てから考える!」
ヤッチは居室を離れ、エントランスへ車椅子を借りに行きます。
居室に戻り、車椅子を中に入れます。
ヤッチ:「インチキおじさん登場!持って来たから行くべ!」
アルツ君:「うるせーな…。散歩、散歩って…。行きたきゃ独りで行きゃーいいんだよ…。」
アルツ君に身支度させ、強制的に外へ連れ出します。
ヤッチ:「外は寒いべ?さっきみたいに半袖じゃ?」
アルツ君:「俺はちっとも寒くないぞ。厚着してるし…。」
居室で上着を脱ぎ捨てていたことは、この時すっかり忘れているようです。
散歩中の会話はいつも通りで新鮮味に欠けると思うので、省略させていただきます。
…
散歩から戻り、車椅子を押して施設の廊下を歩きます。
普段と違いアルツ君が車椅子に乗っているからなのでしょうか、アルツ君は多くの職員さんから声を掛けられます。
『あら?お散歩?お天気がよくて良かったですね。』、『今日は素敵なお帽子を被ってらっしゃいますね。』、『寒くなかったですか?』…。
アルツ君、そのたびに愛想をふりまくので、居室に到着するころにはクタクタです。
アルツ君:「おい、俺は部屋に戻ったら一寝入りするからな?」
ヤッチ:「了解いたしました、ご主人様。すでにお部屋の前でございます。」
アルツ君:「え?なんだ、そうか…。もう着いたんだ!?」
居室の扉を開け、二人は中に入ります。
アルツ君:「そういえば、隣のばあさん、死んだらしいやぁ…。」
ヤッチ:「隣りって○○さん(隣の入所者さん)のこと?」
アルツ君:「そうだよ…。」
実は、アルツ君の隣りの居室には100歳とか101歳になるおばあちゃんが入所していました。
確かこの間の連休明け(11月4日?)にお亡くなりになられたんです。
後で生活相談員さんからお伺いしたところ、末期のがんだったそうな…。
相談員さんがこの特別養護老人ホームで働き始めたときに入所された方らしく、施設で10年以上生活されたことになります。
個人情報の範囲なので、部位など事細かに聞けませんでしたが、おばあちゃんのご家族からは延命措置はとらないよう言われ、看取り介護(看取りケア)の段階だったそうです。
確か先月か先々月に入院されて、また施設に戻ってきていたので、ヤッチはてっきりお元気になったとばかり思っていました。
おばあちゃんがお元気な頃は、アルツ君とは犬猿の仲で、一触即発の場面も多々ありました。
ヤッチも最初はちょっと苦手なタイプでしたが、いつしか施設で顔を合わせると、ハイタッチで挨拶する間柄になっていました。
ちなみにおばあちゃんのほうは車椅子ですが…。
最近はこのハイタッチを返すおばあちゃんの力も段々と弱くなり、退院されてから少し痩せたかな!?と思っていた矢先のことでした。
お亡くなりになる前日には、おばあちゃんのやんちゃな声も聴いていたんですがね…。
とても残念です。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
ところでアルツ君ですが、おばあちゃんが亡くなられたことを知らないはずなんです。
施設側も利用者(入所者)に気づかれないように、居室からご遺体を運ぶ時には、十分配慮していることも聞いています。
入所されている方がお亡くなりになると、居室は何日間か空き部屋となりますが、特別養護老人ホームの待機人員は相当数いると聞いていますから、すぐに新しい入所者さんがやってきます。
今はまだこのおばあちゃんの居室は空き部屋で、新しい入所者さんは決まっていない様子です。
では、なぜ故アルツ君がこんなことを言い出すのか…???
空部屋となった居室ですが、昼間はともかく、夜間は灯りが点いていません。
いくら認知能力が落ちてきたアルツ君といえども、勘だけは鋭いですからねぇ…。
なんとなくわかってしまうのかもしれませんねぇ…。
省エネの問題や廊下を徘徊する入所者などの保安上の問題もあって難しいことなのかもしれませんが、空部屋となった居室の灯りは是非とも点けたままにしておいて欲しいものですねぇ…。
くだらないことかもしれませんが、もし施設関係のお仕事の方がご覧になっていらっしゃるならば、頭の片隅に留めておいていただけると幸いです。
さて、アルツ君の話しに戻ります。
ヤッチ:「なんで、○○さんを勝手に殺すんだ?」
アルツ君:「だって、部屋の灯りが消えたままだもの…。」
ヤッチ:「別の部屋にでも移ったんじゃないのか?旦那さんのセクハラが嫌になって…。」
ヤッチ、アルツ君の鋭い洞察力に上手い取り繕いの言葉が出てきません。
ある意味、取り繕いとは高度な技術です。
アルツ君:「いや。違うな…。俺も長いことないな…。」
ヤッチ:「ずいぶん、旦那さんにしては消極的な発言だな?」
アルツ君:「そうだよ。」
ヤッチ:「いよいよ悟りでも開いたか?」
アルツ君:「悟りは開かないけど、里芋なら食ってもいいなぁ…。」
ヤッチ:「あのな…。それだけ食欲の有る奴がそう簡単に死ぬと思うか?悟りを開いたんだったら、丸めるか?」
アルツ君:「どこを?」
ヤッチ:「頭だよ…。」
アルツ君:「嫌だっ!!お前と一緒にはなりたくないっ!!」
誰がハゲやねん!!
誰が灯りやねん!!
アルツ君
さすがです…。
(; ̄ー ̄川 アセアセ
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