アルツ君の再搬送先がK病院に決まりました。
すっかり外は真っ暗、冷たい雨も降り続いているようです。
アルツ君に続き、ヤッチは救急救命士さんに救急車に乗り込むように促されます。
席につき、シートベルトつけようとして、救急救命士さんが『閉めますよ~。』と言ったところで、ネクタイ姿の男性が立ちはだかります。
男性:「あの、会計をまだしていただいていないのですが…???」
どうやら会計事務の職員さんだったようです。
ヤッチ:「あ、すいません。ご覧のとおり取込み中なので、後日というわけにはいかないでしょうか?」
男性:「後日ですか…。わかりました…。」
ヤッチ:「後日、なるべく早くにお伺いしますので、申し訳ありません。」
男性:「わかりました。それと、患者様(アルツ君のこと)がこちらの検査着を着ていらっしゃるので、洗濯をしないで結構ですので、ご返却いただけますか?」
ヤッチ:「わかりました。会計に伺う時に、必ず持参してお返しいたします。」
救急車の後部のハッチが閉まり、動き出します。
救急車のドライバー、幹線道路を走行すればよいのに、なぜか裏道ばかりを走りたがります。
救急車はサイレンを回しているので、何も裏道を走る必要はないと思うのですが、何か事情が有ったのでしょうか。
おかげでこっちは強い揺れを感じ、脳を損傷しているアルツ君のことも心配になってしまいました。
アルツ君、時折寝返りを打とうという仕草を見せますが、ベルトで抑制されているので動けません。
諦めたのか、眠ってしまいました。
15分か20分くらいかかったでしょうか、再搬送先のK病院に到着です。
後部ハッチをノックする音が聴こえ、ハッチが開きます。
ヤッチはシートベルトを外し、外に降り立ちます。
おっと。
屋根なし?
冷たい雨の水滴が雨滴感知機能の増しているヤッチの頭頂部にあたります。
救急の入り口は通りに面していますが、屋根がありません。
これ、ゲリラ豪雨の日だったらどうなるんだろう?
ストレッチャーに載せられ、救急車から出てきたアルツ君もさすがに一瞬目を見開き、空を仰ぐような素振りを見せました。
アルツ君に続いて、救急室の中にヤッチも入ります。
大変失礼な話ですが、救急室というよりも、ガレージのようなところです。
屋根付きの車庫と言った方がイメージしやすいかな!?
かろうじてルームエアコンが設置され、空調が確保されていましたが、ちょっと肌寒い…。
しばらくそこで待っていると、手術着にマスク姿の男性が姿を現します。
救急救命士さんがその男性にJ病院で書いてもらった診療情報提供書やCD-ROMを手渡しています。
その男性は立ったまま、ストレッチャーに載ったアルツ君とヤッチにお尻を向け、カウンターテーブルのような所に書類を拡げています。
定かではありませんが、担当してくれる医師ではなく、助手さんのような印象です。
男性が消え、しばらくの間沈黙が流れます。
ヤッチが外の方を見やると、くもりガラス越しにサイレンを回した別の救急車が次の受け入れのために待機しているようです。
ヤッチはすでにこの時、心の中で『ヤバそうだな…。』を連呼しています。
すこし経って、先ほどの手術着姿の男性と一緒に白衣姿の中年男性が姿を現します。
その風貌から医師であることは間違いないようです。
チラリとこちらを見ましたが、すぐにお尻を向け、カウンターテーブルの書類に目を通し始めました。
医師:「脳梗塞だって?」
医師は立ったまま、こちらにお尻を向けています。
ヤッチ:「はい。J病院でベッドの空きが無かったのでこちらへ…。」
医師:「なんか、(J病院で)言ってた?」
ヤッチ:「梗塞から4時間半以内ならTIMだか、TPPをやれると言っていましたが、年齢的にも無理だろうと…。」
医師と手術着姿の男性:「それ、t-PA(血栓溶解療法)だろっ!」
ヤッチ:「はい、すいません…。」
なんで、こんなに横文字を知らないだけで怒られなければいけないのかという印象です…。
グレてやる…。
医師:「なんか、薬は飲んでいるのかな?」
ヤッチ:「J病院でですか?」
医師:「うん。」
ヤッチ:「点滴に何を使っていたかは、よくわかりませんが、J病院の看護師さんが私の目の前でバイアスピリンを2錠、飲ませていました。」
▽引用
バイアスピリン△引用
- 概説
- 血液を固まりにくくするお薬です。血栓や塞栓の治療に用います。
- 働き
- 血管内で血液が固まり、血流を止めてしまう状態を“血栓”といいます。また、血栓が流れ、その先の血管を塞いでしまうのが“塞栓”です。心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞)がその代表です。血管が詰まってしまうので、その先の組織が障害を受け機能を失ってしまいます。
このお薬の主成分はアスピリンです。アスピリンは少量で「抗血小板薬」として作用します。血小板の働きをおさえ、血液が固まるのを防ぐ作用です。おもに、狭心症や心筋梗塞、脳卒中(脳梗塞)などに用いるほか、川崎病にともなう心血管障害にも適応します。また、経皮経管冠動脈形成術(PTCA、PCI)においては、チエノピリジン系抗血小板薬との併用療法が推奨されています。おくすり110番ハイパー薬事典より引用
医師:「よく飲めたね?」
ヤッチ:「かなり無理やりでしたが、時間を掛けて…。むせずになんとかその時は飲んでいました。」
医師:「バイアスピリンじゃ、意味ないかもしれないよ!」
だから、俺が飲ませたんじゃないって…。
これからこの医師とフレンドリーになれるかはヤッチ次第だと思いますが、第一印象としては、苦手なタイプ決定です。
ヤッチ:「…。」
仮称K先生としましょうか。
何をおっしゃりたいのかヤッチにはわかりません。
K先生:「ま、ま、わかりした…。あっちで待っていて。」
手術着を着た助手と思しき男性がヤッチを案内します。
助手:「この廊下を歩いて行くと、待合室がありますので、そこでお待ちください。」
アルツ君とは一旦お別れです。
ヤッチは言われた通り、廊下を歩き、待合室にある長椅子に腰を下ろします。
外来の待合室のようです。
もう外来診療は時間的に終わっているのでしょう、人影はまばらです。
たぶん、救急患者のご家族なのでしょう、深刻な表情でひそひそと話しをしている姿も見えます。
この日、特養に行ってから今まで、ずっと水分を補給していなかったヤッチの喉はカラカラです。
飲料の自販機を見つけ、お茶を購入し、一気に飲み干します。
しばし、休憩と言ったところでしょうか。
事前に姉にはアルツ君がK病院に再搬送になったことを伝えてあります。
ここまで、アルツ君の最愛の妻であるキノコさんが登場していないことを不思議に思われた方もいらっしゃると思いますが、実はキノコさんずっと風邪をひいていて、やっとここへ来て治って、本調子ではありません。
なので、無理をさせてはいかんということで、ヤッチと姉がアルツ君のことをまかされているような状態です。
姉からキノコさんには連絡が行っていると思います。
一息ついていると、姉と姉の旦那さんがやってきます。
姉:「パパは?」
ヤッチ:「救急車でこの病院に来て、俺はここで待ってるように言われて、それっきり…。」
姉:「どこに居るの?」
ヤッチ:「さあ…。検査のほうは、J病院で済ませてるわけだから、後は病室だけだと思うんだけどね…。」
姉:「いろいろ大変だったでしょ?ごくろうさま。」
ヤッチ:「ほとんど座ってただけだからね。」
1時間くらい待ったでしょうか。
待合室にいる三人の前をアルツ君を乗せたストレッチャーが通り過ぎます。
いくつかある外来の診察室の一室に運ばれたようです。
姉:「あれ?今のパパだよね?」
ヤッチ:「だね。」
姉:「どこに居たんだろう?」
ヤッチ:「何だかこの病院、バンバン、救急患者を受け入れているみたいだから、ひょっとしたらずっと待たされていたのかもよ!?順番待ちしていたとか…。」
姉:「えっー!」
ヤッチが待っている間、待合室から見える外の大通りでは、引っ切り無しに救急車が出入りしています。
何でこの病院だけ、こんなにベッドが空いているんだろう…?
今度は医療事務をやっている職員さんが三人の前に現れます。
『入院のご案内』と書かれた冊子とこの病院のパンフレット、それに入院のための手続き書類一式を持ってきたようです。
姉が説明を聞き、印鑑が無いので、手続き書類の提出は翌日ヤッチが行うということでOKを貰いました。
ヤッチは後で書類に目を通せばよいことだろうと、姉にまかせてしまっていました。
姉から手続きの書類やパンフレットを預かり、家に持ち帰ると、書類の中には入院料金の記載がありませんでした。
『健康保険法に定める料金にて算定致します。』としか記載がありません。
国の診療報酬の改定が有った場合、案内書を刷りなおさなくて済むよう、コストを削減しているのでしょうか。
『入院保証金(任意):100,000円』はやたら目立つんですけどね…。
いずれにしても、入院してしまうわけですから、高いの安いの今さら言っても仕方がありません。
姉や姉の旦那さんとゴチャゴチャと入院の手続きについて話し合っていると、外来の診察室に呼ばれます。
アルツ君の運ばれた診察室の隣りです。
診察室には姉とヤッチが入ります。
診察室に座ってらっしゃったのは、先ほど救急室にいらしたK先生です。
K先生がいきなり切り出します。
K先生:「前にも脳梗塞をやってるね。はじめてじゃないね。」
ヤッチ:「それはJ病院の先生からも同じことを言われました。」
K先生:「そう。」
ヤッチ:「以前の脳梗塞って、いつぐらいのことなんでしょうか?」
K先生:「それはわからないな。」
ヤッチ:「そうなんですか…。」
K先生:「やったことはわかっても、いつっていうのはわからないな。」
ヤッチ:「…。」
K先生:「さっき、弟さんにちょっとお話ししたんだけど、普段バイアスピリンを飲んでいるらしいんだけど、シンゲンセイの脳梗塞だったら、バイアスピリンじゃダメだよ。」
姉:「シ・ン・ゲ・ン・セ・イ…???」
K先生:「ふふ、わからないようだから、コピーしようか?」
K先生はそうおっしゃって、コピーしたA4サイズ用紙をヤッチと姉に渡します。
一枚の用紙に裏表コピーしたものです。
一応もらった用紙を写メしてアップしましたが、意味をなしていませんね。
m(__)m
片面には脳の動脈の図説です。
もう片面には脳梗塞の種類の図説のようですが、今ひとつよくわかりません。
K先生は脳梗塞の種類の方を拡げて、説明を始めます。
K先生:「脳梗塞といっても、色々種類が有るんだよ。大きく分けると三つ。」
どうやら、『シ・ン・ゲ・ン・セ・イ』は『心原性』と書くようです。
このあと、K先生の説明が続きますが、ヤッチも姉もこの時は何を説明されているのか、全くわかりませんでした。
悔しいので、家に帰ってから、少し脳梗塞について調べました。
この記事をわかりやすくするため、調べたことを予備知識として載せておきます。
名称までおぼえる必要はなく、ヤッチのような素人レベルでは『そんなものがある』くらいでとどめておいた方が頭がかゆくならないで済むと思います。
脳梗塞にはK先生のおっしゃるように、大きく分けて三つあるようです。
▽引用
△引用
- 脳梗塞の成り立ち
- 「脳梗塞」は、脳の血管が細くなったり、血管に血栓(血のかたまり)が詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるために、脳の細胞が障害を受ける病気です。
脳梗塞は詰まる血管の太さやその詰まり方によって3つのタイプに分けられます。症状やその程度は障害を受けた脳の場所と範囲によって異なります。脳梗塞の種類
- ラクナ梗塞
- 脳の細い血管が詰まって起こる脳梗塞【小梗塞】
- 脳に入った太い血管は、次第に細い血管へと枝分かれしていきます。この細かい血管が狭くなり、詰まるのがラクナ梗塞です。日本人に最も多いタイプの脳梗塞で、主に高血圧によって起こります。ラクナは「小さなくぼみ」という意味です。
- アテローム血栓性脳梗塞
- 脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞【中梗塞】
- 動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなった太い血管に血栓ができ、血管が詰まるタイプの脳梗塞です。動脈硬化を発症・進展させる高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病が主因です。
- 心原性脳塞栓症
- 脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞【大梗塞】
- 心臓にできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰まらせるものです。原因として最も多いのは、不整脈の1つである心房細動。ミスターG・長嶋茂雄氏を襲ったのも、このタイプの脳梗塞です。
NO!梗塞.netより引用
K先生は説明を続けます。
K先生:「お父さんの脳梗塞がもし心原性、つまり心臓から来ていると、バイアスピリンを普段服用しているっていうけど、あまり意味が無いかもしれないよ。お父さん、不整脈が有るっていう話だからさ…。」
ヤッチと姉:「はい…。」
K先生:「バイアスピリンは抗血小板薬だから…。血液をサラサラにする薬でも違う薬を使わなくちゃ。」
ヤッチ:「ワーファリンかなにかということですか?」
K先生:「へー。よく知ってたね?」
ヤッチ:「母がたまたま飲んでいる薬だったものですから…。」
▽引用
ワーファリン△引用
- 概説
- 血液を固まりにくくするお薬です。血栓症の治療に用います。
- 働き
- 血管内で血液が固まり、血流を止めてしまう状態を“血栓”といいます。また、血塊が流れ、その先の血管を塞いでしまうのが“塞栓”です。心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞)がその代表です。血管が詰まってしまうので、その先の組織が障害を受け機能を失ってしまいます。
このお薬は「抗血栓薬」です。血管内で血液が固まるのを防ぐ強い作用があります。そのため、心筋梗塞や脳卒中の治療に用いられています。とくに、心臓の手術のあとや、心房細動などある種の不整脈により生じる脳卒中‘心原性脳塞栓症’の予防効果が高いことが分かっています。
そのほか、静脈血栓症、肺塞栓症、末梢動脈疾患、腎炎など、血栓や塞栓に起因するいろいろな病気に広く用いられています。ただ、効果発現までに1~2日かかるので、深部静脈血栓症などに対しては、まず低分子ヘパリンの皮下注射をおこない、維持療法としてこの薬を内服するのが一般的です。- 特徴
- 抗凝固療法として用いる代表的な抗血栓薬(抗凝固薬)です。長年にわたり、血栓や塞栓の治療薬として、標準的に用いられてきました。ただし、できてしまった血栓を溶かす作用はありません。血栓の予防あるいは進行の抑制を目的に使用するものです。また、アスピリンなど抗血小板薬とは作用のしかたが違うので、適切に使い分ける必要があります。
とくに心房細動に起因する各種の塞栓症に有用です。上手に用いれば心原性脳塞栓症のリスクを3分の2ほど低減させるといわれています。そのほか、いわゆるエコノミークラス症候群と呼ばれる深部静脈血栓症や肺塞栓症の治療にも適します。
一方で、治療域がたいへん狭く、用量の設定に細心の注意を払わなければなりません。少ないと効きませんし、多すぎると出血を起こしてしまうのです。他の薬剤や食物との相互作用を起こしやすいのも難点です。おくすり110番ハイパー薬事典より引用
K先生:「バイアスピリンは抗血小板薬、ワーファリンは抗凝固薬。似て非なるものだから。」
あまりにわかりにくいので、ヤッチ的に整理してみました。
整理すると余計にわかりにくいかも…。
まず、名称はともかく脳梗塞には大きく分けて三種類あります。
ひとつは先生のおっしゃっている、心臓から流れ星(血栓)がイッパイ飛んできて、脳の血管を塞いでしまう脳梗塞。
残りの二つは脳の血管の太さによって二分されますが、脳の中の血管を詰まらせたり塞いでしまう脳梗塞で、ザックリ言えば、『脳内だけ』で起こる脳梗塞ということになります。
心臓から流れ星(血栓)が飛んでくる脳梗塞では、作られる血栓の種類が違い、主に心房細動(心臓の心房が細かく動く不整脈の一種)で作られる血栓は赤色血栓というもののようです。
赤色血栓をサラサラにするには、バイアスピリンよりワーファリンの方が適しているという話です。
転んだりして膝小僧などを擦りむくと出血しますが、この出血を止める時、血小板が一生懸命頑張って傷口に堤防を築きます。
作られる血栓の種類としては白色血栓です。
堤防の決壊を防ぐために、傷口付近の血液がネバネバ(赤色血栓)になって、血小板を応援する接着剤になります。
これが凝固作用で対義語は抗凝固作用です。
この二つの作用で出血を止めるわけで、傷を治すという面からは、ありがたい働きですが、血液をサラサラにするにはありがたくないので、病気に応じてこれらの働きを抑制する抗血小板薬のバイアスピリンや抗凝固薬のワーファリンが存在するというわけです。
で、K先生はアルツ君の不整脈が心房細動(心臓の心房が細かく動く不整脈の一種)で、アルツ君の脳梗塞が心臓から飛んでくる流れ星系の脳梗塞ではないかと考え、抗血小板薬のバイアスピリンは適さず、抗凝固薬のワーファリンの方が適しているという風に考えたのではないかと思います。
だからどうなのよっていう話ですが…。
姉:「で、父の脳梗塞は先生がおっしゃっている心臓から来ているものなのでしょうか?」
K先生:「それは、まだわからない。いろいろ検査してみないと。今日検査をするのは無理だから、明日だね、明日。」
姉:「はぁ…。」
K先生:「じゃあ、待合室で待っていて。」
K先生から、アルツ君の病状が回復に向かっているのか、それとも悪くなっているかの説明も無ければ、どんな薬を使って治療をしていくのかの説明も無かったように思えます。
診察室から追い出されるような格好になってしまいました。
ヤッチの頭に『転院』の文字が浮かびましたが、もう受け入れてくれる別の病院は無いわけで、アルツ君をホームレスにすることはできません。
姉も首を傾げていたので、たぶん同じことを考えていたのだと思います。
待合室に戻り、二人ため息をつきます。
それから、さらに1時間くらいして、ようやくアルツ君の病室が決まったようです。
事務の女性職員が姿を見せます。
女性職員:「病室が決まりましたので、ご案内いたします。こちらのエレベーターへどうぞ。」
姉:「何階ですか?」
女性職員:「三階の○○号室です。」
この時、すでに夜の10時近くだったと思います。
三階に上がると、小さなデイルームで待つように言われます。
看護師さんが現われ、そこで看護師さんからアルツ君の日頃についてのことを聞かれます。
看護師さんからはアルツ君が他の入院患者さんの迷惑になるような場合はベッドを移動することもありうることを聞かされます。
暴れないようにベッドに固定されたり、ミトンを着けられ、指先を使えない状態にする抑制もあることも…。
色々な書類にサインをさせられ、今後の看護について聞かされます。
ここでも、『保存的治療』(手術によらない治療)という言葉が出てきます。
流行語大賞にノミネートされた言葉なんですかね~。
一通りの手続きが終わり、ようやくアルツ君の居る病室に案内されます。
案内された病室はナースステーションの目の前。
6人部屋です。
4人部屋を無理やり6人部屋にしたような感じで、ベッドとベッドの感覚が非常に狭い…。
当然、消灯時間(でも部屋は明るいぞ?)は過ぎているので、他の入院患者さんは就寝中です。
全員、ガオ(いびきがうるさい人~ヤッチ用語)です。
アルツ君もガオです。
姉が寝ているアルツ君の顔に近づき、小声でアルツ君に呼びかけると、いびきをかいていたアルツ君が目を開けます。
姉の顔がわかったのか、アルツ君、急に嗚咽し、泣き出します。
姉:「うん、うん、いい子だ、いい子だ。泣かなくてもいいよ。心配しないで…。ゆっくり休みな。」
姉がそっとアルツ君の顔を撫でます。
アルツ君、その声を聞き、安心したのか再び眠ってしまいました。
長居はできないので、三人は病室を後にしました。
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© 2023 アルツ君は職人
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アルツ君の息子ヤッチです。
アルツ君が脳梗塞でJ病院に搬送され、それからまたK病院に再搬送された日(2014/11/25)を入院初日とするなら、11月26日は入院2日目になります。
この日も冷たい雨が降っています。
朝早く、ヤッチのところへキノコさんから電話が掛かってきます。
キノコさん:「昨日、おじいちゃん(アルツ君のこと)、どうだった?」
ヤッチ:「うん…。やっぱり右手は動かないようだな…。検査、検査の連続だったから、今一つよく観察できなかったよ。」
キノコさん:「しゃべれるの?」
ヤッチ:「入れ歯をしていないせいもあるんだろうと思うけど、残念ながら、何を言ってるかわからなかったよ…。」
キノコさん:「そう…。」
ヤッチ:「でも、こっちが言っていることを理解できないっていうわけでもなかったぞ。J病院で看護師さんが『枕がずれてるから、少しだけ頭を上げられますか?』って言ったら、頭を持ち上げていたから。」
キノコさん:「そう…。」
ヤッチ:「病院の先生はこっちの言っている言葉も理解できないかもしれないって言ってたけど、それほどでもないような気がするんだよな…。俺の問いかけにも反応してたしな…。ただ言っていることを理解して反応しているのか、音に反応しているかはちょっと微妙だね…。もう少し様子をみないと…。」
キノコさん:「足の方はどうなの?」
ヤッチ:「たぶん、麻痺があるとすれば、右足になるんだけど、右ひざを自分で曲げられるんだよな…。仮に麻痺が有ったとしても、程度は軽いんじゃないかな…。」
キノコさん:「だといいんだけど…。」
ヤッチ:「まあ、旦那さんのことだから、すぐに元気になって、病院追い出されるよ。そっちの心配をした方が前向きだよ。あなたの方こそ風邪はどうなの?」
キノコさん:「ちょっと寝込んじゃったから、本調子じゃないけど、風邪自体は治ってるわ。」
ヤッチ:「でも、まだ無理しない方がいいんじゃない?奥さんまで倒れて入院でもされたら、俺の身体、半分にできないよ。」
キノコさん:「でも、おじいちゃんのこと、心配だから、今日、病院に行ってみようかなあと思って…。」
ヤッチ:「なんだか、一人で出かけるような言い方だね?病院がどこにあるかも知らないくせに…。」
キノコさん:「そこはあんたにお願いしようと思って…。」
ヤッチ:「病院の入院手続きに行かなくちゃならないから、出かけることは出かけるんだけど、ホントに大丈夫なのか?」
キノコさん:「大丈夫よ。」
ヤッチ:「病院の面会時間が13時からだから、お昼回ったら、奥さんの部屋に迎えに行くよ。暖かい格好でな?」
キノコさん:「どうやって行くの?」
ヤッチ:「俺なら、自転車かバスだけど、あなたにバスは無理でしょ。バス停まで行くだけでバテちゃうから。タクシー呼んでここから病院まで直接行くしかないでしょ。」
キノコさん:「そーお、悪いわね。じゃあ、準備して待っているから。」
お昼を回ったところで、キノコさんの部屋に行きます。
ヤッチ:「出かける準備は万端?」
キノコさん:「うん、私のほうは大丈夫だけど。柿を剥いて持って行こうと思っているんだけど、あの人、食べるかしら?」
ヤッチ:「いやー、当面食事は無理でしょ。」
キノコさん:「いつぐらいから食べられるかしら?」
ヤッチ:「病院の人が食べられそうか見極めてからだな…。」
キノコさん:「じゃあ、柿を持って行くのはヤメにするわ。」
ヤッチ:「タクシーを呼ぶぞ?」
ヤッチは携帯でタクシー会社に電話し、タクシーを呼びます。
ヤッチ:「5分で来るって。ずいぶん早いね。ゆっくり歩いて、外に出れば、ちょうどいいタイミングで来るでしょ。」
キノコさんとアパートに面した通りに出ると、すでにタクシーが待機しています。
キノコさん:「あら?ずっと待っていてくれたのかしら?」
タクシーの後部座席にはヤッチが先に乗り込み、キノコさんが後に続きます。
ヤッチ:「K病院までお願いします。」
運転手さん:「わかりました。決まったルートがお有りですか?」
ヤッチ:「いえ、今日が初めてなんで、お任せします。」
時間にして、30分~40分というところでしょうか、K病院に到着です。
料金にして、3,000円弱。
うん…。
往復6,000円弱ですから、毎日タクシーでキノコさんを病院に連れて来るというわけにはいきませんね~。
K病院で、面会の手続きを済ませ、エレベーターに乗り込みます。
キノコさん:「何階なの?」
ヤッチ:「三階。降りてすぐのところだよ。」
エレベーターを降り、病室へと向かいます。
アルツ君、仰向けで眠っています。
右手首は、ベッドの手すりに固定され、左手には、固定はされていないものの、ミトンをはめられています。
ミトンをしている左腕に点滴のチューブです。
キノコさんがアルツ君の左手にはめられたミトンを指さし、ヤッチに小声で問いかけます。
キノコさん:「なんで、あんなところに、あんなものしているの?」
ヤッチ:「中華料理でも作ろうと、熱い鍋でも振っていたんじゃないか?」
キノコさん:「まさかぁー。」
ヤッチ:「冗談、冗談。たぶん、旦那さんが点滴の針やチューブを引き抜いちゃうから、手を使えないように手袋をさせているんだよ。」
キノコさん:「そうなの…。あそこも怪我をしたのかと思ってビックリしちゃったわ。」
ヤッチ:「むしろ、看護師さんたちに怪我をさせないための道具だね。」
キノコさん:「…。」
二人の気配を感じたのか、アルツ君が目を覚まします。
最初にアルツ君の視界に入ったのは、ヤッチだったようです。
目が合います。
沈黙のまま、アルツ君の視線が横に移動します。
その先にあるのはキノコさんです。
アルツ君、キノコさんの顔を見ると、嗚咽し、泣き出してしまいました。
脳梗塞という病気は涙腺までもろくしてしまう病気なのでしょうか。
『嗚咽』と書きましたが、上手い表現が見つからないので、そう書いただけです。
ヤッチと同じ年代の方でないとご存知ないかもしれませんが、アルツ君の『嗚咽』は懐かしのアニメのチキチキマシン猛レースに出て来る犬のケンケンの笑い声にそっくりです。
あのブラック魔王の愛犬です。
ご存知の無い方のために、YouTubeに動画が有ったので、リンクを貼っておきます。
最後にケンケンの笑い声が出てきますのでお聞き逃しなく。
まあ、実際にはアルツ君の場合、笑い声ではなく、泣き声なのですが、キノコさんを見た途端、顔をクシャクシャにして『ケンケン泣き』をはじめてしまいました。
キノコさん:「(私のこと、)誰だかわかる?」
キノコさんがアルツ君の動かない右手を握りしめます。
アルツ君:「ハヒヒヒヒヒ!」←アルツ君のケンケン泣き
キノコさん:「なーに。どうしたの?」
アルツ君:「ハヒヒヒヒヒ!」
ヤッチは廊下に有った丸椅子をキノコさんに用意し、席を外します。
その間にアルツ君の入院の手続きです。
ナースステーションの中にベスト姿の女性がいらしたので、声を掛けます。
ヤッチ:「お忙しいところ、すみません。○○の次男なんですが…。下の受付で伺ったところ、入院の手続きはこちらでしてくれと言われたものですから…?」
女性職員さん:「はい、承っています。」
ヤッチは姉から預かった書類を女性職員さんに手渡します。
ヤッチ:「それで、こちらの書類には、入院保証金100,000円と書かれてあったのですが、今日お支払いしないとマズいですかね?」
女性職員さん:「大変申し訳ありません。書類のほうには、『任意』と書かせていただいていると思うのですが…?」
ヤッチ:「ちゅうことは、払っても払わなくてもよいということですか?」
女性職員さん:「はい、あくまでも患者様のご都合でということでお願いしていますから。」
ヤッチ:「では、申し訳ありませんけど、こちらも『任意』ということで…。」
女性職員さん:「承知しました。それと、身の回り品のご契約のことなんですが…???」
アルツ君の寝巻(病衣)や紙おむつ、タオル、食事用のエプロンといった備品類の契約書のことです。
ヤッチ:「はい?」
女性職員さん:「タオルですとか、病衣、食事用のエプロンについて、一日いくらというご契約をいただいているようなんですが…?」
ヤッチ:「それって、一日に何枚使っても、一定の金額っていう契約になるんですよね?ケータイでいうところのパケ放題みたいなやつですよね?」
女性職員さん:「はいそうです。ですが、○○様(アルツ君)の場合、まだベッドで過ごされる事が多いご様子なので、こちらのご契約だと、料金が多くかかってしまうかと…。バスタオルなどはそう毎日何枚も使うものではないと存じますので…?」
ヤッチ:「従量制みたいなプランのほうがよいということですか?」
女性職員さん:「おっしゃる通りです。その都度、使っていただくときに実費をご負担いただく方がよろしいかと…。紙おむつ等については、最初から実費をご負担いただく形になっていますので…。」
ヤッチ:「今からパケ放題から、普通の従量制のプランに変更してもらえるんですか?」
女性職員さん:「はい、大丈夫ですよ。」
ヤッチ:「そっちの方が安く済みそうなら、使ったら料金が発生する方のプランに変更してもらえますか?」
女性職員さん:「わかりました。それでは、身の回りのものは、お使いいただいたら、その都度、ご負担いただくということで?」
ヤッチ:「よろしくお願いします。」
一応、入院手続きについては終了です。
なんか、ちょっと意外でした、結構、良心的じゃないですか…。
今度、ヤッチは看護師さんに声を掛けます。
病院内でナンパしまくっているわけではありません。
ヤッチ:「お忙しいところ、すみません。○○(アルツ君)のことなんですが、ちょっと今どんな状態かお聞かせ願いたいのですが?」
看護師さん:「病状についてのご説明ですか?」
ヤッチ:「はい、そうです。」
看護師さん:「病状等の説明については、看護師から説明できないことになっています。医師からご説明をさせていただくことになっています。医師とそのお約束などはしていらっしゃいますか?」
ヤッチ:「いえ、アポなしです。」
看護師さん:「では、担当医師に連絡してみますので、しばらくお待ちください。席を外している場合も有りますので、次回から事前にご連絡いただけますか?」
ヤッチ:「わかりました。申し訳ありません。」
脳梗塞という病気はヤッチの腰をも低くさせる病気のようです。
看護師さんが内線電話でなにかを話しているようです。
看護師さん:「担当医師が上がって参りますので、デイルームか病室でお待ちいただけますか?医師が参りましたらお声掛けいたします。」
ヤッチ:「よろしくお願いします。」
ヤッチはデイルームで時間を潰します。
15分ほど経って、看護師さんから声が掛かります。
看護師さん:「担当医師が参りましたので、ナースステーションの方にどうぞ。」
ヤッチはデイルームからナースステーションに向かいます。
『向かいます』と書くと距離を感じますが、ナースステーションはエレベーターを挟んで、すぐ隣です。
担当医師とは、K先生のようです。
K先生はナースステーションの中で書類を整理しながら立っています。
ヤッチ:「お忙しいところ、すみません。」
K先生:「あー、昨日の今日だから、変らないですよ。昨日申し上げた通りですよ。」
『昨日申し上げた通り』と言われても、昨日は何も言われていないような気がするのだが…。
(; ̄ー ̄川 アセアセ
ヤッチ:「はぁ…。」
K先生:「こう言っちゃなんだけど、お年を召した方にはよく有る事だから。」
そりゃあ、脳外科の先生なんだから、当たり前の話ですわな~。
八百屋さんの客に魚屋さんの客は来ませんわな~。
いつものヤッチならもう一歩踏み込んで、突っ込むのですが、気持ちが萎えてしまいました。
_| ̄|○
ヤッチ:「関係の有る事なのかもしれませんが、別件でお伺いしたいことが有るのですが…?」
K先生:「はい、なんだろ?」
ヤッチ:「何年か前の父の(脳)の画像を持って来たのですけど、この画像に父の脳梗塞はありますか?」
ヤッチは、アルツ君が以前に『進行性核上性麻痺』の疑いがあると言われた時、その判断材料として撮ったMRIの画像をK先生に見せます。
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K先生は画像に目を通します。
K先生:「脳梗塞は無いね。いつの画像なの?」
ヤッチ:「たしか、2012年です。ちょっと画像にブレがありますが…。」
K先生:「あー、ここに書いてあるね。2012年2月13日って…。」
ヤッチ:「手元に有る直近の画像がこれしかなかったんですけど、先生に『前にも脳梗塞をやってるね。はじめてじゃないね。』と言われたので、いつだったんだろうと気になったもので…。」
K先生:「この時点では、まだ脳梗塞の跡は無いね。」
ヤッチ:「そうですか。」
K先生:「まあさ、ここだけの話だけどさ。年齢を重ねていくうちに、脳梗塞なんて誰にでも起こりうる話だからさ。極端な話、僕だって梗塞が有るかもしれないんだからさ。患者さんの前ではこんな話はできないけどさ。」
どうもヤッチが求めているものと、K先生がおっしゃりたいことに距離感を感じます。
ヤッチ:「わかりました。貴重なお時間を拝借して申し訳ありませんでした。」
K先生:「一応、この画像、コピーを撮らせてよ。いい?」
ヤッチ:「どうぞ、構いません。」
2012年の2月というのは、アルツ君がまだ自宅に居る頃です。
ヤッチが自宅でアルツ君のお世話していた頃です。
この一か月後の2012年の3月に高齢者虐待防止法でアルツ君が保護され、そのまま5月の終わりか、6月の初めに今の特別養護老人ホームに入所しています。
そこから『現在に至る』ですから、もし脳梗塞が有ったとすれば、特別養護老人ホームに入所中の可能性が高いことになります。
『だからどうなの?』、『後戻り反対!』とヤッチの脳ミソがうるさく言ってきているので、今のアルツ君の脳梗塞の治療の方に専念することにしましょう。
ヤッチは病室に戻ります。
ヤッチ:「どう?」
キノコさん:「『お腹空いた~』だって。」
ヤッチ:「さすが、奥さんのパワーはすごいね。目覚ましい回復力。話ができたんだ!」
たぶん『お腹空いた~』といっても、まだ呂律が回っていないので、宇宙語であることは予想がつきます。
でも、コミュニケーションが取れたのは大きな一歩です。
三人揃ったところで、ちょうどアルツ君の担当のPTさん(理学療法士)が病室に入ってきます。
▽引用
理学療法士とは△引用
理学療法士はPhysical Therapist(PT)とも呼ばれます。 ケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、および障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法(温熱、電気等の物理的手段を治療目的に利用するもの)などを用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門職です。治療や支援の内容については、理学療法士が対象者ひとりひとりについて医学的・社会的視点から身体能力や生活環境等を十分に評価し、それぞれの目標に向けて適切なプログラムを作成します。日本理学療法士協会から引用
ヤッチ自身、このPTさんとは初対面。
ヤッチ:「はじめまして。よろしくお願いします。」
PTさん:「こちらこそよろしくお願いします。理学療法士の○○と申します。」
PTさん、ベッドに縛りつけられていたアルツ君の右手の抑制、左手のミトンを外します。
PTさん:「血圧を測らせていただきますね?」
アルツ君:「アワワ…。」
PTさん:「それでは足を動かしますよ。」
アルツ君:「アワワワ…。」
PTさんはアルツ君のベッドの上に乗り、アルツ君の右足を持ち上げます。
サッカー選手などが他の選手から吊った足を直してもらうような格好です。
PTさん:「これ、痛いですか?」
アルツ君:「アワワ…。」
しかめ面をしないので、痛くないようです。
PTさん:「今度は膝を曲げますよ~。痛かったら教えてくださ~い。」
左足についても同様のことをして、血圧を測ります。
今度はPTさん、病室の外から車椅子を持ってきて、アルツ君のベッドの横に付けます。
PTさん:「ベッドの上で腰を下ろしますからね。身体を起こしますよ。」
PTさんはヒョイっとアルツ君の身体を起こし、お尻を支点にしてアルツ君の身体をひねり、ベッドに足を垂らすような格好で座らせます。
ヤッチ:「何だよ、ちゃんと腰かけられるじゃん。」
ヤッチはアルツ君の身体が右に傾いてしまうか、座る事もできないのかと思っていました。
PTさん:「そうですね…。結構しっかりされていますよね。」
アルツ君が怒ったような顔でヤッチの方をチラリと見ます。
『当たり前さよ~。』と言いたげなドヤ顔です。
座っているアルツ君の右手の指先はやはり力が入っていない様子で不自然な印象です。
どうしてもヤッチの目にはアルツ君の右手が『死んだひな鳥』に見えてしまいます。
PTさんはアルツ君の血圧を測り始めます。
その間、ヤッチはPTさんにアルツ君の耳に入らぬように小声で話し掛けます。
ヤッチ:「仕事中、悪いんだけど、親父さんの右手が動くか訊いてみていい?」
PTさん:「あ、どうぞ。」
ヤッチはベッドの手すりをアルツ君の左側に挿し込みます。
アルツ君に挿したわけではなく、ベッドにある挿し込み口です。
ヤッチ:「旦那さん、左手でベッドの手すりにつかまれるかい?」
アルツ君、またしてもドヤ顔で、ベッドの手すりに自分の左手を掛けます。
麻痺側ではないので、出来て当たり前の話ですが、アルツ君がヤッチの言っていることを理解できていることがわかります。
ヤッチ:「今度は倒れないように、右腕を持ち上げてみん?」
少し重そうですが、アルツ君が右腕を引き上げるように軽く持ち上げます。
右手に関しては麻痺が有るのは確実のようですが、肩から上腕、あるいは肩から前腕まで、動かせるかもしれません。
少し間を置いたところで、PTさんがアルツ君に声を掛けます。
PTさん:「今度は車椅子に腰かけてもらいますね。僕に体重を掛けてもらって構わないので、『せーの!』で車椅子に座りますよ。せーの!」
PTさんのテクなのか、アルツ君に体力があるのか、割と簡単に移乗成功です。
まあ、介助無しでは、ちょっと無理そうな感じでしたが、足の方に力が入る様子なので、スムーズな印象でした。
PTさん、血圧をまたしても測っています。
血圧を測り終わると、PTさん今度は時計を見ています。
アルツ君が車椅子に座ってどのくらい姿勢を維持できるか、計測しているようです。
また、間を置いてから、PTさんはアルツ君をベッドに寝かせました。
PTさん:「今日はこの辺で。」
キノコさん:「ありがとうございました。」
アルツ君、ベッドに横になると、また寝息を立てて、眠ってしまいました。
キノコさんはアルツ君が目を覚ますまで、そばに腰かけ、アルツ君の右手をずっと握っていました。
アルツ君が再び目を覚ますと、キノコさんがアルツ君にそっと声を掛けます。
キノコさん:「また来るわね。帰るわね。」
アルツ君はうなずくように目を閉じ、眠ってしまいました。
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アルツ君の息子ヤッチです。
アルツ君の入院の様子を一日ずつ記事にしていると、いつまで経っても現在の様子を書けそうもないので、過去の様子については、現在に近づくまで、少し簡略化して書きたいと思います。
自分自身の備忘録も兼ねていますので、乱文、ご容赦下さい。
面会に訪れると、アルツ君は就寝中。
病室に看護師さんの姿があります。
ヤッチ:「起こさない方がいいですよね?」
看護師さん:「グッスリ眠っていらっしゃるようですから、そういう時は…。」
ヤッチ:「叩き起こす…??」
看護師さん:「いえいえ。」
ヤッチ:「どんな様子ですか?」
看護師さん:「ずっと点滴だけでしたが、今日のお昼はとろみの食事が出たんですよ。当面お昼ご飯だけのようですが今日から食事スタートです。」
ヤッチ:「食べることができたんですか?」
看護師さん:「はい。でも途中、むせが有ったので中断です。」
ヤッチが看護師さんと話をしていると、アルツ君が目を開けます。
アルツ君:「キ・ノ・コ…。」
女性の声が聴こえたので、キノコさんと勘違いしたのでしょうか。
ふたたび目を閉じ、いびきをかいて眠ってしまいました。
目を覚ます気配がないので、ヤッチも長居せずに、この日はすぐに帰ってきました。
ヤッチが訪れると、病室の扉が閉まっています。
この病院では、たぶんアルツ君の病室だけだと思いますが、病室に居る患者さんのおむつ交換を一斉に行います。
その時は、たとえ家族といえども、面会者は一旦病室の外に出なくてはならないようになっています。
ヤッチは扉が開くのをデイルームで待ちます。
しばらくすると、扉が開きます。
ヤッチは病室に入り、アルツ君の枕元へ…。
アルツ君、たった今おむつ交換をしてもらったばかりだというのに、いびきをかいて眠っています。
今まで、左手はミトンだけでしたが、この日は左の手首も抑制(拘束)され、ベッドの手すりに固定されています。
両手とも抑制された状態です。
いよいよ、本領を発揮し始めたのでしょうか…。
ヤッチの気配を感じたのか、アルツ君が目を開けます。
どうも、脳梗塞で倒れてからのアルツ君は、眠りが浅いようにヤッチには思えます。
アルツ君:「いわーい!」(宇宙語)
アルツ君が声を上げます。
ヤッチ:「どっか痛いのか?」
アルツ君:「おうぉーい!」
たぶん、『重い』だと思います。
腕のことを言ってるのかな?
アルツ君:「おうぉーい!」
アルツ君が右腕を持ち上げようとします。
抑制され、ベッドの手すりに手首を固定されているのですから、持ち上がるはずはありません。
でも、麻痺しているはずの右腕に感覚も有るし、動かせるということの証明にもなります。
ヤッチ:「それ持ち上げられたら、片手でベッドを持ち上げられることになるぞ?」
アルツ君:「いわーい!」
手首は固定されているのに、自分の身体だけ、頭の方にずり上がって行くので、どうやら腕が伸びきってしまっているようです。
ヤッチはアルツ君の身体を腕が伸びきらないように元に戻します。
アルツ君:「ふー…。」
そこへ看護師さんが点滴の落ち具合を見に来ます。
看護師さん:「ちょっと失礼しますね。」
ヤッチ:「抑制が両腕になっているみたいだけど、相当暴れたんですか?」
看護師さんがゆっくりうなずきます。
看護師さん:「でも、今日の午前中はわりと長い時間、車椅子で過ごしていらっしゃったんですよ。」
たぶん、看護師さんの管理下に置くためのやむを得ぬ手段とヤッチはにらんでいます。
ヤッチ:「へえ、そうなんですか。すこしずつ元気になって来ているようですが、段々看護師さんの手を煩わせるようになってくるかもしれませんよ。」
看護師さん:「うん、わかっていますから、大丈夫ですよ。」
ホントかぁ…???
この看護師さんはアルツ君の本当の怖さをまだ知らないようです。
看護師さんは病室の外へ出て行ってしまいました。
アルツ君:「わうーい!」
今度は何だ?
アルツ君が左手を顔の方へ近づけようとします。
左手は右手よりも抑制のためのベルトが長くなっているので、若干自由があります。
顔かどこかが、かゆいのかな?
ヤッチはアルツ君の顔の上でタオルをちょんちょんとはずませ、かゆい箇所を探ります。
アルツ君:「あーま。」
ヤッチ:「頭がかゆいのか?」
アルツ君:「うー。」
ヤッチはアルツ君の頭をタオルで撫でます。
アルツ君:「ふー…。」
またしても、いびきをかいて寝入ってしまいました。
ヤッチも退散です。
最初に救急搬送されたJ病院の会計をまだしていなかったので、午前中、J病院に行ってきました。
外来診療の会計窓口をたずねます。
ヤッチ:「先日、父がこちらに救急搬送されて、その時の会計をまだ済ませていなかったので、支払いにお伺いしたのですが?」
女性職員さん:「お父様の診察券はお持ちですか?」
ヤッチ:「はい、持ってきました。」
ヤッチはアルツ君の診察券を手渡します。
女性職員さんはアルツ君の診察券をスキャンします。
女性職員さん:「料金計算は済んでいますので、隣りのカウンターまでいらしていただけますか?」
隣りのレジスターの有るカウンターへ移動し、女性職員さんにたずねます。
ヤッチ:「父の後見人さんに渡す都合もあるので、領収証と一緒に診療明細も出していただけますか?」
女性職員さん:「かしこまりました。」
支払った金額ですが、アルツ君は一割負担なので、5,850円でした。
保険点数にして、5,690点。
救急室で便失禁があったため、おむつ交換をしてもらっているので、上記金額の中には保険適用外のおむつ代160円(税込み)も含まれています。
治療用にどんな点滴薬が使われたか気になります。
点滴ではなく、飲み薬としてバイアスピリンを2錠、アルツ君がヤッチの目の前で飲んでいるのはハッキリ覚えています。
診療明細書にある一覧をピックアップすると、以下のような点滴薬の名前が出てきます。
- ラクテック注(500ml)×1袋
- ラジカット点滴静注バッグ30mg100ml×1キット
ラクテックはアルツ君が脱水症状を起こさないために水分補給用に使われたのだと思うので、ポカリスエットの点滴版と考えてよいのかな?
ラクテックそのものは脳梗塞を直接改善する点滴薬ではないとすると、J病院では、残るラジカットという点滴薬をメインに使用したということになりそうです。
ラジカットなるものをちょっくら調べました。
ラジカットは血液の流れが悪くなったところで増加する有害な活性酸素(フリーラジカル)をやっつけて、脳を保護する薬のようです。
ん…。
今一つ、ピンときませんね~。
脳を保護する薬くらいに考えておきましょうか…。
会計を済ませ、午後からアルツ君の入院しているK病院に行ってきました。
入院時に比べれば、口数も多くなり、アルツ君の言っている言葉も少しずつ聞き取れるようになってきました。
お昼ご飯もどんなものを出されたのかわかりませんが、完食したようです。
この日、アルツ君と同じ病室に肺炎の患者さんが入院となりました。
一緒の病室で大丈夫なのでしょうか?
入院してからのアルツ君は非常に涙もろくなっています。
ヤッチがいつもの調子で、アルツ君に意地悪なことを言ってしまい、アルツ君、例の『ケンケン泣き』になってしまいました。
ヤッチも過去の顔面神経麻痺の影響で、決して滑舌が良いとは言えませんが、偉そうなことをアルツ君に言ってしまいました。
やってはいけない見本として、YouTubeに動画をアップしておきますので、興味のある方はご覧ください。
動画の最後の方で、アルツ君の『ケンケン泣き』と、アルツ君が『余計なこと、言うな!バカッ!』とハッキリ言っているのがわかります。
可哀想なことをしてしまいましたが、ちょっぴり回復の兆しです。
今までアルツ君の点滴の針は左腕に刺さっていましたがこの日は右腕に刺さっています。
アルツ君の覚醒レベルは良いとは言えません。
時々、目を開けますが、ぼーっとしている様子で、ヤッチが枕元に居るのも気づかない様子…。
目を開くたびに、多分ですが、『水道端…。』とつぶやきます。
何を言いたのか、理解できません。
どうも、一日間隔で、調子が良くなったり、悪くなったりを繰り返している印象です。
ほとんど目を閉じていることの方が多く、ヤッチも足早に病室を去りました。
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アルツ君の息子ヤッチです。
今回もアルツ君の様子を二日分まとめて書きたいと思います。
ヤッチ、実はアルツ君の様子をできるだけ細かく記録しておこうと、メモをとっているのですが、毎日面会に訪れていると、メモをとっていても、いつの出来事だったかわからくなってくる事がたくさん出てきます。
早くブログの記事を更新して、ブログにぶちまけてしまえば、ヤッチの頭の中もスッキリするだろうと、ちょっぴり梗塞(焦り)気味です。
ヤッチが面会に訪れると、ベッドにアルツ君の姿はありません。
ベッドの上に『リハ中』と書かれた札が置いて有ります。
若い人ならすぐにピンとくるでしょうけれども、キノコさんのような年齢の人間が見たら、『リハ中って何中学校?』と質問されそうです。
ヤッチは、デイルームで時間を潰します。
ほとんど待つことも無く、アルツ君の車椅子が目の前に見える廊下を通り過ぎ、病室に入って行きました。
ヤッチも、後に続いて病室に入ります。
車椅子を押していたのは、PTさん(理学療法士)ではなく、OTさん(作業療法士)でした。
▽引用
理学療法士と作業療法士の違いとは?△引用
理学療法士と作業療法士の違いについてですが、理学療法士は、寝返る、起き上がる、立ちあがる及び歩くなど、日常生活で必要な基本動作ができるように身体の基本的な機能回復をサポートする動作の専門家です。歩行練習などの運動療法や、電気・温熱・光線などを使った物理療法を用いて、身体の機能や動作の回復をうながし、自立した日常生活が送れるようにバックアップします。
作業療法士は、入浴や食事など日常生活の動作や、手工芸、園芸及びレクリエーションまであらゆる作業活動を通して、身体と心のリハビリテーションを行う専門家です。理学療法士と異なる点として、作業療法士はそううつ病及び摂食障害などの精神障害の患者さんも対象としており、幅広くリハビリテーションの医療現場で活躍しています。
このようなことが、主な理学療法士と作業療法士の違いです。彰栄リハビリテーション専門学校より引用
かなり、かなりザックリですが、この病院ではアルツ君が立ったり座ったり、あるいは歩くといった基本的な動作をリハビリによって回復するのがPTさん(理学療法士)の仕事の範囲で、アルツ君が自分でお箸を持ってご飯を食べたり、自分でチンチンをつまむなど、細かな動作をできるまでサポートするのがOTさん(作業療法士)の仕事とヤッチは勝手に考えています。
ヤッチが病室に入ると、OTさんがアルツ君に話し掛けています。
OTさん:「お疲れになりましたか?」
アルツ君:「うぇえに…。」
OTさん:「…???」
ヤッチが割って入ります。
ヤッチ:「たぶん、『別に…。』って言ったのだと思いますよ。あっ、ごめん。俺、息子。」
OTさん:「あ、どうもはじめまして。」
ヤッチ:「たぶん、疲れていると思いますよ。この言葉が出るということは。」
アルツ君がヤッチの存在に気づき、『余計な口出ししやがって。』という顔をします。
OTさん:「あ、そうなんですか?じゃあ、○○さん(アルツ君のこと)、横になりましょうか?」
アルツ君:「うぇえに…。」
OTさんがアルツ君をベッドに寝かせます。
アルツ君、横になった途端、寝息をかいています。
ヤッチ:「リハはどんなことをやったんですか?」
OTさん:「今日は親指と人差し指で物をつかむのをちょっとだけ。」
ヤッチ:「どんな感じですか?」
OTさん:「親指が動くと、人差し指が止まるような感じで、両方の指を一緒に動かすというのはまだちょっと…。」
ヤッチ:「えっ。でも動くんだ?」
OTさん:「はい、ゆっくり時間をかければ、何とか…。」
ヤッチ:「なかなかうれしいことを言ってくれるじゃん。動くとは驚きだぁ~。つかめたの?」
OTさん:「つかんだ物を持ち上げるにはもう少し時間がかかるかと…。今日は触ってもらうといったリハになってしまいました。」
ヤッチ:「いやいや、それだけでも収穫ですよ。明日になれば、お箸と茶碗持てるかな?」
OTさん:「それはちょっと…。」
ヤッチ:「細かい作業じゃなくて、たとえば、『棒を握る』みたいな動作は?」
OTさん:「そうですね…、三回に一回はすっぽ抜けちゃうような感じですかね…。」
ヤッチ:「そいつはすごいや。あと残り三割だけじゃん。」
OTさん:「それはそうなんですけど…。」
ヤッチ:「失礼。別にプレッシャーをかけてるわけじゃないから、気長にやってもらって下さい。」
OTさんが、ちょっと若いお兄ちゃんだったので、ヤッチ、調子にのってしまいました。
m(__)m
この日のアルツ君はお疲れの様子だったので、ヤッチも早目に切り上げました。
夜に姉が面会に行ったそうですが、この日から、昼食だけではなく、夕食もスタートになったようです。
とろみの食事が出されたようですが、アルツ君、『まずい!』と言って、三種出されたうち、一種しか食べなかったそうです。
興奮と悲しみが交互し、今泣いていたかと思うと、急に興奮して怒り出すような状態だったそうです。
食事を拒んだので、看護師さんがそそくさとアルツ君の食事を片づけてしまい、その看護師さんがカーテンのタッセルのフックに自分の背中をぶつけてしまった瞬間、アルツ君が『ざまあみろ!』と言ったそうな…。
姉がK病院に連絡し、K先生からアルツ君の病状説明と今後の治療についてお伺いすることになっていました。
病室に行くと、アルツ君は眠っていたので、姉とヤッチはデイルームに腰かけ、声が掛かるのを待ちます。
約束の時間になると、看護師さんからナースステーションに来るように言われます。
狭いナースステーションの中に入るように言われたのですが、K先生、K病院のソーシャルワーカー(社会福祉士)さん、PT(理学療法士)さん、姉、ヤッチが中に入ったものですから、立ち飲み屋さんにでも来たような雰囲気です。
看護師さんも数人、中で仕事をしています。
ヤッチと姉は丸椅子を用意され、腰かけるように促されます。
K先生もパソコンのモニターの前に座っています。
K先生:「病状説明ということなのですが、まあ、前回お話ししたことと、あまり変わりはないかな~。」
今回はヤッチも萎えずに先生に食い下がります。
ヤッチ:「父がこちらに入院したときに、先生は『心原性の脳梗塞かもしれない。』というようなことをおっしゃってましたが、やはり、父の脳梗塞は『心原性』なんでしょうか?」
▽引用
△引用
- 脳梗塞の成り立ち
- 「脳梗塞」は、脳の血管が細くなったり、血管に血栓(血のかたまり)が詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるために、脳の細胞が障害を受ける病気です。
脳梗塞は詰まる血管の太さやその詰まり方によって3つのタイプに分けられます。症状やその程度は障害を受けた脳の場所と範囲によって異なります。脳梗塞の種類
- ラクナ梗塞
- 脳の細い血管が詰まって起こる脳梗塞【小梗塞】
- 脳に入った太い血管は、次第に細い血管へと枝分かれしていきます。この細かい血管が狭くなり、詰まるのがラクナ梗塞です。日本人に最も多いタイプの脳梗塞で、主に高血圧によって起こります。ラクナは「小さなくぼみ」という意味です。
- アテローム血栓性脳梗塞
- 脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞【中梗塞】
- 動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなった太い血管に血栓ができ、血管が詰まるタイプの脳梗塞です。動脈硬化を発症・進展させる高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病が主因です。
- 心原性脳塞栓症
- 脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞【大梗塞】
- 心臓にできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰まらせるものです。原因として最も多いのは、不整脈の1つである心房細動。ミスターG・長嶋茂雄氏を襲ったのも、このタイプの脳梗塞です。
NO!梗塞.netより引用
K先生:「その可能性(心原性脳塞栓症の可能性)も否定できないんだけど、いろいろ精査していくと、ちょっと難しいところかなぁ…。」
ヤッチ:「じゃあ、三つあるうちのどれに当てはまりますか?」
K先生:「まあ、『アテローム』(アテローム血栓性脳梗塞)かなぁ。勘違いしないでね。これは違う、これは違うとやっていった結果だからね。」
ヤッチ:「消去法の結果、『アテローム』ということですか?」
K先生:「まあ、そういうことになるかな~。」
今度は姉が質問します。
姉:「何日か前なんですけど、父が足が痛い痛いと大騒ぎしたときが有ったんですけど、大丈夫なのでしょうか?」
K先生:「それはどっちの足?」
姉:「たぶん、右足だと思うんですけど、本人は『どこが痛いかわからない』と、最後には泣いてしまうくらいでして…。」
K先生:「足といってもいろいろあるけど、どの辺なの?」
姉:「たぶん、右足の太ももの裏辺りだと思うんですけどね…。」
K先生:「右じゃあ、麻痺足(側?)でしょ。リハビリをしているから、そういうこともあるんじゃないかな。筋肉痛っていうこともあるし…。」
K先生は、ヤッチの後ろに立っていたPTさんに話し掛けます。
K先生:「今、リハ、どのくらいやってるの?」
PTさん:「時間ですか?」
K先生:「うん。」
PTさん:「午前と午後に二回やらせていただいてるんですけれども、一回につき、だいたい一時間くらいです。ただ、移動したり、準備が有るので、正味、一回につき、40分程度じゃないでしょうか。」
ヤッチ:「えー。そんなにやってるんだ。それじゃあ、疲れるわけだぁ~。」
K先生:「まあ、足のことについては、僕のほうも頭に入れておくことにします。」
ヤッチ:「で、父の麻痺の程度はどのくらいのものなのでしょうか?」
K先生は再び、PTさんにたずねます。
K先生:「評価は入っているんだろ?」
PTさん:「はい。上肢(肩から指先まで)については、中等度の麻痺で、下肢(股関節から足先まで)については、軽度の麻痺です。」
ヤッチ:「えっーーー。足(脚)にも麻痺が有るんだぁ~?動かしていたから、麻痺していないと思っていたんだけどな…。」
PTさん:「はい、立っていただくと、じゃっかん、傾いてしまうので…。」
ヤッチ:「嚥下(えんげ)はどうなんでしょうか?」
K先生がPTさんにたずねます。
K先生:「ST(言語聴覚士)の評価も入ってるんだろ?」
PTさん:「はい、STはこの場におりませんが、STからは『飲み込みは問題ない』というのだけ聞いています。」
姉:「先生、今、父は、『あわわわ。』と何を言っているかわからないような状態ですけど、段々、しゃべれるようになっていくんでしょうか?」
K先生:「梗塞を起こした脳の部位が部位だけに何とも言えないところだけど、お父さん、こっちの言っていることは、理解してるようだよね。『聞く』、『話す』、『読む』、『書く』が全部できないと、『全失語』といって、重症だけど、お父さんの場合、『聞く』についてはクリアできていると思うよ。『読む』、『書く』については、大変失礼だけど、(認知症だから)あまり得意じゃないでしょ!?」
姉:「残る『話す』が心配なんですよね…。」
K先生:「まあ、診させてもらった限りじゃ、失語症というよりも、『こうご』障害っていう感じかな。」
ヤッチ:「コ・ウ・ゴ…????」
K先生:「そう、『こうご』。『こうご』の『こう』は『構文』の『構』で、それに『語る』って書くんだけど。」
ヤッチ:「『構語障害』ということ???」
K先生:「臨床の世界ではいろいろあるんだけど、早い話が呂律が回らないなんだけど、言いたいことは頭に浮かんだいるんだけど、一つ一つの言葉を整理して上手く組み立てられないというのかなぁ…。」
K先生のおっしゃったことのニュアンスはヤッチもキャッチできましたが、ここで説明しろと言われれば、ヤッチも『構語障害』です。
失語症と構語障害の境界線が見えてこない…。
K先生:「で、脳梗塞の時にはご存知のように、こういうことが起こるんだけど、これは『きゅう麻痺』から来てるんだよ…。」
K先生がこうおっしゃたかどうかは定かではありません。
ちょっと聞き取れなかったし、理解できませんでした。
K先生:「『きゅう麻痺』の『きゅう』は『たま』って書くんだけどさ…。」
ヤッチは『玉』を連想しましたが、『球』のようですね。
つまり、『球麻痺』…。
ちょっと、落ち着いてから調べることにします。
m(__)m
ヤッチ:「…。(むしろ???)」
K先生:「いずれにしても、リハをきちんとやっていけば、その過程で徐々に良くなっていくでしょう。ただ、女性よりも男性の方が、途中であきらめちゃうんだよなあ。特に高齢になると、ますます。女性の方が長生きなのはそのせいじゃないかと思うんだよなあ。」
姉:「リハビリのことはそちらにお任せするしかないので、よろしくお願いいたします。」
ヤッチ:「今後の治療についてお伺いしたいのですが?」
K先生:「入院される時にお話ししたと思いますが、当面は点滴治療かな。」
ヤッチ:「具体的にはどんな薬を使うんですか?この間はラジカットという点滴薬がぶら下がっていたようですけど?」
K先生:「あれは脳保護剤で、もう一つ、グリセレブというのを使います。これは頭蓋内の浮腫をとってあげる薬。」
ヤッチ:「それと、栄養?」
K先生:「そう、今、ヴィーン3Gというのを使ってるんじゃなかったかな!?」
ヤッチ:「点滴治療はどのくらいの期間になりますか?」
K先生:「入院時から2週間やっていきます。その後は経口投与、つまり、飲み薬に切り換えて、二つの薬を飲んでもらいます。お父さん、バイアスピリンを普段服用しているのに脳梗塞になったよね?」
ヤッチ:「まあ、そういうことになりますね…。」
K先生:「だから、バイアスピリンだけじゃ、効かないかもしれない。ダプト(DAPT)っていうんだけど、二剤併用療法で進めていきます。」
アルツ君の救急搬送時にK先生はこのことをおっしゃりたかったのかもしれませんね。
脳梗塞の治療の中で出て来る医療用語を聞くと、どうしても、『刀』、『手裏剣』、『侍』を連想してしまうのはヤッチだけでしょうか。
ヤッチ:「その二刀流の方法で使う薬はワーファリンですか?」
K先生:「いや、ワーファリンは使わないよ~。バイアスピリンは抗血小板薬なんだけど、バイアスピリンともう一つ違う抗血小板薬を使って、二剤にします。」
薬の名前をお伺いするのをわすれました…。
(; ̄ー ̄川 アセアセ
K先生:「それと並行して、スタチンっていうんだけど、コレステロール値下げる薬を飲んでもらいます。」
ヤッチ:「期間は?」
K先生:「概ね二週間といったところかな…。これは様子を見ながらになるからね。短くなる場合も有ります。」
アルツ君の入院期間が3~4週間となるのは確実のようですね。
K先生:「まあ、ご家族としては色々とご心配でしょうが、『老化』には勝てませんよ~。目の前にあるパソコンの画像を見てごらん。お父さんの脳の画像だけど、脳と頭の骨の間隔が1cm以上空いているもの。前頭葉に至っては、1.5cmは有るんじゃないかな。」
ヤッチ:「はい…、私も正直できる事なら、画像を見たくなかったです…。」
ヒアルロン注射ですき間を埋められないのかなぁ…。
この後もK先生から色々とお話を聞きましたが、雑談が多かったので省略します。
ヤッチ:「最後に一つだけお願いがあるんですけど、よろしいでしょうか?」
K先生:「はい、何でしょう?」
ヤッチ:「父にまた何か有った時に、すぐに対応できるよう、父の脳の画像をいただけないでしょうか?」
K先生:「CT?MR?」
ヤッチ:「どちらも。」
K先生:「かまわないけど、印刷したものが欲しいのかな?それともCD-ROM?」
ヤッチ:「それは先生のほうのご都合でどちらでもかまいません。」
K先生からの病状説明は終了です。
病室に戻ると、アルツ君、眠っています。
姉とそっとしておいてあげようということで一致し、帰ることに…。
帰り支度をしていると、看護師さんがCD-ROMを持って来て下さいました。
失敗しました…。
印刷した画像をもらえばよかったです…。
家に持ち帰り、自分のパソコンでCD-ROMの中身を見てみると、フォルダがたくさんあります。
フォルダの中はjpgやgifの拡張子が並んでいると思ったのに拡張子すら付いていません。
windowsに付属の画像閲覧ソフトでは読み込めないようです。
やっと、CD-ROMの中に簡易的な画像閲覧ソフトが入っていることに気づき、実行ファイルをクリック。
読み込んだものの、画像の数がたくさん有り過ぎです。
どれがCTの画像なのか、MRの画像かもよくわかりません。
しばらくPCと格闘し、どうにか閲覧ソフトを使えるようになりました。
CTの画像の場合、頭の骨が白く写ることがわかり、自分的には大発見です。
アルツ君の脳梗塞がわかると思われる画像を以下にアップしました。
梗塞箇所はわからなくても、アルツ君の脳の委縮具合はよくわかると思います。
画面をご覧になって、右側(向かって右)が左脳です。
アルツ君が仰向けに寝ているところを、足元から写真を撮ったと考えると、頭の中がこんがらないかも…。
MRIの画像では白く稲光のように写っているところが梗塞箇所です。
MRAは脳の血管(動脈)の画像で、左脳の血管の影が薄くなっているところが梗塞箇所です。(わかりにくい…。)
興味ある方はご覧になって下さい。
もしかすると、全然見当違いの箇所の画像をアップしているかもしれないので、あしからず…。
素人が簡単に読影できたら、専門の技師さん、必要ないですもんね…。
(; ̄ー ̄川 アセアセ
画像はクリックすると拡大することができます。
↓

MRIの画像(2×2)

MRIの画像(2×1)

MRAの画像(3×3)

CTの画像(4×3)
・追記
K先生はアルツ君が今回の脳梗塞ではなく、過去にやったの脳梗塞で右側の目があまりよく見えていないのではないかということをおっしゃっていました。
『お父さん、右側の壁に体をぶつけたりしていなかった?』とおっしゃっていました。
別件で、今回の脳梗塞で、アルツ君が両目を閉じた時、ほんのちょっとですが、うっすら右目だけ開いていて、閉眼しないのが気になります。
顔面神経麻痺も有るかもしれませんね~。
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こんにちは。
アルツ君の息子ヤッチです。
12月03日水曜日です。(記事を書いているのは12月07日です。)
アルツ君が脳梗塞でK病院に入院してから9日目となりました。
まだ、ベッドでいびきをかいて寝ていることが多く、言葉も聞き取れないことも多いですが、こちらがなれてきたせいもあるのか、ヤッチにはアルツ君の宇宙語が少しずつですが、聞き取れる場面も増えてきました。
この日は、キノコさんが、どうしてもアルツ君の顔を見たいというので、タクシーでK病院まで行ってきました。
病室のある三階までエレベーターを使い、エレベーターを降りた廊下で看護師さんに呼び止められます。
看護師さん:「リハの後、ご気分がすぐれないようですよ。」
この言葉からは、体調が良くないのか、情緒が不安定なのか、まだわからない状態です。
アルツ君のいる病室の前まで行き、病室を覗き込むと、アルツ君、病室の中央付近で、車椅子に乗り、腕組みをしています。
首を垂れ、うつむいています。
寝ているのかな?
ヤッチは病室の中に入ろうとするキノコさんを制止し、二人はしばらく病室の入り口付近でアルツ君の様子を伺いました。
アルツ君の車椅子は病室の入り口の方を向いています。
入口のすぐ外はナースステーションです。
我々はナースステーションを背にしています。
おそらく看護師さんが、彼女たちの目の届く範囲にアルツ君の車椅子を停めたのだと思います。
しばらくすると、アルツ君が頭を上げ、こちらを向きます。
ヤッチと目が合います。
アルツ君:「わわーわっ!わーれっ!!」
すごい大きな声で怒鳴ります。
他の入院患者さんのお見舞いに来ていた女性が驚いて立ち上がるほどの大声です。
アルツ君の怒鳴り声は、ヤッチには『お前、なにしに来たっ!帰れっ!!』と言ったように聞こえました。
今まで起きている時も、ぼんやりしていることが多く、目もトローンとしていましたが、今日のアルツ君の目はヤッチに敵意丸出しで、大きく見開いています。
アルツ君:「わーれっ!!」
周囲から『おーお、すごい。』、『どうしちゃったのかしら。』、『昼からずっと怒りっぱなし。』といった声が聴こえてきます。
ヤッチは病室の中に入り、周囲に会釈しながらアルツ君に近寄ります。
ヤッチ:「そんなに大きな声で呼ばないでも、奥さん(キノコさん)ならここいるぜ。」
ヤッチはキノコさんの立っている病室の入り口付近を指さします。
キノコさんがアルツ君の方に近寄り、アルツ君の手を握りしめます。
ヤッチは丸椅子を用意し、キノコさんを腰かけさせます。
6人部屋の中央付近でのショータイムです。
アルツ君は最初、キノコさんの手を振り払い、時々大声を上げます。
アルツ君:「わーれっ!!」
キノコさんは何度も何度もふり払われた手をアルツ君の手に持って行き、アルツ君の手を握りしめます。
キノコさん:「いったい、どうしちゃったの?」
アルツ君:「わわわッー!」
アルツ君、まだ興奮状態…。
キノコさんはアルツ君の手を抑えつけるような姿勢です。
車椅子の上には、車椅子の肘かけを脚代わりにして、簡易テーブルのような物が置かれています。
キノコさん:「ん…。何て言ってるか、わからないわね…。」
ヤッチ:「入れ歯を着ければ、少しは聞き取れるかもよ?」
ヤッチはアルツ君の入院時に姉が施設から預かってきた入れ歯をアルツ君に装着しようと試みます。
ん…。
口を開けてくれません…。
ヤッチ:「旦那さん、せっかく愛妻が来たんだから、入れ歯をハメて、男前なところを見せてやらないと…?」
アルツ君:「んんんんー!」
口を閉じたままの徹底抗戦です。
入れ歯を着けるのは諦めました。
キノコさんがアルツ君にたずねます。
キノコさん:「私のことわかる?キノコよ…。」
今度はアルツ君、キノコさんの声を聞き、泣き出してしまいました。
アルツ君:「わーわーわ…。」
キノコさんは一生懸命アルツ君の手をさすっています。
アルツ君が泣きながら、うつむき、蚊の鳴くような小さな声でつぶやきます。
アルツ君:「わーわ、わーわうぃをわーわうぃーのわ?」
キノコさん:「…。」
キノコさんがヤッチの顔を見て、首を振ります。
何を言っているのかわからないようです。
ヤッチ:「旦那さん、今キノコさんに何か言ったんだろ?」
アルツ君:「うー…。」
ヤッチ:「奥さんさ、耳が遠くて、旦那さんの声がよく聞こえないんだって。もう一度言ってやってくれるかな?」
アルツ君:「わーわ、わーわうぃをわーわうぃーのわ?」
ヤッチ:「『お前、子どもが10人もいるのか?』だって。」
キノコさん:「そんなにいるわけないわよ…。」
ヤッチ:「今、旦那さんの手を握ってるの誰だかわかるかい?」
アルツ君:「わーんない…。(わかんない…。)」
ヤッチ:「いま、質問しているのはだれ?」
アルツ君;「わーんない…。(わかんない…。)」
キノコさん:「あらやだ?本当に誰だかわかんなくなっちゃった?」
アルツ君;「わーんない…。(わかんない…。)」
キノコさん:「キノコよ。わかる?」
アルツ君:「うー。(うん。)」
キノコさん:「じゃあ、誰があなたの手を握ってるか言ってみて?」
アルツ君:「…。」
キノコさん:「だーれ?」
アルツ君:「うー。」
キノコさん:「だーれ?」
アルツ君:「あーあわ…。」
キノコさん:「…。」
アルツ君:「あーあわ…。(神様…。)」
それにしても、二人の腕、ずいぶん細くなってしまいました…。
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