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こんばんは。
アルツ君の息子ヤッチです。
(^_^)/~
もう、アルツ君の入所している特別養護老人ホームの批判や悪口を記事にするのはやめようと思っていましたが、なかなかそうは問屋がおろしてくれません。
不愉快にさせてしまいそうな記事なので、御了解いただいた上で、ご覧になって下さい。
また、これから書かせていただくことは、アルツ君の入所している施設に関することであって、特別養護老人ホーム全般に関する普遍的な事柄ではないということをご理解下さい。
固すぎですかね?
はい、タイトル通り、アルツ君の入所している特養の空調設備が一昨日(2014/07/14)から故障し、冷房の入っていない状態が続いています。
一昨日のいつから故障しているのかは、定かでは有りませんが、姉がその日(2014/07/14)の夜、面会に訪れた時にはすでに故障していたとの事です。
昨日(2014/07/15)火曜日のお昼過ぎに姉からヤッチに電話が入ります。
姉:「今日、あんた、パパのところへ面会に行く?」
ヤッチ:「そう思って、今準備中だけど?」
姉:「なら、よかった。実はパパの居る施設の空調が壊れて、冷房が効かないんだわ~。」
東京は日中、連日30度以上の真夏日が続いています。
ヤッチ:「えー!そいつは大変だな!昨日の夜は幾分風が有って、マシだったけど…。」
姉:「だけど、暑いのにかわりないわよ。」
ヤッチ:「ま。そりゃそうだけど…。」
姉:「昨日の夜も暑くて冷房が効かない状態だったから、パパが寝る時に、私が部屋の戸を開けて、『今夜は窓を閉めないでね。』って、言って帰ってきたんだけど、すぐ忘れちゃうでしょ!?ていうより、覚えておけって言う方が無理じゃない?」
ヤッチ:「忘れるのが商売だからな…。」
姉:「でしょ!!で、施設の人がまめにチェックしてくれていればいいんだけど、もしかすると窓を閉めて寝ちゃったりしていて、体調を崩していないか心配なんだわ~。」
アルツ君が体調を崩していれば、ヤッチより先に、まず身元引受人である姉に連絡が入っているはず…。
そんな事も忘れているところをみると、そうとう動揺していたのかもしれません。
ヤッチ:「で、空調のほうは、修理の目途がたってるの?」
姉:「いやあ、施設のほうは『すぐに直します。』って言っていたけど、時季が時季だけにねえ…。それに全館故障したわけじゃなくて、残念なことにパパの居るフロアだけが涼しくならないらしいんだわ~。向こうのフロアは寒いくらいに冷房が効いていたわ。」
アルツ君の入所している特別養護老人ホームは、敷地内に2棟建っていて、棟と棟が渡り廊下でつながっています。
利用者(入所者)はそこを基本的には、自由に行き来できて、姉の言う『向こうのフロア』というのは、別棟のことです。
つまり、同じ3階でも冷房が入っていない棟と入っている棟があるわけです。
ヤッチ:「そうだよなあ、すぐに修理に来てくれる業者がいたら、普段からよっぽど注文が少ない業者だよなぁ…。」
姉:「まあ、空調のほうは施設が業者なりを呼んで修理するんだと思うけど、パパのほうの面倒をちゃんとみてもらえるかどうかが心配なんだわ~。」
ヤッチ:「いや、いや修理より旦那さんのお世話のほうが、特養の本業でしょ!」
姉:「まあ、今日面会に行ってくれるんだったら、ちょっとその辺のところも含めて様子を見て来てよ?」
ヤッチ:「了解。これから出かけて来るよ。」
そんなわけで、昨日の火曜日(2014/07/15)に特養に出かけてきました。
時刻は暑い盛りの午後2時半ごろ。
施設のエントランスに入ると、ヒンヤリとした空気が肌に伝わって来ます。
どうやら、1階の空調は問題ナシのようです。
施設のエントランスに有った温湿度計を見ると、温度(室温)は27.5度、湿度は52%とデジタル表示されていました。
ヤッチはエレベーターを使って3階に上がります。
エレベーターが空きます。
エレベーターを下りてすぐのフロアはアルツ君のいる棟ではなく、別棟になります。
ここでは、やはり姉の言う通り、空調は問題なく動いています。
ヤッチは渡り廊下のほうに視線を移します。
渡り廊下には、ビル清掃の時などに、ワックスを乾かす時に使うような大型の扇風機が置かれ、アルツ君の居る棟に向かって、勢いよく羽根を回しています。
たぶん、空調が効いている棟から空調の効いていない棟に冷気を送り込もうとしているのでしょう。
ヤッチはその扇風機のほうに向かって歩き出し、渡り廊下を渡ります。
扇風機を追い越した辺りからでしょうか、やはり湿度を感じる空気に変わります。
渡り廊下を渡り切った辺りで、もうアルツ君の居る棟の空調が効いていないことがはっきりわかりました。
扇風機の風は感じますが、冷房の空気ではありません。
暑い…。
(; ̄ー ̄川 アセアセ
途中、各所に扇風機が置かれているのが目に飛び込んできます。
アルツ君が廊下の『定位置(普段よく居る場所)』に腰かけていないので、居室に向かいます。
廊下側の居室を出入りするための扉は開いたままです。
ヤッチはその開け放たれた扉をノックし、居室に足を踏み入れます。
居室内は廊下よりもさらに暑く、蒸し風呂のような熱気です。
アルツ君はベッドに横たわっています。
暑いわけです…。
(; ̄ー ̄川 アセアセ
居室にある南側の窓はしっかりと閉められています。
しかもカーテンは開け放たれている状態…。
ヤッチはその状況を見て、アルツ君に声もかけずに、すぐに居室を出ます。
そして、生活相談員さんのいらっしゃる事務所を訪ねます。
ちょうど最初に目にした大型の扇風機が回っているあたりが生活相談員さんのいらっしゃる事務所。
ちなみに回っていたのは扇風機ではなく、扇風機のハネです。
事務所に向かう途中に、普段アルツ君のお世話をして下さっている職員さんの何人かとすれ違いましたが、その方達にはあえて声を掛けませんでした。
生活相談員さんのいらっしゃる事務所も扉が開いていたので、ヤッチは生活相談員さんがいらっしゃることを確認し、声を掛けます。
ヤッチ:「ちょっといいですか?」
生活相談員さん:「あ、どうも!」
生活相談員さんが廊下に出ていらっしゃいます。
ヤッチ:「あのさ、扇風機を回してるのはわかるんだけどさ、窓を開けないの?」
生活相談員さん:「と、おっしゃいますと?」
ヤッチ:「居室の窓は、あえて開けていないの?」
生活相談員さん:「お父様のいらっしゃるお部屋のことですか?」
ヤッチ:「親父の部屋もそうだけど、他の方達の部屋も…。」
生活相談員さん:「お部屋にお伺いしてもよろしいですか?」
ヤッチ;「そのつもりでお伺いしたんで。親父の奴、顔を赤らめてグッタリしちゃってるよ。」
ヤッチは生活相談員さんと一緒に足早にアルツ君の居室に向かいます。
居室に戻り、先にヤッチが生活相談員さんに話し掛けます。
ヤッチ:「見ておわかりの通り、窓は閉め切りだよ。しかも親父の部屋には扇風機もないし、これじゃあ、『熱中症になれ!』って言ってるようなもんだよね?」
グッタリしていたアルツ君が、ヤッチの声で目を覚まし、ヤッチに向かって大声で怒鳴ります。
アルツ君:「男がつべこべ文句を言うなっ!黙ってろっ!」
ヤッチ:「おうっ。よかった!死んでなかったんだ!」
アルツ君:「うるさい!!簡単にひとを殺すなっ!!」
アルツ君、いつもとは違う本気モード。
暑さで嫌になっているのも理由のひとつだと思います。
ヤッチ:「悪い。悪い。謝るよ。ボタモチ持って来たんだけど、それで勘弁してもらえるかな?」
生活相談員さん:「ちょうど、おやつ時ですから、召し上がられたらいかがですか?」
アルツ君;「あんたにそう言ってもらっちゃあ、食わないわけいかないじゃんかよ。」
生活相談員さん:「いえいえ、私と○○さん(アルツ君)の仲じゃないですか。」
アルツ君:「じゃあ、食おうかな。」
アルツ君の機嫌はおさまりました。
ヤッチは話を元に戻します。
ヤッチ:「扇風機で向こうの棟の冷気を取り込もうという考えはわかるんだけど、無理があるでしょ?せめて部屋の窓を開けて、風を入れてやるとか、逃がしてやるとかしないと…?」
そう言いながら、ヤッチは窓を全開にします。
生活相談員さん:「申し訳ありません…。お昼ご飯の後、お父様は廊下のいつも場所に座っていらして、それから、2時ぐらいにお部屋にお戻りになられました。その時にお父様をお部屋にお連れしたのは、僕なんです…。その時、窓を少し開けておいたんですが…。たぶん、その後に、お父様が、ご自分で閉めてしまわれたのかと…。」
ヤッチ:「なるほど…。事情はわかりました。でもごめんなさい、これだけの状況なんだから、マメに職員さんに見回ってもらわないと…。閉めてあるなら、開けるくらいはできるでしょ?俺が来た時は、ホントにグッタリしてたんだから。」
生活相談員さん:「申し訳ありません。こちらの棟は南側なので、日中窓を開けると、暑い空気が中に入って来てしまうので…。」
ん…、微妙に矛盾するご意見…。
ヤッチ:「それにしても南に面してない部屋の窓も開いていないところが有るみたいじゃない?もちろん、利用者さんによっては開けられない事情もあるかと思うけど…。でもなあ、今のままじゃ、暑い空気をカクハンしてるだけのような気がするんだけどなぁ…。対角線上に窓をちょっとでも開けてやれば、いい風が入ると思うんだけどなぁ…。」(同じ棟に廊下を挟んで南側の部屋と北側の部屋があります。)
生活相談員さん:「そうですね…、ベランダに打ち水をして、それから窓を開けようかと考えていて、今、打ち水をさせていただいているところなんですよ…。」
ヤッチ:「打ち水を否定するつもりはないけど、空気の流通の方が大事だと思うけどな…。寝たりきりの方達の部屋では、廊下側からベッドや対面の窓に向かって扇風機を回しているみたいだけど、少し窓を開けた方がいいような気がするんだけど…。みんな脱水症状にならないかな…。」
生活相談員さん:「それはうちの職員も看護師も居りますので…。」
ヤッチ:「ほんとに?」
生活相談員さん:「はい。」
ヤッチ:「偉そうに言うつもりはないけど、偉そうに言わしてもらうけど、こんな状況なんだから、頻繁に見回りなり、巡回しようよ。それに開けられる窓を開けようよ。」
生活相談員さん:「そうですね。窓を開けて、空気の流れを作った方が良さそうですね。」
ヤッチ:「で、修理のほうは業者に依頼しているんですよね?いつごろ、直りそうですか?」
生活相談員さん;「今日中(7/15中)には。ただ、業者も繁忙期なので、忙しいようで…。ただ、福祉関係の施設なので、優先的に直してくれという話をしてあります。」
ヤッチ:「何日もこんな状況が続いたら、元気な人でも元気でなくなっちゃうんだから、はやいとこ直してくださいよ。」
生活相談員さん:「それは、もう。」
ヤッチ:「ご存知のように『暑い』、『寒い』と言葉にできない方もいらっしゃるわけだし、遠慮して言えない人もいるっていうことも忘れないでほしいです。」
生活相談員さん:「わかりました。」
その後、アルツ君にボタモチを食べてもらい、別棟の冷房の効いた涼しい場所へ二人で足を運び、しばらくそこでテレビを観て過ごしました。
今でこそ、夏場、暑い地域では、各家庭にエアコンが有る事は珍しいことではなくなってきました。
ヤッチの過ごした幼少期ではまだエアコンのある家はブルジョアでした。
近所にエアコン(その頃はエアコンという言葉より、クーラーと呼ぶ方が主流でした。)が設置されると、どうにかその家の冷気をもらえないかと、友人同士で議論したものです。
クーラーのある家の窓にホースを差し込んで、自分の家に引き込むとか…。
また、夏場は銀行に行くのが楽しかったようにも思えます。
銀行は冷房が必ずと言ってよいほど効いていて、なぜか銀行には冷水器が設置されていて、そこで冷たい水をガブ飲みした記憶が有ります。
あの足で踏むと水が出て来る冷水器も見かけなくなってきましたね。
って、何の話をしていたんでしたっけ?
空調のことでしたね。
生活相談員さんは、すぐに空調を直すようなことをおっしゃっていましたが、結局、ヤッチが施設を後にした夕方になっても、業者さんらしい車は特養に停まっている気配は有りませんでした。
空調設備の修理が遅れることが有れば、それだけ特養に入所している人達の健康状態が気になるところです。
なわけで、今日(2014/07/16)も特養の様子を見てきました。
依然、扇風機が各所に置かれているところをみると、空調設備は直っていないようです。
前日の風景とは変わって、スポットクーラーなるものが何機か置かれていました。
工場、作業所といったところで、働いた経験のある方ならお分かりになると思いますが、家庭用の洗濯機くらいの大きさの本体に太いホースのようなものが付いていて、そこから冷風を出す簡易エアコンのような物です。
冷気だけをこの長いホースの先から出すのなら、このスポットクーラーはすぐれものですが、残念ながら、排気熱を本体上部あるいは背部から出します。
つまり、冷気と排気熱の行って来いの状態ですから、部屋全体の温度を下げるものではありません。
ここの特養の上層部の指示(憶測です。)でこのようなスポットクーラーを入手し、職員はその指示のもとに、スポットクーラーを運転させているのだと思いますが、ヤッチとしては、何で自然の風を取り入れようとしないのかがわかりません。
ハッキリ言って、理解に苦しみます。
今日も寝たきりの利用者さんの部屋の窓が閉めきりのままで、その寝ている利用者さんに向かって、扇風機の風が当てられているところがいくつかありました。
もちろん、あてられている風は決して心地の良い風ではありません。
書かせていただいていることは、テレビのニュースや新聞記事になってもおかしくないとヤッチは思うくらいなのですが、どうも施設で働いている人たちの緊迫感のようなものは、残念ながら伝わって来ませんでした。
わざとそう装っているのかもしれませんが…。
スポットクーラーを入手できる予算が有るくらいなら、人員を増やすべきではないのか????
同じフロアの別棟では、空調は正常に働いて、涼しい環境が有るのですから、交代交代でも良いから、涼しい場所で日中の暑い時間帯だけでも利用者さん(入所者さん)を避難させてあげることはできないのでしょうか?
ヤッチが一番申し上げたかったことはこのことです。
そして、今日、生活相談員さんではない別の職員さんにこのことをぶつけてきました。
職員さんの話では、『すでにそういった措置はとらせていただいている。』との答えでした。
でも、ヤッチが見る限りでは、ほとんどの利用者さんは蒸し暑い環境にいらっしゃる様子で、涼しい別棟で過ごしているようにはとても見えませんでした。
そして、この空調設備が元に戻るのは、早くても今度の日曜日(2014/07/20)になるという話もいただきました。
特別養護老人ホーム
さすがです…。
(; ̄ー ̄川 アセアセ
特別養護老人ホーム
さすがッスね!
(; ̄ー ̄川 アセアセ
蒸し暑い環境に置かれているのは物ではなく、人間です!!
物でもかわいそうです!!
できることなら、代わってあげたいが…。
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アルツ君の息子ヤッチです。
2014年12月07日の日曜日です。
アルツ君が脳梗塞でK病院に入院してから、13日目になりました。
病院に着くと、日曜日で外来は休診のため、人影はまばらです。
エレベーターで三階に上がると、看護師さんの姿もいつもに比べると、少ないようです。
もしかすると、療法士さんの姿を見かけないので、その分、人影が少ないのかもしれません。
ヤッチがアルツ君の病室に入ろうとしたところ、病室の入り口付近で私服姿の男性に呼び止められます。
男性:「失礼ですが、ご面会ですか?」
ヤッチ:「はい。」
男性:「病室はこちらですか?」
男性はアルツ君の病室の方向に腕を上げます。
ヤッチ:「そうですけど。」
男性:「(アルツ君の)ベッドはどこですか?」
ヤッチ:「窓際の一番奥です。向かって左側です。」
男性:「大変失礼なんですけど、これから清掃を始めさせていただきます。お部屋に入られても構わないのですが、30分程度、お部屋の外に出られなくなってしまいますけど、よろしいでしょうか?」
ヤッチ:「…。」
ヤッチは一瞬、躊躇しました。
もし、アルツ君が眠っていたら、アルツ君の寝顔とにらめっこするしか時間を潰す方法がないからです。
でも、せっかく来たのに、病室に入らず30分も待たされるのも、考え物です…。
ヤッチ:「でも、いいや。病室の中に入らせてもらいます。」
この男性、たぶん清掃業者の人だと思いますが、作業着姿ではなかったので、清掃業者の人なのか、病院の人なのか、結局いまだによくわかりません。
アルツ君の病室に入ると、病室の中はガラーンとしています。
今までは、6人部屋で、ベッドとベッドの間隔も狭く、病室から出て来ると、自分が箱寿司にでもなったような気分でした。
でも、この日は入口からすぐのベッド3台がありません。
3人、いっぺんに退院?
それとも…???
でもアルツ君のベッドの並びの入院患者さん達はそんな感じじゃなかったもんなぁ…?
『そんな感じ』はご想像におまかせします。
病室の中では、ベッド3台が残されていて、廊下寄りのベッドが有った床を作業着姿の人達が3人で掃いています。
病院のユニフォーム姿ではなかったので、おそらく外部請負の清掃業者さんなのでしょう…。
定期清掃か何かだと思います。
ヤッチはその作業している横を通り抜け、アルツ君のベッドに向かいます。
アルツ君は、目を閉じていましたが、眠ってはいないようです。
ヤッチ:「ボタモチ食ってる夢でも見てたか?」
アルツ君:「わーさん、どーいた?(ばあさん、どうした?)」
ヤッチ:「ばあさん?ばあさんなら家にいるぞ。今日もここに来たいって言ってたけど、まだ体力的に無理そうだから、連れて来なかったよ…。顔、見たかったか?」
アルツ君が枕の上で小さく首を横に振ります。
ヤッチ:「なんだよ、顔を見たいんじゃないのかよ…。ばあさんの部屋の雨戸の滑りが良くないから、旦那さんに早く元気になってもらって、直してもらいたいって、言ってたよ。」
アルツ君:「かゆーの…。」
アルツ君がミトンの手で腕を擦ります。
点滴の針の跡がかゆいようです。
腕のあっちこっちに注射の跡が見られます。
ヤッチ:「かゆいよな~。クスリを塗っとくか?」
薬嫌いのアルツ君にわざとこの質問をぶつけます。
アルツ君:「うーめいあわ、にあいめはしんあっあの…。」
ヤッチ:「???」
アルツ君:「うーめいあわ、にあいめはしんあっあの…。」
ヤッチ:「『有名だった』か?」
アルツ君が小さくうなずきます。
アルツ君:「うーめいあわ、にあいめはしんあっあの…。」
ヤッチ:「『有名だった二代目』かな?」
アルツ君が小さくうなずきます。
アルツ君:「うーめいあわ、にあいめはしんあっあの…。」
ヤッチ:「『有名だった二代目は死んじゃったの…。』か?」
アルツ君が小さくうなずきます。
ヤッチははじめ、菅原文太さんや高倉健さんを思い浮かべましたが、アルツ君にその情報は入っていないはずです。
ヤッチのこと?
でも有名じゃないしな…。
アルツ君はこのあと、何度もこの言葉をか細い声で繰り返していました。
アルツ君の身体には多数のコードがからまっていましたが、足元にある生体情報モニタには、数値が一つしか表示されていません。
看護師さんを呼びに行こうにも、清掃が始まっていて、病室の外には出られません。
ナースコールも設置されていないので、使えません。
ナースコールは設置しても、アルツ君が引き抜いてしまう可能性があるということを、入院時に病院側に伝えてあるので仕方ありません。
そうしているうちに、清掃業者さんがポリッシャーを回し始めました。
ご存知の方も多いと思いますが、ポリッシャーというのは、オフィスやこうした病院などの床を洗浄する機械で、機械のヘッドには円形のブラシが付いていて、電気でこれをクルクル回転させて使います。
手元のレバーを引くと、液体の洗剤も出てきます。
業者さんがポリッシャーを回すと、清掃部分とアルツ君のベッドを仕切っているカーテンが波打ちます。
作業している業者さんたちは気づいていないのかもしれませんが、ポリッシャーのブラシが回転すると、けっこう風が来ます。
家庭用のカーテンと違って、病院のカーテンですから、床スレスレには設置されていません。
アルツ君が少しせき込みます。
アルツ君:「なーいやってるんだ…?」
ヤッチ:「今、旦那さんの横で掃除をしてるんだよ…。」
アルツ君:「さむーい…。」
ヤッチはアルツ君の肩まで布団をかけ直します。
ヤッチもビル清掃などのアルバイトを経験したことが有ります。
プロ並みの仕事はできませんが、床の清掃の手順はある程度はわかっています。
今まで塗られていたワックスを剥がし、改めてワックスをかけ直す場合は、手順が異なりますが、一般的な床の清掃手順は以下になります。
- 清掃スペースを確保するため、床の上の荷物を可能な限り、移動します。
- 汚れている床のチリやホコリをホウキやフローリングワイパーで取り除きます。(掃除機を使う場合もあります。)
- ポリッシャーを回転させ、液体洗剤を出しながら、床を洗浄します。(電動のデッキブラシと考えたらイメージしやすいかもしれません。)
- 汚水が床に広がるので、カッパギというワイパー状の道具と、ちり取りを使って汚水を回収します。この作業を『カッパぐ』と言います。汚水はあらかじめ用意したバケツの中に捨てます。この時、汚水回収は慣れていない人がやると、ちり取りの中に入れる時に飛び散り、自分の洋服が汚水まみれになることが有ります。
- 床に洗剤分が残っていることが有るので、モップで水拭きします。
- 送風機(扇風機)を使って、床を乾かします。
- ワックスを掛けます。モップを使うこともありますが、最近はフローリングワイパーのような道具を使います。ヘッド部分はウェットシートを分厚くしたような素材のパイル地で、ワックスが染みこむような構造です。
- 送風機(扇風機)で乾かして、移動した荷物を元の位置に戻して終了です。
話が逸れましたが、この一連の作業をアルツ君が寝ている病室でやるわけです。
アルツ君の病室には、アルツ君を含め、3人の患者さんが残されていましたが、1人は意識が戻っていない重症の患者さんで、定期的に痰吸引の必要な方です。
アルツ君が再び、声を発します。
アルツ君:「さむーい…。」
ヤッチはカーテンを少しめくり、清掃の様子を伺います。
送風機(扇風機)を回しているようです。
送風機はアルツ君のベッドの方に向けられているわけではなく、病室の入り口に向けられていますが、それでも対流ができ、アルツ君の方に風が来ます。
ヤッチ、すでにお気づきだと思いますが、段々、怒りがこみ上げてきました。
まあ、ヤッチ的には病室に入ったときから、『あり得ない』だったんですけどね…。
病室に入った瞬間、床を掃いていたんですよ。
病人のいるすぐ脇で、普通ホコリやチリを舞い上げないでしょ?
ホコリやチリを舞い上げないようにどこかに持って行き、病人のいないところで回収するならまだわかります。
ヤッチはアルツ君のベッドサイドに腰かけていましたが、すぐ横に業者さんの道具類が近づいてきました。
清掃部分に自分たちの道具が有ったら、作業に邪魔になるので、おそらく作業員の誰かが押しのけたのだと思います。
水蒸気爆発では済まされない予感です。
ヤッチの腹ワタで、マグマがその時をうかがっています。
その証拠にヤッチの腕がブルブル言い出しました。
でも、ワックスがけをしている最中に、清掃部分に足を踏み入れる事ができません。
業者さんは、雰囲気からして、病院の指示の元に作業をしているようです。
大声を上げて、廊下にいる看護師さんを呼ぶにしても、病室には他の患者さんもいます。
仕方がないので、作業が終わるのを待ちます。
アルツ君は眠ってしまいました。
どうやってマグマを静めようか考えていると、いきなり、カーテンをバサッーと開けられました。
看護師さんです。
ここからはヤッチのお怒りモードなので、あえて敬称を略させていただきます。
看護師:「あっ。いらしてたんですね?(病室の)手前のほうの作業が終わりましたので、廊下に出て、お待ちいただけますか?」
この後、どういう風に作業するのかを見極めようと、マグマちゃんに差し水をして、とりあえず廊下に出ます。
アルツ君の面会に来た時は、早く病室に向かうことばかりを考えていて、全く気づきませんでしたが、アルツ君の病室に有ったベッドやテレビ、キャビネットなどの荷物は廊下に移動させてあったようです。
もちろん、患者さんは退院したわけでも、『そんな感じ』だったわけでもなく、病室の外に出されていたのです。
廊下からアルツ君の病室を覗き込むと看護師Aがアルツ君に付けられていたモニタのコード類を引き抜いています。
看護師Aが看護師Bを呼び、ベッドの移動を手伝うように話しかけています。
アルツ君のベッドです。
アルツ君のベッドを二人で動かし、今清掃の終わったばかりの床の上まで移動します。
病室から入ってすぐ左です。
同様に、他の患者さんの寝ているベッドも清掃の終わった箇所に移動し、病室の奥のスペースを空けます。
業界用語でいうところの『テレコ』的発想です。
ヤッチ:「まさか、ベッドを病室の外に出さないで、残りの部分を掃除するんじゃないでしょうね?」
看護師A:「そうですが、何か?」
ヤッチ:「あのさ、掃除中の病室の中がどれだけ劣悪な環境かわかって言ってるの?」
看護師A:「でも、こうしないと残った部分を掃除できませんから。」
ヤッチ:「いやいや、違うでしょ。清掃作業が終わるまで、別の場所で待機でしょ。」
看護師A:「おっしゃってる意味がわかりませんけど?」
ヤッチ:「俺、今まで病室の中にいたけど、病室の中で、床に向かって扇風機を回すんだぜ。チリやホコリが舞うことくらいわかるよね?」
看護師Bが割って入ります。
看護師B:「でも、規則ですから!」
ヤッチ:「はあ?規則?どこの規則か教えてもらおうじゃないか?」
看護師B:「でも、規則は規則なんですっ!!」
ヤッチ:「どこにある規則なんだよ~。あなた方、病院内部の規則だろ?患者は関係ないんじゃない?入院の手続きの時に、大声を上げたりとかで、他の患者さんの迷惑になる時はベッドを移動することもあるって言うのはこっちも聞いて、契約書にもサインしたよ。でも、これは一人一人の患者が快適に過ごせるための協力のお願いのわけだろ?ちょっと趣旨が違うよね?病室を掃除したいなら、掃除をしない場所にベッドを移動させてよ?」
看護師B:「できないんです!!」
ヤッチ:「でも、最初の3人は廊下の外にいるじゃないかよ!」
看護師B:「…。」
ヤッチ:「だいたい、汚い空気を扇風機でカクハンしている病室に患者をとどめておくというのがどれだけ良くないことか、仕事柄わかるでしょうに…。あんたら、掃除と人の命、どっちが大切だと思ってんだよっ!!」
看護師B:「掃除もしていない不衛生な部屋に寝てもらう方がもっと良くないと思います。」
ヤッチ:「今は、その前段階の話をしてるんだよね。だいたい、さっきから掃除の様子を見てたけど、ろくに換気もしてないじゃないかよ!しかもベッドのそばにモップの頭が近寄ってくるんだよ。あなた方だって、自分の寝ている枕元にモップの頭が近づいてきたらどう思うか…。自分が休んでいるところに、耳元で掃除機をかけられたらイラッと来ない?」
看護師B:「空調は入ってますっ!!」
ヤッチ:「それは暖房でしょ?換気とは言わないでしょ?」
看護師B:「入ってます!」
ヤッチ:「まあ、あなた方はマスクしているからいいよ。でも親父を含めて、この中にいた患者は誰一人、マスクも着けてないんだぜ?せめてマスクを装着させるくらいの配慮が有ってもいいんじゃないの?」
看護師B:「それはたまたまです!」
ヤッチ:「だから、そのたまたまが有っちゃいけないんでしょうにっ!!あなた方は命を預かる身として、たまたまは許されないでしょ!!俺が言わなくたって、命の大切さはわかってるはずでしょっ!」
看護師B:「とにかくできませんっ!」
ヤッチ:「だ・か・ら、病室じゃなくて、せめてベッドを廊下に出そうよ。些細なことかもしれないけど、命に係わるような事かもしれないんだぜ?このままじゃ、また親父は扇風機の回る部屋で寝ていなきゃならなくなるんだぜ。」
看護師B:「廊下に出した方がもっと危ないんですっ!!」
ヤッチ:「どうしてよ?わかるように説明してよ?」
看護師B:「説明する必要がありませんっ!」
ヤッチ:「あんた、今『もっと危ないんです。』って言ったよな。それじゃあ、少なからず病室にとどめておくことも、自分で『危ない』って認めたことになるんだぜ?」
看護師B:「…。」
ヤッチ:「あなた方は、たぶんここの病院の指示で動いてるんだと思うよ。そういう意味では、こうるせー奴にあたっちまって、立場上、可愛そうな日になってしまったかもしれない。俺も個人的にあなた方に恨みはない。だけど、あなた方が些細な取るに足らないと思ってることを患者や患者の家族はものすごく重要なことだと考えてるっていうアンテナは常に持っとこうよ。あなた方と話をしても、これ以上埒が明きそうもないから、ここの責任者呼んでよ?」
看護師A:「責任者はたぶん不在です…。」
ヤッチ:「不在なら不在でいいから、この先も作業を続けるのか、みなさんで相談してくださいよ。やるからにはこちらが納得いく結論を出してください。私が聞きたいのは、半分ずつ病室を清掃するのではなくて、なぜ病室で寝ている患者全員を清掃作業をしない安全な場所に移動させないのか?の一点だけだから。デイルームで待ってます。」
ヤッチはデイルームに行き、自販機でお茶を買います。
お茶を飲んでいる間も、興奮と怒りで、しばらく震えが止まりませんでした。
結局、デイルームには誰も現れませんでした。
ヤッチがデイルームにいる間にアルツ君のベッドは元の位置に戻されたようです。
廊下に出されていた荷物も病室に戻されたようです。
清掃業者さんたちが暗い表情で引き上げて行きました。
清掃は中止、もしくは延期になったようです。
お茶を飲みながら、段々と怒りと興奮がおさまってくると、今度はキレてしまった事への反省の念がこみ上げてきました。
いい大人が病院で口論ですからね…。
ヤッチの要求は理不尽な要求だったのでしょうか…。
病室に戻ります。
アルツ君は眠っています。
ヤッチがアルツ君のベッドサイドに腰かけていると、先ほどの看護師Aさんが謝罪にやってきました。
ヤッチも謝罪しました。
後日、責任者からヤッチ宛てに電話をいただけるという約束もしていただきました。
アルツ君が二人の声でうっすら目を開けます。
看護師さんはその場を離れて行きました。
ヤッチ:「旦那さん、またやっちまったよ…。」
アルツ君:「わーんない…。(わかんない…。)」
ヤッチ:「いつもだったら、『みっともないこと、すんなっ!』って怒ってくれるじゃんかよ…。」
アルツ君:「わーんない…。」
アルツ君、再び眠りについてしまいました…。
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