アルツ君は職人進行性核上性麻痺の疑いのある元植木職人のアルツ君(父)、アルツ君の愛妻キノコさん(母)、そしてアルツ君の息子ヤッチの日々の生活を紹介しています。
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妾(めかけ)を囲う職人

2012/07/17 (火)  カテゴリー: 認知症の症状
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こんばんは。

アルツ君の息子ヤッチです。

(^_^)/~

連日、茹だるような暑さが続いています。

東京も梅雨明けしたようですね。

そんな暑いさなか、アルツ君のいる施設に面会に行ってきました。

午後の一番暑い盛りに自転車を漕いで行ってしまったので、帰ってきたら、腕が真っ赤です。

^_^;

アルツ君の部屋は今日は引き戸が閉まったままです。

いつもは、開けたままのことが多いのですが、昼寝でもしているのでしょうか。

コンコンとノックすると、中から声が聞こえてきます。

アルツ君:「おうっ!!」

ヤッチは引き戸を開けます。

アルツ君、ベッドからちょうど起き上がったところみたいです。

ヤッチ:「寝てたのか?」

アルツ君:「いや、ちょうど寝ようかなと思ったところだ。何にもやることないからなぁ…。」

この言葉を聞くと、ヤッチも返答に困ります。

(-_-;)

ヤッチ:「今日は外はものすごく暑いよ。」

アルツ君:「夏だからな。」

ヤッチ:「おっ。夏だってわかるんだ!?」

アルツ君:「わかるさよ~。これで冬だなんて言ったらボケてるって言われるぞ!?」

ヤッチ:「いや。じゅうぶんボケてるよ。」

アルツ君:「それより、ばあさんはどうした?」

アルツ君が言う『ばあさん』とはもちろん最愛の妻であるキノコさんの事です。

最近、アルツ君の記憶の中ではしばしばキノコさんが行方不明になります。

ヤッチ:「ばあさん!?ばあさんなら家に居るよ。」

アルツ君:「そっかぁ…。仕事に行ったんじゃないのかぁ…。」

ヤッチ:「仕事なんてもともとしてないじゃないかよ。だいだいいくつだと思ってんだよ?」

アルツ君:「俺よりちょっと若いくらいだろっ!?」

ヤッチ:「じゃあ、いくつ?」

アルツ君:「38。」

ヤッチ:「えっ~。38がそんなにハゲ散らかしてるわけないだろっ。八十いくつの間違いだろっ!?」

アルツ君:「そうだっけっ!?八十いくつだっけ?」

ヤッチ:「84。」

アルツ君:「そうかぁ…。そんななるのかぁ…。じゃあ、ばあさんも結構な歳だなぁ…。」

ヤッチ:「そういうことになるねえ~。」

キノコさんも9月になると、アルツ君と同じ84歳になります。

アルツ君:「で!?俺は今日、家からここに来たんだよな!?」

ヤッチ:「はあ?」

アルツ君:「朝は家に居たんだよな?」

ヤッチ:「家ってどこ?」

アルツ君:「俺の家だよ。」

ヤッチ:「俺の家はわかるけど、俺の家なんて有るのか?」

アルツ君、すでにここ特養に住所を移して、以前住んでいたアルツ家はもう大家さんにカギを返してしまっています。

アルツ君が高齢者虐待防止法で保護されている間の出来事ですから、事情は説明して有りますが、覚えてはいないようです。

しかし、その間、アルツ君は自宅などには帰っていません。

アルツ君:「家くらい有るさよ~。」

ヤッチ:「どこに有るんだ?」

アルツ君:「道路沿いだよ。」

ヤッチ:「いや、だいたい家は道路沿いだろ!?」

アルツ君:「きれいな道路沿い…。」

ヤッチ:「多分、今日は家から来てないと思うよ。ずっとここに居て、そのベッドで寝てたと思うよ。」

アルツ君:「いや、そうじゃないなぁ…。確かここにすっ飛んできたはずだ。」

ヤッチ:「すっ飛んで来たって!?だいたい走れるのか?」

アルツ君:「そうだよなぁ…。じゃあ、どっから来たんだろ!?」

ヤッチ:「だから、ずっとここに居たって!!。昨日も一昨日もその前からずっとここに居たって!!」

アルツ君:「俺がか?こんな山奥に!?ここをどこだと思ってんだよ。山の中だぞ!?」

ヤッチ:「はあ?」

アルツ君:「だから、ここは山の中!!」

ヤッチ:「何で急に山の中になっちゃうのかなぁ…。ここは東京だぞ!?しかも23区内!!」

アルツ君:「ウソっ~!!」

ヤッチ:「ウソじゃないよ、ホントだよ。周りを見渡してごらんよ?」

アルツ君:「木がいっぱい有るなぁ!?やっぱり山奥だ。」

ヤッチ:「山奥じゃないよ。山なんてどこにも見えないじゃないか。」

アルツ君:「そうか???」

ヤッチ:「そんなに疑うなら、廊下の窓から景色を眺めてごらんよ?山なんてどこにもないから…。」

アルツ君と一緒に廊下に出て、一番景色が良く見える窓のところに行きます。

ヤッチ:「なっ?山なんて無いだろ?」

アルツ君:「ホントだ。山が無くなってる。」

ヤッチ:「無くなってるんじゃなくて、最初から無いよ。」

アルツ君:「そうだったっけ!?で、ばあさんはどこに居るんだ?」

ヤッチ:「さっき、言ったじゃないか、家だよ。」

アルツ君:「そうじゃないよ。どこに居るのかって聞いてるんだよ。」

ヤッチ:「ああ、そういう事かぁ。あそこに高圧線が見えるだろ!?あの2本目の高圧線の辺りかな!?」

アルツ君:「ぶら下がってるのか?」

ヤッチ:「何でぶら下がるんだよ。ぶら下がってたら、この世にいないよ。」

アルツ君:「そうかぁ…。で、何してるんだ?」

ヤッチ:「だから家に居るよ。洗濯物でも取り込んでる頃じゃないのかな!?」

アルツ君:「えっー!?ばあさんだぞ!?」

ヤッチ:「そうだよ。ばあさんが洗濯物を取り込んじゃいけないなんて法律有る?」

アルツ君:「無いかも知れないけど、俺は仕事に出かけてるとばかり思ってた。」

ヤッチ:「またそれかよ。」

アルツ君:「でさあ、改まって聞くけど、キノコ(キノコさん)はどうした?」

↑便宜上、キノコと書きましたが、アルツ君、この時キノコさんの本名を下の名前で呼んでいます。」

ヤッチ:「はあ?」

アルツ君:「キ・ノ・コ!!」

ヤッチ:「だからさあ…。それは今言った通り洗濯物を取り込んでるって…。」

アルツ君:「それはばあさんの事だろっ!?俺の行ってるのはキノコがどこに居るんだっていう事だよ。」

ヤッチ:「だから、あの高圧線のところだよ。」

アルツ君:「バカ言えっ!!一緒に居るわけないだろっ!!」

???

……

やっと、わかりました…。

アルツ君ですが、どうも『キノコさん』と『ばあさん』を別物と考えているようです。

(-_-;)

一方は若いキノコさん…。

もう一方はばあさんのキノコさん…。

短期記憶の欠落、現実と過去、幻視と夢が錯綜してアルツ君の頭の中で物語が暴走しているようです…。

(-_-;)

もしかすると、アルツ君の元へキノコさんの30~40年くらいも前の写真を届けてしまったからかもしれません。

(-_-;)

まだキノコさんも背筋が伸びてハツラツとしている頃の写真です。

施設の職員さんの話によると、その写真の一枚を大事そうに持ち歩いて、職員さんが見せてくれと言っても、見せてくれなかったそうです。

知っているという事は結局見たんでしょうけど…。

( 一一)

ヤッチ:「いったいどういうこと?もしかして、『キノコ』っていう名前の人物は『ばあさん』より若い?」

アルツ君:「そうだよ。うんと若いさ…。」

ヤッチ:「もしかして、『ばあさん』と『キノコ』の二人いる?」

アルツ君:「そうだよ。俺がこんなところに居るから、居場所がわからなくなっちゃったんだよ…。」

ヤッチ:「お言葉を返すようで、悪いんですけど、『ばあさん』と『キノコ』は同一人物だぞ!?」

アルツ君:「え?そうなのか?うっそっ…!?」

ヤッチ:「う~ん…。多分、キノコさんの昔の写真を見たんじゃないのか?」

アルツ君:「ああ。見たよ…。写真は見たけど、ばあさんはあんなに若くないぞ!?」

ヤッチ:「そうじゃないよ。写真が古いんだよ!!若い『キノコさん』が今は『ばあさん』になってるんだよ!!『キノコさん』と『ばあさん』は同一人物だよ。」

アルツ君:「へー。そうなのかー!!こりゃまた驚いた…。」

アルツ君、首をうなだれちゃってます…。

(-_-;)

ヤッチ:「驚いたのはこっちだよ。だいたい妾を囲えるほどの甲斐性ないだろっ!?」

アルツ君:「まあ、そりゃそうだ…。じゃあ、『キノコ』はあんなに、ばあさんになっちゃったのか!?」

ヤッチ:「だいたい、自分の歳を考えればわかるだろがっ。」

アルツ君:「まあ、そりゃそうだなぁ…。そうか。そういう事だったのかぁ…。」

ヤッチ:「やっとわかったようだね!?どう、スッキリした?」

アルツ君:「ああ、わかった。スッキリしたよ。で、ばあさんはどこに居るんだ?」

ヤッチ:「さっきも言った通り、高圧線のところっ。」

アルツ君:「バカっ!!それは『ばあさん』だろっ!?俺の言ってるのは『キ・ノ・コ』っ!!」

時として、こっちの思考の方がやられちまいそうです…。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

アルツ君

さすがです…。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

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