アルツ君は職人進行性核上性麻痺の疑いのある元植木職人のアルツ君(父)、アルツ君の愛妻キノコさん(母)、そしてアルツ君の息子ヤッチの日々の生活を紹介しています。
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ホーム喫茶

2013/02/21 (木)  カテゴリー: 特別養護老人ホーム
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こんばんは。

アルツ君の息子ヤッチです。

(^_^)/~

突然ですが、Windowsに標準で付いているメモ帳が日記にもなるってご存知でしょうか?

メモ帳を開いて半角の大文字で『.LOG』と記入します。

メモ帳


記入し終わったら、開いているファイルにたとえば、『日記.txt』など、ご自身の好きなファイル名を付けて保存します。

保存したファイルを再び開くと、この開いたファイルに自動で日付と時刻が記入されます。

日記帳


書き込まれた日付と時刻につづいて、内容を書き込めば、立派な日記帳の出来上がりです。

保存して再びファイルを開くたびに、日付と時刻が自動で記入されます。

しかも何と言っても、メモ帳なので軽いのが良いところ…。

付箋も良いですが、保存ができず、デスクトップが散らかってしまうことが有るので、こっちの方が使い勝手が良いかも!?

デスクトップなどに置いて、いくつかファイルを作成し、ビジネスとプライベートと分けて日記を付けるなんていうこともできるかもしれませんね。

是非使ってみてください。

\(^o^)/

手動で日時を挿入したい場合は?

上記のような『日記.txt』などのファイルを作らなくても、メモ帳に日時を挿入することは可能です。
新しくメモ帳を開き、日時を挿入したいところにカーソルを合わせ、キーボードの 【F5】 キーを押すと日時が挿入されます。
あるいは、メモ帳上部のメニューバーの [ 編集 ]-[ 日付と時刻 ] をクリックしても同様に日時が挿入されます。

これらの方法は『日記.txt』の日時を修正したい場合にも、有効だと思います。
追記 2014/02/05






さて、昨日は、アルツ君の施設に面会に行ってきました。

アルツ君の居室でお決まりの漢字テストからスタートです。

漢字テストの設問の中に『蠍』という文字があります。

アルツ君:「かー!!また難しい字が出てきやがったな…。虫が付いてるから虫なんだろうな…。」

ヤッチ:「砂漠とかに居るらしいよ?」

アルツ君:「ラクダか!?」

ヤッチ:「自分で虫って言っておいて、何でラクダなんだよ。」

アルツ君:「そうだよなぁ…???」

ヤッチ:「刺されると痛いらしいよ?」

アルツ君:「注射か?」

ヤッチ:「あの…。注射だったら、すぐ読めるでしょうに…。」

アルツ君:「そうだよなぁ…???」

ヤッチ:「俺も実物は見たことが無いけど、刺されたら痛そうな感じだな?」

アルツ君:「わかった!!ムカデだろっ?」

ヤッチ:「う~ん。おしいちゃ、おしいな…。ムカデは『百足』って書くだろ!?そんなにイッパイ足は無いかな…。足を少なくすると、段々似てくるかもな!?」

アルツ君:「足をむしり取るんだろ…。おっ!?ミミズか?」

ヤッチ:「それじゃあ、むしり過ぎだろう。じゃあ、ヒントね!?こいつが出て来る歌があるよ。」

アルツ君:「歌?」

ヤッチ:「♪いいえ わたしは 何とかの おんな~」

アルツ君:「オカマか?」

ヤッチ:「どうして、俺がオカマにならなきゃなんないんだよ!!反応するところが違うでしょうに!!…さ○り?」

アルツ君:「さゆり?」

ヤッチ:「そういうこと言ってると、天城越え熱唱するぞ~!!この字が女の人の名前だったら怖いぞ~!!」

アルツ君:「わかんないな~。バンザイだ~。」

ヤッチ:「答えはサ・ソ・リ…。」

アルツ君:「かー!!これがサソリかよ…。あいつ(姉のこと)じゃ絶対わからないな…!?かー!!サソリ!?」

アルツ君、漢字テストのことになると、必ず姉のことを引き合いに出し、自分と比べます。

そして漢字に弱い姉のことをコバカにします…。

くだらない問答をしているところで、施設の職員さんがアルツ君の居室の開いたままの扉をノックします。

職員さん:「あの…。今日これから、『ホーム喫茶』があるのですが、ご家族の方と一緒に参加されてはいかがでしょうか?」

以前も記事にしたと思いますが、こちらの施設では、『ホーム喫茶』と称して、月に何度かデイルームが喫茶店と化します。

入所している方の中で、希望者にお茶が振る舞われます。

もちろん、無料というわけではなく、後日、介護保険から請求されるシステムです。

現在アルツ君の介護保険等のお金の出し入れは成年後見人さんにやってもらっているので、定かではありませんが、1杯50円と聞いたことが有ります。

ヤッチ:「コーヒー飲めるってよ?どうする?」

アルツ君:「コーヒー!?じゃあ、行こ、行こう!!でも俺は財布持ってないぞ!?」

ヤッチ:「大丈夫だよ。今はお金持ってなくても…。」

アルツ君:「それじゃあ、余計行こ、行こう!!」

ヤッチ:「俺の分もおごってくれるのか?」

アルツ君:「おお、いいぞ。店ごと買っちゃえ!!」

今は、インフルエンザも落ち着いたということでしょうか…。

防火扉は閉まっていません。

防火扉が開いて開放的になった渡り廊下を歩いて、アルツ君とデイルームを目指します。

デイルームにはすでに入所者さんが大勢集まっていて、ホール係と化した職員さんたちが忙しそうにしています。

職員さん:「何をお飲みになりますか?」

職員さんがアルツ君にメニュー表を差し出します。

メニューには、コーヒー、紅茶の他にココア、カルピスや昆布茶も有るようです。

ホットにするか、冷たいのにするかも選択できるようになっています。

アルツ君:「そんなもん見なくたって、俺はコーヒーでいいよ。砂糖イッパイちょうだいよ。俺は甘いもん好きだからな!?」

職員さん:「では、あたたかいのにしますか?冷たいのにしますか?」

アルツ君:「コーヒーったらあったかいでしょ~。」

ヤッチもホットコーヒーを注文します。

すぐにアルツ君のもとに、コーヒーが届きます。

スティックシュガー2本にミルク、それにビスケットが3つ付いています。

高齢になると細いスティックシュガーは封を切るのも、意外に上手くできません。

ヤッチが特別に封を切ってやることに…。

ヤッチ:「このカップに砂糖2本は多いんじゃないの!?ひとつでいいんじゃないか?」

アルツ君:「そう言わずに、全部放り込めよ!!後で塩をなめるから。」

ヤッチ:「塩をなめたら、また砂糖をなめたくなるぞ~。」

アルツ君:「いいんだよ、いいから全部放り込め!!」

結局、2本のスティックシュガー全部投入です。

ヤッチ:「これじゃあ、コーヒーの味がしなくなっちゃうぞ~。」

アルツ君:「甘けりゃ、何だっていいんだよ。」

ヤッチ:「そのうち、朝起きたら、全身、アリだらけでまっ黒だな!?」

この日は、なぜか、ヤッチは入所者達からさんから、施設の職員さんと間違われます。

入所さんA:「ちょっと、わたしのココアまだ?」

ヤッチ:「申し訳ありません、すぐにお持ちします。すいませ~ん!!おかあさんのココアがまだだそうで~す!!」

職員さん:「はーい!!ただいま~!!」

あくまでもなごやかムードの中、『ホーム喫茶』が進行します。

アルツ君の腰かけているテーブルのひとつ向こうでは飲み物を飲み終えた入所者さんの集団が何やらもめています。

腰かけているのは全員女子…。

4名…。

聴こえてくるのは、代表格のお二人の会話です。

入所者さんB:「あら、奥さん、お財布引っ込めて~。今日はあたしが払うから。」

入所者さんC:「それじゃあ、悪いわよ。いつもお世話になっているんだから、私のほうこそ、払うわよ!!」

入所者さんB:「そんなわけ、行かないわよ!!私が!!」

入所者さんC:「私が!!」

入所者さんB:「私っ!!」

時々、街中の喫茶店で見かけるあき竹城集団とまったく変わりありません。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

もちろん、『ホーム喫茶』の場でお財布を出す必要はありません。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

入所者さんC:「何だか悪いわ~。それじゃあ、ワリカンにしましょうよ?」

入所者さんB::「そ~う~!!奥さんがそうおっしゃるならそうしましょっか!?」

入所者さんC:「…。」

入所者さんB:「…。」

腰かけている他の入所者さん:「…。」

急に全員無言になってしまいました。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

どうやら、ワリカンの計算をしているようです。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

でも、全部50円だから、計算する必要ないんですけどね!?

(; ̄ー ̄川 アセアセ

やがて入所者さんBが職員さんに声をかけます。

入所者さんB:「ちょっと、悪いんだけど、いくらになるか計算してくれる?」

職員さんが笑顔で答えます。

職員さん:「今日は、皆さん、お財布をしまってください。後で、僕が計算して、皆さんに請求しますから。」

入所者さんB:「じゃあ、頼んだわよ!?負けといてね!?」

ヤッチはこの光景がおかしくて、すっかりそっちに見入ってしまっていました。

気がつくと、アルツ君、不敵な笑いを浮かべながら、素知らぬ顔でヤッチのコーヒーまで飲んでしまっています。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

そして、またしても、ヤッチは施設の職員と勘違いされます。

少し遅れて、『ホーム喫茶』にいらした女性の入所者さんです。

車椅子を一人で押してきたようです。

入所者さんD:「そんなところに腰かけてないで、はやく仕事しなさいよ。」

ヤッチ:「申し訳ありません。すぐに仕事に入ります。」

またどこからか大きな声が聴こえてきます。

入所者さんE:「ねえ、ちょっと冷たい昆布茶もらえる?」

『冷たい昆布茶』って…。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

さすがにメニューにはないでしょ!?

飲みたくねーーー!!!

入所者さん

さすがです…。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

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浦島太郎になった職人

2014/09/03 (水)  カテゴリー: アルツ君
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また、いつでもいらっしゃい

こんばんは。

アルツ君の息子ヤッチです。

(^_^)/~

毎日、面会に行っている姉の話によれば、アルツ君、このところ、夜中になると、施設内でキノコさんを捜しまわり、不穏な行動をとるとのこと…。

キノコさんはアパートの一室を借り、アルツ君のいる特養にいないのですから、捜したところで見つかるはずは有りません。

そんな話を姉から聞いたものですから、昨日、ヤッチはアルツ君のところに様子を見に行ってきました。

施設に着いて、アルツ君のいるフロアに上がると、エレベーターをすぐ降りたところにあるデイルームで、アルツ君は他の入所者さんと楽しそうにおしゃべりしています。

生活相談員さんの姿も見えます。

ヤッチが、アルツ君の方へ近づいて行くと、アルツ君の方が先にヤッチに気づきます。

アルツ君:「あっ、あれは、せがれだよ。」

生活相談員さん:「せがれさんって、どなたのことですか?」

アルツ君:「せがれはせがれだよ。お前、何だかずいぶん感じが変っちゃったなあ?」

ヤッチ:「ずいぶん、来るなり、失礼だな。どんな風に変わったんだよ?」

アルツ君:「どんな風って言われても難しいけど、なんだか感じが変ったよ。」

ヤッチ:「別にどこも変わっちゃいないと思うんだけどな…。」

アルツ君:「そうか…???」

アルツ君が横に腰かけたヤッチの顔をジロジロと見回します。

ヤッチ:「どうも視線の先が、俺の頭の方ばかりに行くな?」

アルツ君:「そこは前から変わっちゃいない!」

ヤッチ:「うるせーよ!コーヒーなんて飲んで、ずいぶん贅沢だな?」

アルツ君:「ははー、これは選ばれし人だけしか飲めないんだな…。」

ヤッチ:「なんだ、その、『選ばれし人』っていうのは?問題児として選ばれたっていうこと?」

アルツ君:「ああいうこと、言ってやがるんだからなぁ…。」

生活相談員さん:「僕が、お入れしたんですよ。お父様、コーヒーがお好きだとおっしゃるものですから。」

ヤッチ:「また、砂糖がイッパイ入ってるんだろ?」

アルツ君:「それほどでもないよ、普通だよ、普通…。ねっ?」

アルツ君は前に腰かけている入所者さんに同意を求めています。

ヤッチはアルツ君が入所者さんと歓談している隙を見て、生活相談員さんを廊下の隅に呼び出します。

ヤッチ:「姉から聞いたんですけど。また、夜中にそちらに面倒をお掛けしちゃってるみたいですけど?」

生活相談員さん:「いえいえ。夜中、時折ですよ。昼間はご機嫌も良いようですし、今日もご覧のとおり、なごやかですよ。」

ヤッチ:「暑い時期が続いて、やっと涼しくなったと思ったら、雨ばかりの天気だったでしょ!?外に散歩に連れ出す機会も少なくて、ストレスがたまってるんじゃないかと思うんですよ…。」

生活相談員さん:「それは、確かに有るかもしれませんね…。すいません、こちらもなかなか散歩にお連れすることができなくて…。」

ヤッチ:「いえいえ、それは仕方がないこととして…。で、どうだろう?今日は晴れているので、母の部屋に連れて行こうと考えてるんですけど…?毎回、同じ質問していると思うけど、○○さん(生活相談員さんの名前)はどう思います?」

生活相談員さん:「お父様の場合、御気分を害される時は、たいていお母様のことですから、僕自身はお母様のところにお連れするのは、悪いことではないと思っていますけど…。」

ヤッチ:「そうおっしゃっていだけるなら、母の部屋にこれから連れて行こうかな?」

生活相談員さん:「了解です。ご準備を手伝いましょうか?」

ヤッチ:「リハパンとパッドの予備を持って行くだけなので、それには及びません。」

生活相談員さん:「わかりました。何か必要なものが有れば、声を掛けて下さい。」

ヤッチ:「ありがとうございます。夕飯時までにはこちらに戻ってきます。」

キノコさんも時間が有れば、ここ特養に面会に来ているのですが、アルツ君はキノコさんが面会に来たことをまったく覚えていません。

ヤッチの面会時には、アルツ君に必ずと言ってよいほど、『ばあさんはどうした?』、『ばあさんはどこにいる?』、『ばあさんはどこに住んでいる?』ということを訊かれます。

そんなアルツ君をキノコさんの部屋に連れて来て良いものか、いつも迷います。

外泊でもさせてあげられれば、いくらか違うと思うのですが、なかなかそういうわけにもいきません。

ヤッチは再び、歓談中のアルツ君のとなりに腰かけます。

ヤッチ:「これから、ばあさんのところに行こうと思うんだけど、どうする?」

アルツ君:「ばあさんってだれよ?」

ヤッチ:「ばあさんって、旦那さんの奥さんだよ。変な話だな、俺は旦那さんがここでばあさんを捜しまわってるって聞いたのに。」

アルツ君:「へえ、俺にはそんな人いたのか?」

ヤッチ:「じゃあ、ここに居るのは誰よ?」

アルツ君:「お前はどっかで拾って来たんだろ!?」

ヤッチ:「拾ってきてもいいけど、拾ってきたのは誰なんだろうな?」

アルツ君:「おれじゃあ、ないなぁ…。」

ヤッチ:「じゃあ、誰よ?」

アルツ君:「知らん!」

ヤッチ:「まあ、いいや。コーヒーを飲み終えたら、お宅の奥さんのところへ行こうよ?」

アルツ君:「奥さん?そんな人いたの?へえ…。」

ヤッチ:「奥さん、もしくは奥方、もしくはお嫁さん、もしくは女房、もしくは妻。名前はキ・ノ・コ…。」

アルツ君:「ああ、わかった、わかった。クワガタだか、ドロボウのところへ俺が行くんだろ?どうやって行くんだ?」

ヤッチ:「ここから、車椅子に乗って…。すこし暑いけど、干からびないように休み休みな…。」

アルツ君:「かっー!たまに、しょうゆを掛けて下さいよ?」

ヤッチ:「愛しの愛しの奥方に会いに行くのに、運転手付きだぞ!?」

アルツ君:「へえ…。それで…?キスぐらいさせてくれるのかね?」

ヤッチ:「あのさぁ…、なんで、息子の前でそういうことを平気で言うかな…。どんどんエロさがパワーアップしてないか?エロエロじじいじゃんかよ!」

アルツ君:「じじいは余計ってもんだろう…???」

ヤッチ:「エロは否定しないわけね?」

アルツ君:「うるさいっ!」

ヤッチ:「まあ、早いとこ出かけようぜ。」

アルツ君:「ああ、わかった。ばあさんの家ってどこだっけ?」

ヤッチ:「○○川のそば。前に行った時、イチョウの木が有ったろ?」

アルツ君:「そうだったっけか…。」

ヤッチ:「まあ、行けば思い出すさ。」

アルツ君:「ダメだな、すーぐ忘れちゃうんだよな…。」

ヤッチ:「忘れたら、思い出せばいい話だべ。さあ、行くべ!」

お決まりの会話を繰り返し、施設をスタートです。

道路に出ると、アルツ君、すれ違う人たちをじっと見つめながら、つぶやきます。

アルツ君:「あの人も覚えてないなぁ…。あっちで自転車をこいでる人も覚えてない…。」

ヤッチ:「当たり前だよ。俺だって、見た事のない初対面の人たちばかりだもの、覚えてるわけないよ。

アルツ君:「そうかぁ…。すーぐ忘れちゃうんだよな…。」

ヤッチ:「みんながみんな、顔見知りだったら、大変だぞ。」

アルツ君:「そうかなぁ…。」

ヤッチ:「そうだよ。すれ違う人たちがみんな覚えている人だったら、挨拶するのに大変で、ばあさんの家までたどり着けないぞ?」

アルツ君:「あっ!でもあの木は覚えてるぞ。ずいぶん太くなりやがったなぁ…。」

ヤッチ:「どの辺を歩いてるのかわかるのか?」

アルツ君:「いや、わからない。でもあの木は覚えてる。」

ヤッチ;「へえー、たいしたもんだな。俺は全く覚えてないぞ。」

アルツ君:「確か、あの木は前に俺が切ってやったんだよ。また切ってやらないとボサボサだ。」

アルツ君が本当に覚えているかどうかは疑問でしたが、アルツ君、人物よりも樹木や庭に、反応するようです。

ヤッチ:「じゃあ、また旦那さんがハシゴに登って切ってやれば?」

アルツ君:「やだ!」

ヤッチ:「なんで?」

アルツ君:「なんでも!」

ヤッチ:「まるで、こどもの会話だな。」

行き道はずっとこんな会話が続きます。

キノコさんのアパートが近づいてきます。

ヤッチ:「この辺は、なんとなく覚えてるべ?」

アルツ君:「なんとなく、覚えてないな…。」

ヤッチ:「なんだ、それ!そこを曲がったところに藤棚が有るよ。藤棚は?」

アルツ君:「覚えているような、覚えていないような…。」

ヤッチ:「奥さんの部屋のそばまで行けば、思い出すよ。」

ヤッチはキノコさんのアパートの入り口付近でアルツ君の車椅子を止めます。

ちなみにヤッチの部屋の真ん前なんですけどね。

ヤッチ:「あそこに押し車(シルバーカー)が見えるだろ?あそこが旦那さんの奥さんの部屋だよ。」

アルツ君:「かー!あそこが?あんなところに居るのか?」

ヤッチ:「居るったって、押し車の中にいるわけじゃないからな!」

アルツ君:「お前ね、なんぼなんでも、俺だってそれくらいのことわかるさよ~。確かどっかに、金にならない貧相なトマトを植えてるところが有ったはずだろ?」

ヤッチ:「うるせーよ!それは俺の部屋のことだろ?それ、去年とか一昨年の話だろ?今年は小玉スイカを作って、とっくに食べ終わっちゃったよ。しかし、まあ、変な記憶だけは残ってるんだなぁ…。」

アルツ君:「あんなブザマなトマトを忘れろったって、忘れるわけがない!」

ヤッチ:「失礼、極まりないな!?旦那さんに覚えていてもらおうと思って、ブザマなものをあえて作ったんだよ!」

アルツ君:「ものは言いようですね~。」

キノコさんの部屋の前まで来ました。

キノコさんにはアルツ君を連れて行くことを事前に連絡してあります。

ヤッチはキノコさんの部屋の呼び鈴を押します。

キノコさんが部屋のドアを開けます。

アルツ君は外で車椅子に腰かけたままです。

キノコさん:「いらっしゃいませ。待ってましたよ。」

アルツ君、キョトン顔です。

キノコさん:「何?どうしたの?ここが私のうちですよ。前にも来た事あるでしょ?」

アルツ君:「来たことあるか、どうかは知らんけど、お前そんなだったっけ?」

キノコさん:「『そんなだった』とは?」

アルツ君:「お前、そんな、シワクチャだったっけ?」

キノコさん:「まあ、失礼ね。つい、この間もあっち(施設)で会ったじゃない。いいから、中に入りなさい。」

アルツ君:「入ってもいいのか?」

キノコさん:「なに、遠慮しているのよ。あんたの家みたいなものじゃない。」

アルツ君:「だれか、変な人(男性)が中にいたりしないよな?」

キノコさん:「そんな人がいるわけないじゃない。いいから、いいから入りなさい。」

ヤッチはアルツ君がキノコさんの部屋の中に入るのを手伝います。

部屋に入ると、アルツ君は用意してあった椅子に腰かけ、キノコさんもベッドに腰かけます。

アルツ君:「かー!お前、そんなだったっけ?いつからそんなになったんだ?」

キノコさん:「だって、あんたと同じじゃない。生まれ年が一緒で、もうすぐ誕生日が来たら、あんたと同じ歳よ。」

アルツ君:「うっそー!もっと若かったんじゃなかったっけ?」

キノコさん:「あんたと同じ。昭和三年。」

アルツ君:「じゃあ、まだ若いや。」

キノコさん:「なんで?自分で自分の歳がいくつだと思ってるの?」

アルツ君:「ははーん…。」

アルツ君、自分の生まれ年はすぐ言えますが、年齢は思い出せないので、笑ってごまかします。

キノコさん:「じゃあ、自分がいくつくらいだと思ってるの?」

アルツ君:「そうだな…。30代か40代くらいだろ!?」

キノコさん:「な~んで~?あんた、ホントにわからないの?86よ?」

アルツ君:「うっそっー!!そんなになるわけないだろっ?」

キノコさん:「ウソなんかじゃありませんよ。だから、私だって、こんなにシワクチャなんだから…。」

アルツ君:「かっー!!ホント?」

キノコさん:「そこにいる息子が50なのに、なんであんたの方が若いわけ?」

アルツ君:「あれは、どっかで拾ってきたからだろ?」

キノコさん:「違います。あんたも自分の顔をよく見てご覧なさい?」

アルツ君:「見なくたって自分の顔くらいわかるさよ~。」

キノコさん:「ウソウソ。そこに手鏡が有るから自分の顔を見てごらんなさい?」

そう言って、キノコさん、テーブルの上に有った手鏡をアルツ君に手渡します。

以前にも似たようなことがありましたが、今回はアルツ君、手鏡に映った自分を自分だと認識できるようです。

関連記事:鏡の中の職人 [ アルツ君は職人 ]

その証拠に、顔がニヤついています。

キノコさん:「どう?わかったでしょ?」

アルツ君:「ふふ…。」

アルツ君、ニヤついた顔のまま、手鏡をテーブルに置いてしまい、ヤッチの買ってきた缶コーヒーをすすり始めます。

キノコさん:「鏡にあんたの顔、映ってたでしょ?」

アルツ君「ふふ、どうかな…。」

キノコさん:「髪の毛は?黒かった?」

アルツ君:「ふふ…。」

キノコさん:「どっち?」

アルツ君:「ふふ…。」

キノコさん:「ねえ、どっちなの?」

アルツ君:「白いよっ!!」

アルツ君が大きな声で返答します。

ただ、大きな声といっても、怒っているという感じではなく、顔はニヤけたままです。

さすがに相手も手鏡なので、映った自分の顔を受け入れざるをえません。

その時々で、変化しますが、少なくとも今回、キノコさんの部屋に来る前までのアルツ君の頭の中は、キノコさんも若く、自分も若い頃のままだったようです。

そして、キノコさんの部屋に来て、現実を突きつけられ、笑うしかないといったところでしょうか…。

まあ、落胆している様子でもなく、なごやかな雰囲気だったので、ヤッチは席を外すことにします。

ヤッチ:「ちょっと、俺、用事が有るから、出て来るわ。旦那さん、それまで、奥さんのところでおしゃべりしてて?」

アルツ君:「あいよ。」

施設に戻らなくてはならない都合上、のんびりさせてあげられないのが可愛そうですが、1時間ちょっとしたところで、ヤッチはキノコさんの部屋へ、アルツ君を迎えに行きます。

アルツ君、すでに帽子を被って帰り支度をしています。

ヤッチ:「あれ?もう帰る準備はじめてたのか?」

さっきまでの和やかムードとは違い、ちょっとアルツ君、暗めの表情です。

ヤッチはキノコさんの方に視線を移します。

キノコさんが『いいの、いいの!』と目くばせをします。

アルツ君:「お前、知ってたか?」

キノコさんはヤッチに、『聞き流してちょうだい。』というアイコンタクトです。

ヤッチ「『知ってたか?』って、何を?」

アルツ君:「ばあさんのことだよ…。」

ヤッチ:「なんのことだろう…????」

アルツ君:「ばあさんなぁ…、もう…、子どもは産めないんだってよ…。」

アルツ君

さすがです…。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

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