site_title進行性核上性麻痺の疑いのある元植木職人のアルツ君(父)、アルツ君の愛妻キノコさん(母)、そしてアルツ君の息子ヤッチの日々の生活を紹介しています。
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浦島太郎になった職人

2014/09/03 (水)  カテゴリー: アルツ君
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また、いつでもいらっしゃい

こんばんは。

アルツ君の息子ヤッチです。

(^_^)/~

毎日、面会に行っている姉の話によれば、アルツ君、このところ、夜中になると、施設内でキノコさんを捜しまわり、不穏な行動をとるとのこと…。

キノコさんはアパートの一室を借り、アルツ君のいる特養にいないのですから、捜したところで見つかるはずは有りません。

そんな話を姉から聞いたものですから、昨日、ヤッチはアルツ君のところに様子を見に行ってきました。

施設に着いて、アルツ君のいるフロアに上がると、エレベーターをすぐ降りたところにあるデイルームで、アルツ君は他の入所者さんと楽しそうにおしゃべりしています。

生活相談員さんの姿も見えます。

ヤッチが、アルツ君の方へ近づいて行くと、アルツ君の方が先にヤッチに気づきます。

アルツ君:「あっ、あれは、せがれだよ。」

生活相談員さん:「せがれさんって、どなたのことですか?」

アルツ君:「せがれはせがれだよ。お前、何だかずいぶん感じが変っちゃったなあ?」

ヤッチ:「ずいぶん、来るなり、失礼だな。どんな風に変わったんだよ?」

アルツ君:「どんな風って言われても難しいけど、なんだか感じが変ったよ。」

ヤッチ:「別にどこも変わっちゃいないと思うんだけどな…。」

アルツ君:「そうか…???」

アルツ君が横に腰かけたヤッチの顔をジロジロと見回します。

ヤッチ:「どうも視線の先が、俺の頭の方ばかりに行くな?」

アルツ君:「そこは前から変わっちゃいない!」

ヤッチ:「うるせーよ!コーヒーなんて飲んで、ずいぶん贅沢だな?」

アルツ君:「ははー、これは選ばれし人だけしか飲めないんだな…。」

ヤッチ:「なんだ、その、『選ばれし人』っていうのは?問題児として選ばれたっていうこと?」

アルツ君:「ああいうこと、言ってやがるんだからなぁ…。」

生活相談員さん:「僕が、お入れしたんですよ。お父様、コーヒーがお好きだとおっしゃるものですから。」

ヤッチ:「また、砂糖がイッパイ入ってるんだろ?」

アルツ君:「それほどでもないよ、普通だよ、普通…。ねっ?」

アルツ君は前に腰かけている入所者さんに同意を求めています。

ヤッチはアルツ君が入所者さんと歓談している隙を見て、生活相談員さんを廊下の隅に呼び出します。

ヤッチ:「姉から聞いたんですけど。また、夜中にそちらに面倒をお掛けしちゃってるみたいですけど?」

生活相談員さん:「いえいえ。夜中、時折ですよ。昼間はご機嫌も良いようですし、今日もご覧のとおり、なごやかですよ。」

ヤッチ:「暑い時期が続いて、やっと涼しくなったと思ったら、雨ばかりの天気だったでしょ!?外に散歩に連れ出す機会も少なくて、ストレスがたまってるんじゃないかと思うんですよ…。」

生活相談員さん:「それは、確かに有るかもしれませんね…。すいません、こちらもなかなか散歩にお連れすることができなくて…。」

ヤッチ:「いえいえ、それは仕方がないこととして…。で、どうだろう?今日は晴れているので、母の部屋に連れて行こうと考えてるんですけど…?毎回、同じ質問していると思うけど、○○さん(生活相談員さんの名前)はどう思います?」

生活相談員さん:「お父様の場合、御気分を害される時は、たいていお母様のことですから、僕自身はお母様のところにお連れするのは、悪いことではないと思っていますけど…。」

ヤッチ:「そうおっしゃっていだけるなら、母の部屋にこれから連れて行こうかな?」

生活相談員さん:「了解です。ご準備を手伝いましょうか?」

ヤッチ:「リハパンとパッドの予備を持って行くだけなので、それには及びません。」

生活相談員さん:「わかりました。何か必要なものが有れば、声を掛けて下さい。」

ヤッチ:「ありがとうございます。夕飯時までにはこちらに戻ってきます。」

キノコさんも時間が有れば、ここ特養に面会に来ているのですが、アルツ君はキノコさんが面会に来たことをまったく覚えていません。

ヤッチの面会時には、アルツ君に必ずと言ってよいほど、『ばあさんはどうした?』、『ばあさんはどこにいる?』、『ばあさんはどこに住んでいる?』ということを訊かれます。

そんなアルツ君をキノコさんの部屋に連れて来て良いものか、いつも迷います。

外泊でもさせてあげられれば、いくらか違うと思うのですが、なかなかそういうわけにもいきません。

ヤッチは再び、歓談中のアルツ君のとなりに腰かけます。

ヤッチ:「これから、ばあさんのところに行こうと思うんだけど、どうする?」

アルツ君:「ばあさんってだれよ?」

ヤッチ:「ばあさんって、旦那さんの奥さんだよ。変な話だな、俺は旦那さんがここでばあさんを捜しまわってるって聞いたのに。」

アルツ君:「へえ、俺にはそんな人いたのか?」

ヤッチ:「じゃあ、ここに居るのは誰よ?」

アルツ君:「お前はどっかで拾って来たんだろ!?」

ヤッチ:「拾ってきてもいいけど、拾ってきたのは誰なんだろうな?」

アルツ君:「おれじゃあ、ないなぁ…。」

ヤッチ:「じゃあ、誰よ?」

アルツ君:「知らん!」

ヤッチ:「まあ、いいや。コーヒーを飲み終えたら、お宅の奥さんのところへ行こうよ?」

アルツ君:「奥さん?そんな人いたの?へえ…。」

ヤッチ:「奥さん、もしくは奥方、もしくはお嫁さん、もしくは女房、もしくは妻。名前はキ・ノ・コ…。」

アルツ君:「ああ、わかった、わかった。クワガタだか、ドロボウのところへ俺が行くんだろ?どうやって行くんだ?」

ヤッチ:「ここから、車椅子に乗って…。すこし暑いけど、干からびないように休み休みな…。」

アルツ君:「かっー!たまに、しょうゆを掛けて下さいよ?」

ヤッチ:「愛しの愛しの奥方に会いに行くのに、運転手付きだぞ!?」

アルツ君:「へえ…。それで…?キスぐらいさせてくれるのかね?」

ヤッチ:「あのさぁ…、なんで、息子の前でそういうことを平気で言うかな…。どんどんエロさがパワーアップしてないか?エロエロじじいじゃんかよ!」

アルツ君:「じじいは余計ってもんだろう…???」

ヤッチ:「エロは否定しないわけね?」

アルツ君:「うるさいっ!」

ヤッチ:「まあ、早いとこ出かけようぜ。」

アルツ君:「ああ、わかった。ばあさんの家ってどこだっけ?」

ヤッチ:「○○川のそば。前に行った時、イチョウの木が有ったろ?」

アルツ君:「そうだったっけか…。」

ヤッチ:「まあ、行けば思い出すさ。」

アルツ君:「ダメだな、すーぐ忘れちゃうんだよな…。」

ヤッチ:「忘れたら、思い出せばいい話だべ。さあ、行くべ!」

お決まりの会話を繰り返し、施設をスタートです。

道路に出ると、アルツ君、すれ違う人たちをじっと見つめながら、つぶやきます。

アルツ君:「あの人も覚えてないなぁ…。あっちで自転車をこいでる人も覚えてない…。」

ヤッチ:「当たり前だよ。俺だって、見た事のない初対面の人たちばかりだもの、覚えてるわけないよ。

アルツ君:「そうかぁ…。すーぐ忘れちゃうんだよな…。」

ヤッチ:「みんながみんな、顔見知りだったら、大変だぞ。」

アルツ君:「そうかなぁ…。」

ヤッチ:「そうだよ。すれ違う人たちがみんな覚えている人だったら、挨拶するのに大変で、ばあさんの家までたどり着けないぞ?」

アルツ君:「あっ!でもあの木は覚えてるぞ。ずいぶん太くなりやがったなぁ…。」

ヤッチ:「どの辺を歩いてるのかわかるのか?」

アルツ君:「いや、わからない。でもあの木は覚えてる。」

ヤッチ;「へえー、たいしたもんだな。俺は全く覚えてないぞ。」

アルツ君:「確か、あの木は前に俺が切ってやったんだよ。また切ってやらないとボサボサだ。」

アルツ君が本当に覚えているかどうかは疑問でしたが、アルツ君、人物よりも樹木や庭に、反応するようです。

ヤッチ:「じゃあ、また旦那さんがハシゴに登って切ってやれば?」

アルツ君:「やだ!」

ヤッチ:「なんで?」

アルツ君:「なんでも!」

ヤッチ:「まるで、こどもの会話だな。」

行き道はずっとこんな会話が続きます。

キノコさんのアパートが近づいてきます。

ヤッチ:「この辺は、なんとなく覚えてるべ?」

アルツ君:「なんとなく、覚えてないな…。」

ヤッチ:「なんだ、それ!そこを曲がったところに藤棚が有るよ。藤棚は?」

アルツ君:「覚えているような、覚えていないような…。」

ヤッチ:「奥さんの部屋のそばまで行けば、思い出すよ。」

ヤッチはキノコさんのアパートの入り口付近でアルツ君の車椅子を止めます。

ちなみにヤッチの部屋の真ん前なんですけどね。

ヤッチ:「あそこに押し車(シルバーカー)が見えるだろ?あそこが旦那さんの奥さんの部屋だよ。」

アルツ君:「かー!あそこが?あんなところに居るのか?」

ヤッチ:「居るったって、押し車の中にいるわけじゃないからな!」

アルツ君:「お前ね、なんぼなんでも、俺だってそれくらいのことわかるさよ~。確かどっかに、金にならない貧相なトマトを植えてるところが有ったはずだろ?」

ヤッチ:「うるせーよ!それは俺の部屋のことだろ?それ、去年とか一昨年の話だろ?今年は小玉スイカを作って、とっくに食べ終わっちゃったよ。しかし、まあ、変な記憶だけは残ってるんだなぁ…。」

アルツ君:「あんなブザマなトマトを忘れろったって、忘れるわけがない!」

ヤッチ:「失礼、極まりないな!?旦那さんに覚えていてもらおうと思って、ブザマなものをあえて作ったんだよ!」

アルツ君:「ものは言いようですね~。」

キノコさんの部屋の前まで来ました。

キノコさんにはアルツ君を連れて行くことを事前に連絡してあります。

ヤッチはキノコさんの部屋の呼び鈴を押します。

キノコさんが部屋のドアを開けます。

アルツ君は外で車椅子に腰かけたままです。

キノコさん:「いらっしゃいませ。待ってましたよ。」

アルツ君、キョトン顔です。

キノコさん:「何?どうしたの?ここが私のうちですよ。前にも来た事あるでしょ?」

アルツ君:「来たことあるか、どうかは知らんけど、お前そんなだったっけ?」

キノコさん:「『そんなだった』とは?」

アルツ君:「お前、そんな、シワクチャだったっけ?」

キノコさん:「まあ、失礼ね。つい、この間もあっち(施設)で会ったじゃない。いいから、中に入りなさい。」

アルツ君:「入ってもいいのか?」

キノコさん:「なに、遠慮しているのよ。あんたの家みたいなものじゃない。」

アルツ君:「だれか、変な人(男性)が中にいたりしないよな?」

キノコさん:「そんな人がいるわけないじゃない。いいから、いいから入りなさい。」

ヤッチはアルツ君がキノコさんの部屋の中に入るのを手伝います。

部屋に入ると、アルツ君は用意してあった椅子に腰かけ、キノコさんもベッドに腰かけます。

アルツ君:「かー!お前、そんなだったっけ?いつからそんなになったんだ?」

キノコさん:「だって、あんたと同じじゃない。生まれ年が一緒で、もうすぐ誕生日が来たら、あんたと同じ歳よ。」

アルツ君:「うっそー!もっと若かったんじゃなかったっけ?」

キノコさん:「あんたと同じ。昭和三年。」

アルツ君:「じゃあ、まだ若いや。」

キノコさん:「なんで?自分で自分の歳がいくつだと思ってるの?」

アルツ君:「ははーん…。」

アルツ君、自分の生まれ年はすぐ言えますが、年齢は思い出せないので、笑ってごまかします。

キノコさん:「じゃあ、自分がいくつくらいだと思ってるの?」

アルツ君:「そうだな…。30代か40代くらいだろ!?」

キノコさん:「な~んで~?あんた、ホントにわからないの?86よ?」

アルツ君:「うっそっー!!そんなになるわけないだろっ?」

キノコさん:「ウソなんかじゃありませんよ。だから、私だって、こんなにシワクチャなんだから…。」

アルツ君:「かっー!!ホント?」

キノコさん:「そこにいる息子が50なのに、なんであんたの方が若いわけ?」

アルツ君:「あれは、どっかで拾ってきたからだろ?」

キノコさん:「違います。あんたも自分の顔をよく見てご覧なさい?」

アルツ君:「見なくたって自分の顔くらいわかるさよ~。」

キノコさん:「ウソウソ。そこに手鏡が有るから自分の顔を見てごらんなさい?」

そう言って、キノコさん、テーブルの上に有った手鏡をアルツ君に手渡します。

以前にも似たようなことがありましたが、今回はアルツ君、手鏡に映った自分を自分だと認識できるようです。

関連記事:鏡の中の職人 [ アルツ君は職人 ]

その証拠に、顔がニヤついています。

キノコさん:「どう?わかったでしょ?」

アルツ君:「ふふ…。」

アルツ君、ニヤついた顔のまま、手鏡をテーブルに置いてしまい、ヤッチの買ってきた缶コーヒーをすすり始めます。

キノコさん:「鏡にあんたの顔、映ってたでしょ?」

アルツ君「ふふ、どうかな…。」

キノコさん:「髪の毛は?黒かった?」

アルツ君:「ふふ…。」

キノコさん:「どっち?」

アルツ君:「ふふ…。」

キノコさん:「ねえ、どっちなの?」

アルツ君:「白いよっ!!」

アルツ君が大きな声で返答します。

ただ、大きな声といっても、怒っているという感じではなく、顔はニヤけたままです。

さすがに相手も手鏡なので、映った自分の顔を受け入れざるをえません。

その時々で、変化しますが、少なくとも今回、キノコさんの部屋に来る前までのアルツ君の頭の中は、キノコさんも若く、自分も若い頃のままだったようです。

そして、キノコさんの部屋に来て、現実を突きつけられ、笑うしかないといったところでしょうか…。

まあ、落胆している様子でもなく、なごやかな雰囲気だったので、ヤッチは席を外すことにします。

ヤッチ:「ちょっと、俺、用事が有るから、出て来るわ。旦那さん、それまで、奥さんのところでおしゃべりしてて?」

アルツ君:「あいよ。」

施設に戻らなくてはならない都合上、のんびりさせてあげられないのが可愛そうですが、1時間ちょっとしたところで、ヤッチはキノコさんの部屋へ、アルツ君を迎えに行きます。

アルツ君、すでに帽子を被って帰り支度をしています。

ヤッチ:「あれ?もう帰る準備はじめてたのか?」

さっきまでの和やかムードとは違い、ちょっとアルツ君、暗めの表情です。

ヤッチはキノコさんの方に視線を移します。

キノコさんが『いいの、いいの!』と目くばせをします。

アルツ君:「お前、知ってたか?」

キノコさんはヤッチに、『聞き流してちょうだい。』というアイコンタクトです。

ヤッチ「『知ってたか?』って、何を?」

アルツ君:「ばあさんのことだよ…。」

ヤッチ:「なんのことだろう…????」

アルツ君:「ばあさんなぁ…、もう…、子どもは産めないんだってよ…。」

アルツ君

さすがです…。

(; ̄ー ̄川 アセアセ


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