site_title進行性核上性麻痺の疑いのある元植木職人のアルツ君(父)、アルツ君の愛妻キノコさん(母)、そしてアルツ君の息子ヤッチの日々の生活を紹介しています。
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アルツ君の脳梗塞 ~ 救急救命室編

2014/11/30 (日)  カテゴリー: 脳梗塞
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こんばんは。

アルツ君の息子ヤッチです。

申し訳ありません。

なかなか落ち着いて記事を書く時間がなくて、更新が遅くなってしまいました。

前回の記事で約束させていただいた通り、アルツ君の脳梗塞について、すこし細かく記事を書きたいと思います。

長い文章になりますので、寝落ちしないようご注意下さい。

また前回の記事と重複する箇所も出てきますので、お許しのほどを…。

まず、ご心配下さった方のために結論から先に…。

アルツ君、生きています。

右手は麻痺しているようで、丸まったまま動きません。

アルツ君、右利きなので、あとあとが気になります。

しゃべり方も舌が思い通りに動かないのか、発声が変で、聞き取れない場面がたくさんあります。

覚醒レベルも良いとはいえず、いびきをかいて寝ていることが多い状態が続いています。

記事を書くタイミングがリアルタイムではなくなってしまいましたが、出来るだけ現実に追いつくよう記事を書き足していきたいと思います。

まずは、施設で倒れてから、搬送されたときまでを書きたいと思います。

11月25日火曜日のお昼過ぎにアルツ君は入所している特別養護老人ホームの居室で倒れ、救急搬送されたのですが、この日はヤッチもアルツ君のところへ面会に行こうと思っている日でした。

冷たい雨がシトシトと降っていた日で、ヤッチはレインシューズを履こうか、スニーカーを履こうか悩み、結局、レインシューズを履き、部屋を出ようとした時でした。

時刻にして、ちょうど午後2時頃、会社にいる姉から電話が入ります。

姉:「今、施設から電話があって、パパが部屋で倒れちゃったんだって。施設の人が『右腕がダラッとしているし、呂律も回っていないみたいだから、すぐに救急搬送します。』っていうことだから!」

ヤッチ:「あちゃー…。俺も今、そっち(特別養護老人ホーム)に向かおうと思っていたところだけど、今日は雨模様だから、自転車で行けないよ…。」

姉:「うん。『救急車で病院に向かうのに家族の付き添いを待っていたら、パパの処置が遅れちゃうから、とにかく早く病院に連れて行って下さい!』って施設の人に言っておいたから。」

ヤッチ:「了解。とりあえず、施設に行ってみるよ。なんか有ったら電話するし、情報が入ったら連絡ちょうだい?」

姉:「うん。わかった!よろしく頼むね!」

ヤッチは合羽を着て自転車で施設に向かうか、少し迷いましたが、その暇が有ったら、走った方がマシだと思い、施設まで傘をさして走ります。

特別養護老人ホームまでは、普通に歩いても15分~20分はかかるので、走ったところで、アルツ君は救急搬送された後であろうことはわかっていたのですが、誰ともわからぬ第三者に自分のいいところを見せつけます。(今なお太ももが筋肉痛…。)

施設に到着すると、一階のエントランスの受付の女性職員さんは慌ただしく動いている様子…。

ヤッチ:「お世話になっています。もう、(救急車は)出ちゃいました?」

女性職員さん:「いえ。それがまだなんですよ…。」

ちょうど救急車のサイレンの音が聴こえてきます。

女性職員さん:「あっ!たぶんあれだ!裏(施設の裏)に行っちゃったのかしら?」

そこへ救急車がエントランスに横付けされます。

ヤッチ:「じゃあ、俺、救急隊の人達と三階に上がっちゃうね?」

女性職員さん:「あ、はい。」

ヤッチは救急救命士さん三人を案内し、ストレッチャーと一緒にエレベーターに乗り込みます。

3階に着き、アルツ君の居室まで行くと、居室の中はたくさんの人でごった返しています。

ヤッチは人の間をかいくぐり、ベッドに仰向けで寝かせられているアルツ君の足元へ到達。

ヤッチの目の前で、アルツ君、右ひざを立てる動作をします。

どうやら、足(下肢~太ももから足先)には異常が無いようです。

アルツ君の足元からでしたが、顔を覗き込みます。

かつてヤッチがそうであった左右非対称の顔にもなっていません。

ヤッチはアルツ君の右手の甲の辺りを指先で軽く叩きます。

ヤッチ:「旦那さん、これ感じるか?」

アルツ君:「…。」

反応がありません。

返事をしたのかもしれませんが、大勢の人の声が飛び交っているので、ヤッチには聞こえなかったのかも…。

一旦ヤッチは居室の外へ出ます。

廊下にも大勢のギャラリーが…。

そのギャラリーの一人からヤッチは声を掛けられます。

施設の生活相談員さんの上司にあたる方です。

職員さん:「どうも、こんにちは。」

ヤッチ:「あ、どうも。いつもお世話になっています。どんな状況で倒れたんですか?」

職員さん:「実は昼食を摂られて、少し経ってから、お部屋の方で興奮なさっているご様子でして…。」

ヤッチ:「また、暴れていたんですか?」

職員さん:「はい。かなりの興奮がありまして…。」

ヤッチ:「で?」

職員さん:「お父様の居室をうちのものが訪ねた時は、ベッドの横で倒れていらっしゃって…。」

ヤッチ:「床の上っていうこと?」

職員さん:「はい。で、呂律も回っていないし、右腕もダランとしていらっしゃったので、すぐにうちの看護師を呼んで診させたら、『すぐに救急搬送したほうがいい。』ということになりまして…。今はベッドの上で寝ていただいていますが…。」

ヤッチ:「なるほど…。」

アルツ君が興奮している最中に意識を失って倒れたのか、しばらく経ってなのか、定かでありません。

しばらく経ってから倒れたとすれば、その空白の時間がどのくらいの長さなのか?

空白の時間中、職員の見守りは有ったのか?

この辺はまだ詳細を伺っていないのでわかりません。

ヤッチと職員さんが居室の外の廊下で話をしていると、居室の中で救急救命士さんがアルツ君の担当の介護職員さんに質問をしているのが聴こえてきます。

救急救命士さん:「○○さん(アルツ君のこと)の要介護度はいくつなんですか?」

介護職員さん:「たしか、要介護度5です。」

廊下にいたヤッチが割って入ります。

ヤッチ:「要介護3じゃないの?5だったら、『寝たきり』じゃない?」

介護職員さん:「すいません…。3です。」

介護職員さんが訂正します。

おいおい、普段自分が世話をしている入所者の要介護度くらいは把握しておこうよ…。

(-_-;)

ヤッチは再び居室の外に出て、救急搬送の準備を待ちます。

アルツ君がストレッチャーに載せられて居室から出てきます。

ふたたび、エレベーターを使ってエントランスへと…。

救急車にはヤッチと施設の主任看護師さんが乗り込みます。

もちろん、アルツ君も…。

ヤッチは半袖姿の主任看護師さんに声を掛けます。

ヤッチ:「半袖じゃ、寒いんじゃないですか?上着を持って来た方がいいんじゃないですか?」

主任看護師さん:「いえいえ、大丈夫です。」

救急車の後ろのハッチが閉まります。

すぐに発車すると思いきや、なかなか発車しません。

搬送先がなかなか決まらないようです。

救急救命士さん:「どこか、掛かり付けの病院というのはありますか?」

ヤッチ:「ここには嘱託医がいらっしゃるからなぁ…。」

救急救命士さん:「外部で受診されたことは?」

ヤッチ:「それだったら、以前、意識を失って倒れて、やはり救急搬送されたJ病院が有るけど?そこなら診察券も有るし、認知症のことでも受診したことが有りますよ。」

J病院はアルツ君が以前大晦日にキノコさんの部屋で倒れ救急搬送された大学病院です。

また認知症の診察としては直近で受診した病院で、非薬物療法を進めてくれた病院。

付け足しですが、ヤッチが顔面神経麻痺で入院した病院です。

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アルツ君が誤嚥性肺炎で入院したOG病院という選択肢もありますが、手に負えぬという理由で追い出された経緯もあるので、あえて候補に上げませんでした。

第一、OG病院は脳神経外科や脳神経内科は専門ではありません。

救急救命士さん:「では、J病院に問い合わせさせていただきます。」

ヤッチ:「よろしくお願いします。」

しばらくたって、救急救命士さんが再びヤッチに声を掛けます。

救急救命士さん:「今、J病院に問い合わせたんですが…。たぶん、ご入院になると思うのですがベッドに空きが無いらしいんですよ。」

ヤッチ:「そうでしたか…。」

救急救命士さん:「ただ、診察や処置だけは行えるので、その後はベッドの空きのある病院に転院で構わなければ、お引き受けできると言ってきているのですが…?」

ヤッチ:「転院する場合、救急車で運んでくれるんでしょ?」

救急救命士さん:「それはもちろん。」

ヤッチ:「失礼しました。選り好みしている場合じゃないんだから、J病院にお願いします!」

救急救命士さん:「わかりました。確認が取れ次第、J病院に向かわせていただきます。」

J病院と確認が取れ、アルツ君はJ病院に搬送となりました。

搬送中の車内で、救急救命士さんからいろいろと質問されました。

日頃の生活や服用薬、倒れた時の状況等々、ヤッチは現場に居合わせていなかったので、この質問の多くは主任看護師さんが答えて下さいました。

ちょっと気になったのは、アルツ君が倒れていた時の状況です。

ヤッチは職員さんから倒れる前に興奮があったと聞いていましたが、この看護師さんは、違うニュアンスで答えていました。

この主任看護師さんが第一発見者なのかわかりませんが、施設の誰かがアルツ君の居室を訪ねると、床で倒れているアルツ君の姿が有ったとだけしかお答えにならず、その前に興奮があった事をおっしゃいませんでした。

まあ、同じことを搬送先の病院でも訊かれると思ったので、ヤッチは黙っていました。

J病院に到着です。

アルツ君は救急室に運ばれ、主任看護師さんとヤッチは救急室の外の待合室で待つように言われます。

今回、問診票を書かされる場面はありませんでした。

おそらく、救急車の中で救急救命士さんが色々と、我々から聞き取り調査を行っているので、それで間に合ったのだと思います。

日本の医療もすばらしい連携プレイですね。

ヤッチは待合室で待っている間、屋外に出て姉に電話を掛けます。

ヤッチ:「今大丈夫?」

姉:「うん。大丈夫だよ。」

ヤッチ:「一応搬送先はJ病院になったけど、どうもベッドに空きが無いらしくて、J病院では入院させてもらえないみたいなんだ。」

姉:「そうすると?」

ヤッチ:「ベッドの空きのある病院に転院になるみたい。」

姉:「J病院で探してくれるのかね?」

ヤッチ:「そりゃあ面倒みてくれるでしょ。『帰ってくれ。』って言われても帰れる状態じゃないんだから。」

姉:「で、パパの方はどうなの?」

ヤッチ:「救急車の中で、朦朧としてたけど、意識が有るのか無いのかはっきりしないな…。宇宙語をしゃべる場面もあったし…。」

姉:「呂律が回ってない感じ?」

ヤッチ:「うん…、そうだな…。うがいしているみたいなうめき声だった…。」

姉:「そっか…。右腕は?」

ヤッチ:「うん、指先は動いてなかったな…。救命士さんが『右の上肢(肩から手の先)は完全麻痺かな~。』って言ってた。」

姉:「そうかぁ…。」

ヤッチ:「でも、救命士さんの声が聴こえたのかどうかわからないけど、その声が聴こえた瞬間、目を覚まして、左手で自分の右腕を引っ張り上げるような仕草を見せたんだよ。」

姉:「へえ…。」

ヤッチ:「俺が『気合い入れてるのか?』って言ったら誰も反応してくれなかった…。」

姉:「ばーか。こんな時に当たり前だろ!」

ヤッチ:「でも、俺には若干、右肩に力が入ってるように見えたんだけどな…。」

姉:「麻痺していないっていうこと?」

ヤッチ:「うん、上腕部分は神経が繋がってるような気がしたけどな…。」

姉:「で、先生は何て言ってるの?」

ヤッチ:「検査中だからまだ話ができないよ。それであなたに電話したっていうわけ。」

姉:「じゃあ、また何かわかったら、連絡ちょうだい?私もなるべく早くそっちに行くし…。」

ヤッチ:「ただ、また違う病院になっちゃうかもしれないよ。」

姉:「そん時はそん時でまた連絡ちょうだいよ?」

ヤッチ:「了解。」

姉との電話を切ってしばらくして、主任看護師さんとヤッチはJ病院の救急救命の先生に呼ばれます。

小さな診察室のようなところです。

救急救命の先生:「今、お父様の脳のCTを撮らせていただいたのですけど、出血はしていないようなんですよね…。」

ヤッチ:「と、おっしゃいますと?」

救急救命の先生:「あくまでも可能性ということになりますけど、呂律が回らなかったり、腕がプランプランするということからも脳梗塞ではないかと…。」

ヤッチ:「は…。」

救急救命の先生:「まだ詳しく調べてみないとわからないですけど、症候性てんかん(脳に何らかの障害や傷があることによって起こるてんかん)の可能性も有ります。」

ヤッチ:「症候性てんかん!?肩を脱臼している可能性は?」

救急救命の先生:「それはないです!」

先生、即答です。

救急救命の先生:「で、CTは出血を判別するのにはきわめてすぐれた機械なんですけど、梗塞などを調べるのには弱いんですね。」

ヤッチ:「そうなんですかぁ…。」

救急救命の先生:「じゃあ、何が強いかっていうと、MRという機械です。正確にはMRIとかMRAというものです。CTは放射線で画像を撮るものですが、MRは強い磁気を発生させて画像を撮影するものです。脳梗塞などを調べる時は、CTよりもMRの方が判別しやすいんですよ。」

ここの病院の先生の特徴なのか、知識ひけらかしトークは、時々イラッとします。

ヤッチ:「で?」

救急救命の先生:「これから、MRIとMRAの検査をしたいと思います。特に身体の中に金属とか入っていませんよね?」

ヤッチ:「はい。ただ昔はハガネのようなカラダと言われていました。」

救急救命の先生:「…。わかりました。義歯は外されていますもんね?」

ヤッチ:「はい。」

足の小指にネイルをしているかもしれないという冗談を思いつきましたが、やめました。

もうこの時で、この病院に搬送されてから1時間以上は経過しています。

待つこと、さらに1時間以上です。

ヤッチは病院の診察で待たされるのに慣れているほうなので、この時はまだ、さほど苦にならなかったのですが、主任看護師さんがしびれを切らします。

救急の受付の人に何か聞きに行ったようです。

少し暗い面持ちで帰ってきました。

主任看護師さん:「『ただ今検査中ですので、もうしばらくお待ちください』ですって…。」

ヤッチ:「旦那さんの前に、頭のデカい人がMRIを受けているんじゃないですかね?」

主任看護師さん:「…。」

どのくらいの時間が経過したか覚えていませんが、もう外は暗くなっていたように思います。

ふたたび救急救命の先生に呼ばれます。

救急救命の先生は主任看護師さんとヤッチのほうにパソコンのモニタを向け、MRIの画像を見せます。

救急救命の先生:「これがお父様の脳の画像ですが、ご覧になられている画像の向かって右に白い部分が有るのがお分かりになりますか?」

ヤッチ:「はい。」

救急救命の先生:「この画像は首の方からカメラが覗き込んでいるとお考えください。つまり、白い部分はお父様の左側の脳に有るということになります。ここが梗塞を起こしている箇所です。大脳に梗塞を起こしているということが言えると思います。」

ヤッチ:「側頭葉だとか、前頭葉だとか脳にもいろいろ有るじゃないですか?具体的にはどの辺になりますか?」

救急救命の先生:「そうですね…。確かにそういう言葉がありますが、便宜上分けているだけで、脳に区切り線が引かれているわけではありません。まあ、あえて言うならですよ、側頭葉で、側頭葉でもやや後方になるのかなぁ…。」

ヤッチ:「そうですかぁ…。」

救急救命の先生:「それと、もう一つ。画面の右側の下のほうが、他の部分に比べて黒くなっているのがわかります?全体的に他の部分は灰色に近い黒ですが、この部分だけ黒いのが強くなっていると思うんですけど…??」

ヤッチ:「はいはい、えぐれたように黒くなっているところですよね?」

救急救命の先生:「そうです。そうです。そこが前にも同程度の梗塞をやってる跡です。」

ヤッチ:「えっー!ホントですか?」

救急救命の先生:「黒く写るのは脳の細胞が死んでしまっている箇所です。ご存知のように脳の細胞は一度死んでしまうと、もう元には戻らないので、そこが過去に梗塞を起こした箇所だと推測できるんですよ。」

今回、アルツ君が脳梗塞を起こしたのは、ヤッチにとってショッキングな出来事でしたが、前にも脳梗塞を起こしていると聞き、ダブルパンチのショックです。

いつ?

このブログを最初のほうからご覧いただいている方も思い当たるような箇所が結構あるのではないでしょうか。

迷走神経反射をはじめ、幾度となく意識消失してますからねぇ…。

救急救命の先生:「で、今度はMRAの画像なんですけど、こちらがお父様の脳の血管を撮影したものです。太い血管から分岐して細い血管が走っているのがお分かりになりますか?」

ヤッチ:「朝鮮人参みたいですね。」

救急救命の先生:「普通、健康な人の場合、ほとんど左右対称に血管が走っているのですが、ご覧になってお分かりのとおり、向かって右側の細い血管の影が段々薄くなっています。これも脳の画像ですから、右と左を逆に考えて下さい。」

ヤッチ:「血が通っていないということですか?」

救急救命の先生:「そういうことです。」

ヤッチ:「そうすると、先ほど先生は症候性てんかんの可能性も有るとおっしゃっていましたけど、画像から判断して、症候性てんかんの可能性は無いと考えてもよいわけですか?」

救急救命の先生:「はい。まず、脳梗塞と考えて良いでしょう。というより、症候性てんかんの発作と考えるなら、脳梗塞に起因していると考えた方がわかりやすいかな!?」

ヤッチ:「なるほど…。」

救急救命の先生:「それでなんですが…。」

いよいよ先生が本題を切り出します。

救急救命の先生:「施設で倒れられていたということなんですが…。この倒れられた時刻を13時半と仮定すると、まだ梗塞から4時間半を経過していないので、t-PAが使えるんですが…???」

ヤッチ:「なんですか?それ?」

救急救命の先生:「t-PA治療、血栓溶解療法と言います。」

ヤッチ:「なんだか、佐々木小次郎があみ出した技みたいだなぁ…。その何たらというのは、何をどうする話なんですか?」

救急救命の先生:「急性期(症状や徴候の発現が急激で、生命の危機状態にあること)の脳梗塞の場合、脳の血管内の血栓を溶かしてやって、血流を戻してあげれば、症状は回復します。血流を戻すことを血流再開というのですけど、血流再開が早ければ早いほど症状はもちろんですけど、後遺症も少なくなります。」

ヤッチ:「薬か何かを使うっていうことですか?」

救急救命の先生:「そうです。具体的にはアルテプラーゼという薬を使います。グルトバという言い方もあります。」

ヤッチ:「なんだか、ますます言いにくいし、難しい名前ですね。で、その過激派の薬は点滴か何かで入れていくんですか?」

救急救命の先生:「おっしゃられる通りです。ただ、このt-PAをやれるのが、先ほど申し上げたように4時半以内と言われています。もう少しで4時半経ってしまうので、早目にやるかやらないを決断しないとこの方法は使えなくなります。」

ヤッチ:「私に早く決めろということ?」

救急救命の先生:「そこでなんですが…。」

ヤッチ:「はい?」

救急救命の先生:「アルテプラーゼというのは強力に血栓を溶かしてくれる薬です。当然血流再開は早くなりますが、反面、強いお薬ですから、出血を引き起こしやすいというリスクを持ちます。ベネフィットとリスクの両方を併せ持つ薬なんですね…。」

久しぶりに聞きました。

『ベネフィット(恩恵)』という言葉…。

救急救命の先生は続けます。

救急救命の先生:「お父様の場合、86歳という、大変失礼ですがご高齢ということもあって、脳の血管も非常にもろくなっています。MRAの画像を診させていただいてもわかる箇所があります。t-PAをやれば、症状は劇的に改善する可能性も有りますが、それ以上は申し上げなくてもお分かりになりますよね?」

ヤッチ:「鼻血ブー?」

救急救命の先生がうなずきます。

ヤッチ:「で、その劇的に改善する方法以外にどんな治療法が有るのでしょうか?」

救急救命の先生:「t-PAに寄らない保存的治療になってくると思います。」

ヤッチ、この時、保存的治療と言われてもチンプンカンプン…。

後でわかったことですが、保存的治療というのは、手術を行わない治療法のことで、この場合はt-PA以外の薬を使って治していく方法ということらしいです。

ならば、『手術をしないで薬で治します。』とおっしゃってくれれば、親切なのに…。

ヤッチ:「先生ご自身は、そのPTAだかTPPだかをやった方がよいとお考えですか?」

救急救命の先生:「t-PAのことですね?繰り返しになりますが、利益も大きいかわりにリスクも大きいので、年齢的なことを加味すると難しい判断になるので、出来ればご家族様に御意向を伺いたいと考えています。」

ヤッチ:「リスクの少ない治療法を選んだ場合、後々父にどんな影響が出て来るのでしょうか?」

救急救命の先生:「リスクの少ない治療法というより、一般的治療、保存的治療のことをおっしゃられているのですよね?」

ヤッチ:「そうです。」

救急救命の先生:「ご本人様次第ではありますが、脳の部位からすると、お身体の右側に麻痺が残る可能性があります。ただ、右足は動かしていらっしゃったので、今現在動かない右腕だけともいえます。」

ヤッチ:「ほかには?」

救急救命の先生:「そうだな…。片側の視野が狭くなるとか、失語かな…。失語といっても、言葉が出なくなるのではなくて、部位的には、こっちが話している事が理解できない失語かな…。」

ヤッチ:「コミュニケーションがとれないのはつらいな…。」

救急救命の先生:「誤解しないでくださいね。これは最悪の場合ですから。」

ヤッチ:「だったら、早いとこ、TPP交渉(t-PA)をするのか決めないといけないですよね?難しいなぁ…。」

救急救命の先生:「一応、目安は4時間半ですからね…。もう時間的にきわどくなっていますね…。」

ヤッチ:「自分の脳ミソならサクッとやっちゃってくださいって言えるんだけど、親父とはいえ、自分の脳ミソじゃないからなぁ…。俺が勝手に決めて、後で家族に文句を言われるのも困りものだから、ちょっとだけお時間いただいて、姉に電話をしてきてもいいですか?そのくらいの時間の余裕はありますよね?」

救急救命の先生:「はい、大丈夫です。では、結論が出ましたら、もう一度こちらにお声掛けください。」

ヤッチは姉に電話を掛け、いきさつを伝えます。

姉:「リスクを背負ってまで、そんなこと、しなくてもいいんじゃない~。パパが生きてさえいれば、私はそれで満足だよ…。」

ヤッチ:「了解。俺も同じ意見だ。先生に伝えてくるよ。」

姉:「入院先は?」

ヤッチ:「まだ、土俵にも上がってない。また電話するよ。」

ヤッチは電話を切り、家族の意見を伝えに行きます。

救急救命の先生:「了解しました。では保存的治療でスケジュールを組ませていただきます。」

ここからまた1時間近く待って、ようやく主任看護師さんとヤッチは救急室に入るように言われます。

ようやくアルツ君とご対面です。

足早に歩く看護師さんに案内され、救急室の奥の方のブースに通されます。

救急室の中は、ベッドがいくつかあり、入院病棟と同じように、カーテンで間仕切りされています。

救急救命の看護師さん:「こちらに、いらっしゃいます。」

ヤッチ:「ありがとうございます。」

この看護師さん、忙しいのか、かなり不愛想…。

不機嫌さが顔に出てしまっています。

カーテンをものすごい勢いでピッシャーっと閉めて出て行きます。

カーテンを閉める際、口を尖らせながら、こう言い残していったのをヤッチはハッキリ覚えています。

救急救命の看護師さん:「枕を投げつけられましたぁ…。」

ヤッチは閉められたカーテンに向かって…。

ヤッチ:「なんだ、こいつ!」

アルツ君、朦朧としていますが、意識は有るようです。

左腕には点滴の針が刺さっています。

時折、寝返りを打つ仕草も見せます。

ヤッチには何だかアルツ君、非常に疲れているように見えました。

病気と闘って疲れているのではなく、あの捨て台詞を残して出て行った看護師と一悶着あったような印象です。

また、暴れた?

脳梗塞を起こしているというのに只者ではありませんね~。

右腕は麻痺しているので、利き腕ではない左手で看護師さんに向かって枕を投げたことになるのでしょうか…。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

ヤッチ:「旦那さん、暴れたのか?」

問いかけしても反応はありますが、何を言っているのかわかりません。

またしばらくして、救急救命の先生が戻ってきます。

救急救命の先生:「お父様ですが、ご覧のようにこれ以上梗塞が進まないようなお薬を点滴でお身体に入れています。」

ヤッチ:「それはわかったんだけどさ~。お宅の看護師、大そう不機嫌みたいだね。あんな態度で仕事をされちゃ困るんだけど…。真っ赤な顔して、さっきカーテンを勢いよくしめて行ったぜ?ちゃんと怒っておいてよ。」

救急救命の先生:「それは、大変失礼しました。私のほうから、きつく言っておきます。」

ヤッチ:「ほんとに?聞き流しているだけじゃないだろうね?ちゃんと伝えてよ。接遇に問題ありだぜ。」

救急救命の先生:「いえいえ、このことはきちんと私のほうで教育しておきます。」

ヤッチ:「失礼しました。話を元に戻しましょう。」

救急救命の先生:「脳神経内科の先生が外来診察を終えて戻って参りますので、この医師から病状についての説明と今後についてお話があると思います。いましばらくお待ちください。」

ヤッチには『脳神経内科』と聞こえましたが、『脳神経外科』とおっしゃったかもしれません。

また待たされるのかなと思ったら、すぐに脳神経内科の先生がいらっしゃいます。

脳神経内科の先生:「お父様の脳梗塞なんですが…。」

ヤッチ:「ごめんなさい。本人、意識が戻っているようなので、聴こえない場所でお願いできますか?」

脳神経内科の先生:「大変失礼しました。ではあちらの診察室で。」

診察室に通され、説明を受けます。

内容は救急救命の先生からお伺いしたこととほとんどかわりありませんので、少し省略させていただきます。

どうしてヤッチがお会いする脳神経系のお医者さんはこうも早口でしゃべるんでしょうかね~。

あまりに早口過ぎて、半分も理解できません。

かろうじて理解できたのは、t-PA(血栓溶解療法)をやらなくて正解だったことを力説されていたことです。

あと、今回ではなく、過去の脳梗塞で視野が狭くなっていたのではないかということを強調されていました。

アルツ君が目の前にあるおかずばかりを食べてしまい、視野が狭くなっているのではないかということは以前から気にはしていましたが、脳梗塞が原因ではないかということには驚きです。

半側空間無視(はんそくくうかんむし)については、進行性核上性麻痺などの脳の変性症に起因するのではないかとばかり考えていましたが、確かにそう言われてしまえば、納得できないことではありません。

この先生によれば、アルツ君に認知症も有るので、あくまでも可能性だそうです。

ヤッチ:「ちょっと、別件ですけど、せっかくMRIを撮ったのでお伺いしたいんですけど…?」

脳神経内科の先生:「はい、なんでしょうか?」

ヤッチ:「父の脳はそうとう委縮が進んでいますか?」

脳神経内科の先生:「大変失礼ですが、かなり…。今回の脳梗塞でどの程度、脳の細胞がダメージを受けるかもちょっとわかりませんね…。」

ヤッチ:「やっぱり、そうかぁ…。」

脳神経内科の先生:「で、脳梗塞になると、わかりやすく言うと、1週間くらいは、脳にむくみのようなものが出ます。その間はぼんやりされる事が多くなるかもしれません。」

ヤッチ:「むくんだままにしておいたら、脳の委縮は無くなりませんかね?」

脳神経内科の先生:「無くなるかもしれないですけど、別の障害が出てきますよ。第一、むくみを取るようなお薬も使います。」

ヤッチ:「やっぱ、ダメかぁ…。」

脳神経内科の先生:「私の方から説明は以上になりますが、何か他にご質問はございますか?」

ヤッチ:「今回、左の脳梗塞ということで、父の右側の腕が麻痺しているようですが、足は動くようなんですけど、これはレアケースなんでしょうか?」

脳神経内科の先生:「これは、梗塞を起こした部位によるもので、部位によってお父様のように足だけは動く方もいらっしゃるし、逆に足が動かないで、手は動くという方もいらっしゃいます。」

ヤッチ:「そうなんですか…。梗塞を起こすと、反対側の全部が麻痺になるとばかり思っていました。」

脳神経内科の先生:「ただ、だいたいこの辺に損傷を受けると、この辺が麻痺するということはわかっても、ピンポイントでここならここが確実に麻痺するということは人によって違ってきます。」

ヤッチ:「わかりました。ありがとうございました。」

脳神経内科の先生:「これからのことなんですが、うちの病院ではベッドの空きが無いので、お父様にご入院していだいて治療することができません。こちらで受け入れ先を探して、診療情報を受け入れ先の病院に提供する形で話しを進めさせていただきますけど、それでよろしいでしょうか?画像等はCD-ROMに焼いて、ご入院される病院に渡します。」

ヤッチ:「よろしくお願いします。」

ここからがまた長い…。

アルツ君の入院を受け入れてくれる病院がありません。

担当して下さったのは、救急救命の先生です。

ヤッチの住む町には脳神経外科で入院設備がある病院が非常に少ないのです。

近隣の自治体まで、問い合わせをしてもらいましたが、空が無い病院が多いのが現状でした。

認知症患者を拒む病院も少なくないようです。

救急救命の先生:「今、受け入れ先を探しているんですか、まずこの近隣の病院はすべてベッドが埋まっている状態です。どこかお心あたりの病院はありますか?」

ヤッチ:「やっぱ、今居る病院かなぁ…???」

救急救命の先生:「申し上げているように、うちもいっぱいでして…。」

ヤッチ:「ここ(救急室)に泊めさてもらってもいいんだけど…。空きができたら、病棟に移してもらうとか…。」

救急救命の先生:「いや、それはちょっと…。」

ヤッチ:「思い切って、本院まで運んじゃう?」

救急救命の先生:「本院の方がもっと空きが無いです!」

ヤッチ:「俺にはコネが無いからな…。」

救急救命の先生:「個室で探していますが、個室でなくても構いませんか?」

ヤッチ:「4人部屋だとかだと、おそらく他の入院患者さんの迷惑になっちゃうから、『個室』と申し上げましたが、受け入れてくれるのなら、うちは個室でも大部屋でも構いませんよ。うちの親父、相当な『ガオ(いびきがうるさい人~ヤッチ用語)』だけど…。」

救急救命の先生:「あと、個室でも、差額ベッド代を上乗せしていただくとか…?」

ヤッチ:「一泊とか、一日の料金が何十万円とかは無理ですよ。」

救急救命の先生:「わかりました。もうしばらくお待ちください。」

ヤッチ:「こちらこそ、お手数かけて、申し訳ありません。」

救急救命の先生が電話をあちこちにかけている声が聴こえてきます。

救急救命の先生:「今、問い合わせたところ、4人部屋なんですが、空が有る病院が出てきました。」

ヤッチ:「場所はどこですか?」

救急救命の先生:「○○です。」

ヤッチ:「おっと、若者の住みたい街ナンバーワン。」

救急救命の先生:「はい。」

ヤッチ:「先方に、父が暴れて看護師さん泣かせだと伝えてあります?」

救急救命の先生:「はい、むしろそういう患者さんと合い部屋になるかもしれないと言ってきています。」

ヤッチ:「問題無いなら、お願いできますか?」

ようやく、アルツ君の再搬送先が決まりました。

最寄り駅から徒歩10分程度の70床くらいの病院です。

すぐに再搬送になると思いきや、なかなか救急車が来ません…。

30分以上は待ったのではないでしょうか…。

ようやくアルツ君を再搬送する救急車の到着です。

再搬送先が決まったので、特養の主任看護師さんにはお引き取りいただきました。

ヤッチ:「長いことかかってしまって申し訳ありませんでした。」

主任看護師さん:「いえいえ、仕方ないことですよ。また、何か必要なものがございましたら、相談員宛てにご連絡下さい。」

ヤッチ:「本当にありがとうございました。」

再搬送先の病院に向かうため、アルツ君が救急車に乗ったのは午後の6時半を回っていました。

まだまだ『入院』という大事なミッションが残っており、完結していません。

(; ̄ー ̄川 アセアセ




記事は搬送先の病院の様子だけで、入院を受け入れてくれた再搬送先の様子を書いていません。

これについては次回ということで…。

何をしているというわけはありませんが、アルツ君のところに面会に行き、帰ってくると姉やキノコさんとの連絡で一日がすぐに終わってしまいます。

いましばらく、お待ちください。

m(__)m

って、だれも待ってないかぁ…。


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2014/11/30 | コメント (6) | トラックバック (0) | ホーム | ▲ Page Top

アルツ君の脳梗塞 ~ 入院7日目から8日目

2014/12/06 (土)  カテゴリー: 脳梗塞
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こんばんは。

アルツ君の息子ヤッチです。

今回もアルツ君の様子を二日分まとめて書きたいと思います。

ヤッチ、実はアルツ君の様子をできるだけ細かく記録しておこうと、メモをとっているのですが、毎日面会に訪れていると、メモをとっていても、いつの出来事だったかわからくなってくる事がたくさん出てきます。

早くブログの記事を更新して、ブログにぶちまけてしまえば、ヤッチの頭の中もスッキリするだろうと、ちょっぴり梗塞(焦り)気味です。

・入院7日目 ~ 12月01日(月)

ヤッチが面会に訪れると、ベッドにアルツ君の姿はありません。

ベッドの上に『リハ中』と書かれた札が置いて有ります。

若い人ならすぐにピンとくるでしょうけれども、キノコさんのような年齢の人間が見たら、『リハ中って何中学校?』と質問されそうです。

ヤッチは、デイルームで時間を潰します。

ほとんど待つことも無く、アルツ君の車椅子が目の前に見える廊下を通り過ぎ、病室に入って行きました。

ヤッチも、後に続いて病室に入ります。

車椅子を押していたのは、PTさん(理学療法士)ではなく、OTさん(作業療法士)でした。

▽引用
理学療法士と作業療法士の違いとは?
 理学療法士と作業療法士の違いについてですが、理学療法士は、寝返る、起き上がる、立ちあがる及び歩くなど、日常生活で必要な基本動作ができるように身体の基本的な機能回復をサポートする動作の専門家です。歩行練習などの運動療法や、電気・温熱・光線などを使った物理療法を用いて、身体の機能や動作の回復をうながし、自立した日常生活が送れるようにバックアップします。

 作業療法士は、入浴や食事など日常生活の動作や、手工芸、園芸及びレクリエーションまであらゆる作業活動を通して、身体と心のリハビリテーションを行う専門家です。理学療法士と異なる点として、作業療法士はそううつ病及び摂食障害などの精神障害の患者さんも対象としており、幅広くリハビリテーションの医療現場で活躍しています。

 このようなことが、主な理学療法士と作業療法士の違いです。
△引用

かなり、かなりザックリですが、この病院ではアルツ君が立ったり座ったり、あるいは歩くといった基本的な動作をリハビリによって回復するのがPTさん(理学療法士)の仕事の範囲で、アルツ君が自分でお箸を持ってご飯を食べたり、自分でチンチンをつまむなど、細かな動作をできるまでサポートするのがOTさん(作業療法士)の仕事とヤッチは勝手に考えています。

ヤッチが病室に入ると、OTさんがアルツ君に話し掛けています。

OTさん:「お疲れになりましたか?」

アルツ君:「うぇえに…。」

OTさん:「…???」

ヤッチが割って入ります。

ヤッチ:「たぶん、『別に…。』って言ったのだと思いますよ。あっ、ごめん。俺、息子。」

OTさん:「あ、どうもはじめまして。」

ヤッチ:「たぶん、疲れていると思いますよ。この言葉が出るということは。」

アルツ君がヤッチの存在に気づき、『余計な口出ししやがって。』という顔をします。

OTさん:「あ、そうなんですか?じゃあ、○○さん(アルツ君のこと)、横になりましょうか?」

アルツ君:「うぇえに…。」

OTさんがアルツ君をベッドに寝かせます。

アルツ君、横になった途端、寝息をかいています。

ヤッチ:「リハはどんなことをやったんですか?」

OTさん:「今日は親指と人差し指で物をつかむのをちょっとだけ。」

ヤッチ:「どんな感じですか?」

OTさん:「親指が動くと、人差し指が止まるような感じで、両方の指を一緒に動かすというのはまだちょっと…。」

ヤッチ:「えっ。でも動くんだ?」

OTさん:「はい、ゆっくり時間をかければ、何とか…。」

ヤッチ:「なかなかうれしいことを言ってくれるじゃん。動くとは驚きだぁ~。つかめたの?」

OTさん:「つかんだ物を持ち上げるにはもう少し時間がかかるかと…。今日は触ってもらうといったリハになってしまいました。」

ヤッチ:「いやいや、それだけでも収穫ですよ。明日になれば、お箸と茶碗持てるかな?」

OTさん:「それはちょっと…。」

ヤッチ:「細かい作業じゃなくて、たとえば、『棒を握る』みたいな動作は?」

OTさん:「そうですね…、三回に一回はすっぽ抜けちゃうような感じですかね…。」

ヤッチ:「そいつはすごいや。あと残り三割だけじゃん。」

OTさん:「それはそうなんですけど…。」

ヤッチ:「失礼。別にプレッシャーをかけてるわけじゃないから、気長にやってもらって下さい。」

OTさんが、ちょっと若いお兄ちゃんだったので、ヤッチ、調子にのってしまいました。

m(__)m

この日のアルツ君はお疲れの様子だったので、ヤッチも早目に切り上げました。

夜に姉が面会に行ったそうですが、この日から、昼食だけではなく、夕食もスタートになったようです。

とろみの食事が出されたようですが、アルツ君、『まずい!』と言って、三種出されたうち、一種しか食べなかったそうです。

興奮と悲しみが交互し、今泣いていたかと思うと、急に興奮して怒り出すような状態だったそうです。

食事を拒んだので、看護師さんがそそくさとアルツ君の食事を片づけてしまい、その看護師さんがカーテンのタッセルのフックに自分の背中をぶつけてしまった瞬間、アルツ君が『ざまあみろ!』と言ったそうな…。


・入院8日目 ~ 12月02日(火)

姉がK病院に連絡し、K先生からアルツ君の病状説明と今後の治療についてお伺いすることになっていました。

病室に行くと、アルツ君は眠っていたので、姉とヤッチはデイルームに腰かけ、声が掛かるのを待ちます。

約束の時間になると、看護師さんからナースステーションに来るように言われます。

狭いナースステーションの中に入るように言われたのですが、K先生、K病院のソーシャルワーカー(社会福祉士)さん、PT(理学療法士)さん、姉、ヤッチが中に入ったものですから、立ち飲み屋さんにでも来たような雰囲気です。

看護師さんも数人、中で仕事をしています。

ヤッチと姉は丸椅子を用意され、腰かけるように促されます。

K先生もパソコンのモニターの前に座っています。

K先生:「病状説明ということなのですが、まあ、前回お話ししたことと、あまり変わりはないかな~。」

今回はヤッチも萎えずに先生に食い下がります。

ヤッチ:「父がこちらに入院したときに、先生は『心原性の脳梗塞かもしれない。』というようなことをおっしゃってましたが、やはり、父の脳梗塞は『心原性』なんでしょうか?」

▽引用
脳梗塞の成り立ち
「脳梗塞」は、脳の血管が細くなったり、血管に血栓(血のかたまり)が詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるために、脳の細胞が障害を受ける病気です。

脳梗塞は詰まる血管の太さやその詰まり方によって3つのタイプに分けられます。症状やその程度は障害を受けた脳の場所と範囲によって異なります。

脳梗塞の種類
ラクナ梗塞
脳の細い血管が詰まって起こる脳梗塞【小梗塞】
脳に入った太い血管は、次第に細い血管へと枝分かれしていきます。この細かい血管が狭くなり、詰まるのがラクナ梗塞です。日本人に最も多いタイプの脳梗塞で、主に高血圧によって起こります。ラクナは「小さなくぼみ」という意味です。

アテローム血栓性脳梗塞
脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞【中梗塞】
動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなった太い血管に血栓ができ、血管が詰まるタイプの脳梗塞です。動脈硬化を発症・進展させる高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病が主因です。

心原性脳塞栓症
脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞【大梗塞】
心臓にできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰まらせるものです。原因として最も多いのは、不整脈の1つである心房細動。ミスターG・長嶋茂雄氏を襲ったのも、このタイプの脳梗塞です。
NO!梗塞.netより引用
△引用

K先生:「その可能性(心原性脳塞栓症の可能性)も否定できないんだけど、いろいろ精査していくと、ちょっと難しいところかなぁ…。」

ヤッチ:「じゃあ、三つあるうちのどれに当てはまりますか?」

K先生:「まあ、『アテローム』(アテローム血栓性脳梗塞)かなぁ。勘違いしないでね。これは違う、これは違うとやっていった結果だからね。」

ヤッチ:「消去法の結果、『アテローム』ということですか?」

K先生:「まあ、そういうことになるかな~。」

今度は姉が質問します。

姉:「何日か前なんですけど、父が足が痛い痛いと大騒ぎしたときが有ったんですけど、大丈夫なのでしょうか?」

K先生:「それはどっちの足?」

姉:「たぶん、右足だと思うんですけど、本人は『どこが痛いかわからない』と、最後には泣いてしまうくらいでして…。」

K先生:「足といってもいろいろあるけど、どの辺なの?」

姉:「たぶん、右足の太ももの裏辺りだと思うんですけどね…。」

K先生:「右じゃあ、麻痺足(側?)でしょ。リハビリをしているから、そういうこともあるんじゃないかな。筋肉痛っていうこともあるし…。」

K先生は、ヤッチの後ろに立っていたPTさんに話し掛けます。

K先生:「今、リハ、どのくらいやってるの?」

PTさん:「時間ですか?」

K先生:「うん。」

PTさん:「午前と午後に二回やらせていただいてるんですけれども、一回につき、だいたい一時間くらいです。ただ、移動したり、準備が有るので、正味、一回につき、40分程度じゃないでしょうか。」

ヤッチ:「えー。そんなにやってるんだ。それじゃあ、疲れるわけだぁ~。」

K先生:「まあ、足のことについては、僕のほうも頭に入れておくことにします。」

ヤッチ:「で、父の麻痺の程度はどのくらいのものなのでしょうか?」

K先生は再び、PTさんにたずねます。

K先生:「評価は入っているんだろ?」

PTさん:「はい。上肢(肩から指先まで)については、中等度の麻痺で、下肢(股関節から足先まで)については、軽度の麻痺です。」

ヤッチ:「えっーーー。足(脚)にも麻痺が有るんだぁ~?動かしていたから、麻痺していないと思っていたんだけどな…。」

PTさん:「はい、立っていただくと、じゃっかん、傾いてしまうので…。」

ヤッチ:「嚥下(えんげ)はどうなんでしょうか?」

K先生がPTさんにたずねます。

K先生:「ST(言語聴覚士)の評価も入ってるんだろ?」

PTさん:「はい、STはこの場におりませんが、STからは『飲み込みは問題ない』というのだけ聞いています。」

姉:「先生、今、父は、『あわわわ。』と何を言っているかわからないような状態ですけど、段々、しゃべれるようになっていくんでしょうか?」

K先生:「梗塞を起こした脳の部位が部位だけに何とも言えないところだけど、お父さん、こっちの言っていることは、理解してるようだよね。『聞く』、『話す』、『読む』、『書く』が全部できないと、『全失語』といって、重症だけど、お父さんの場合、『聞く』についてはクリアできていると思うよ。『読む』、『書く』については、大変失礼だけど、(認知症だから)あまり得意じゃないでしょ!?」

姉:「残る『話す』が心配なんですよね…。」

K先生:「まあ、診させてもらった限りじゃ、失語症というよりも、『こうご』障害っていう感じかな。」

ヤッチ:「コ・ウ・ゴ…????」

K先生:「そう、『こうご』。『こうご』の『こう』は『構文』の『構』で、それに『語る』って書くんだけど。」

ヤッチ:「『構語障害』ということ???」

K先生:「臨床の世界ではいろいろあるんだけど、早い話が呂律が回らないなんだけど、言いたいことは頭に浮かんだいるんだけど、一つ一つの言葉を整理して上手く組み立てられないというのかなぁ…。」

K先生のおっしゃったことのニュアンスはヤッチもキャッチできましたが、ここで説明しろと言われれば、ヤッチも『構語障害』です。

失語症と構語障害の境界線が見えてこない…。

K先生:「で、脳梗塞の時にはご存知のように、こういうことが起こるんだけど、これは『きゅう麻痺』から来てるんだよ…。」

K先生がこうおっしゃたかどうかは定かではありません。

ちょっと聞き取れなかったし、理解できませんでした。

K先生:「『きゅう麻痺』の『きゅう』は『たま』って書くんだけどさ…。」

ヤッチは『玉』を連想しましたが、『球』のようですね。

つまり、『球麻痺』…。

ちょっと、落ち着いてから調べることにします。

m(__)m

ヤッチ:「…。(むしろ???)」

K先生:「いずれにしても、リハをきちんとやっていけば、その過程で徐々に良くなっていくでしょう。ただ、女性よりも男性の方が、途中であきらめちゃうんだよなあ。特に高齢になると、ますます。女性の方が長生きなのはそのせいじゃないかと思うんだよなあ。」

姉:「リハビリのことはそちらにお任せするしかないので、よろしくお願いいたします。」

ヤッチ:「今後の治療についてお伺いしたいのですが?」

K先生:「入院される時にお話ししたと思いますが、当面は点滴治療かな。」

ヤッチ:「具体的にはどんな薬を使うんですか?この間はラジカットという点滴薬がぶら下がっていたようですけど?」

K先生:「あれは脳保護剤で、もう一つ、グリセレブというのを使います。これは頭蓋内の浮腫をとってあげる薬。」

ヤッチ:「それと、栄養?」

K先生:「そう、今、ヴィーン3Gというのを使ってるんじゃなかったかな!?」

ヤッチ:「点滴治療はどのくらいの期間になりますか?」

K先生:「入院時から2週間やっていきます。その後は経口投与、つまり、飲み薬に切り換えて、二つの薬を飲んでもらいます。お父さん、バイアスピリンを普段服用しているのに脳梗塞になったよね?」

ヤッチ:「まあ、そういうことになりますね…。」

K先生:「だから、バイアスピリンだけじゃ、効かないかもしれない。ダプト(DAPT)っていうんだけど、二剤併用療法で進めていきます。」

アルツ君の救急搬送時にK先生はこのことをおっしゃりたかったのかもしれませんね。

脳梗塞の治療の中で出て来る医療用語を聞くと、どうしても、『刀』、『手裏剣』、『侍』を連想してしまうのはヤッチだけでしょうか。

ヤッチ:「その二刀流の方法で使う薬はワーファリンですか?」

K先生:「いや、ワーファリンは使わないよ~。バイアスピリンは抗血小板薬なんだけど、バイアスピリンともう一つ違う抗血小板薬を使って、二剤にします。」

薬の名前をお伺いするのをわすれました…。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

K先生:「それと並行して、スタチンっていうんだけど、コレステロール値下げる薬を飲んでもらいます。」

ヤッチ:「期間は?」

K先生:「概ね二週間といったところかな…。これは様子を見ながらになるからね。短くなる場合も有ります。」

アルツ君の入院期間が3~4週間となるのは確実のようですね。

K先生:「まあ、ご家族としては色々とご心配でしょうが、『老化』には勝てませんよ~。目の前にあるパソコンの画像を見てごらん。お父さんの脳の画像だけど、脳と頭の骨の間隔が1cm以上空いているもの。前頭葉に至っては、1.5cmは有るんじゃないかな。」

ヤッチ:「はい…、私も正直できる事なら、画像を見たくなかったです…。」

ヒアルロン注射ですき間を埋められないのかなぁ…。

この後もK先生から色々とお話を聞きましたが、雑談が多かったので省略します。

ヤッチ:「最後に一つだけお願いがあるんですけど、よろしいでしょうか?」

K先生:「はい、何でしょう?」

ヤッチ:「父にまた何か有った時に、すぐに対応できるよう、父の脳の画像をいただけないでしょうか?」

K先生:「CT?MR?」

ヤッチ:「どちらも。」

K先生:「かまわないけど、印刷したものが欲しいのかな?それともCD-ROM?」

ヤッチ:「それは先生のほうのご都合でどちらでもかまいません。」

K先生からの病状説明は終了です。

病室に戻ると、アルツ君、眠っています。

姉とそっとしておいてあげようということで一致し、帰ることに…。

帰り支度をしていると、看護師さんがCD-ROMを持って来て下さいました。

失敗しました…。

印刷した画像をもらえばよかったです…。

家に持ち帰り、自分のパソコンでCD-ROMの中身を見てみると、フォルダがたくさんあります。

フォルダの中はjpgやgifの拡張子が並んでいると思ったのに拡張子すら付いていません。

windowsに付属の画像閲覧ソフトでは読み込めないようです。

やっと、CD-ROMの中に簡易的な画像閲覧ソフトが入っていることに気づき、実行ファイルをクリック。

読み込んだものの、画像の数がたくさん有り過ぎです。

どれがCTの画像なのか、MRの画像かもよくわかりません。

しばらくPCと格闘し、どうにか閲覧ソフトを使えるようになりました。

CTの画像の場合、頭の骨が白く写ることがわかり、自分的には大発見です。

アルツ君の脳梗塞がわかると思われる画像を以下にアップしました。

梗塞箇所はわからなくても、アルツ君の脳の委縮具合はよくわかると思います。

画面をご覧になって、右側(向かって右)が左脳です。

アルツ君が仰向けに寝ているところを、足元から写真を撮ったと考えると、頭の中がこんがらないかも…。

MRIの画像では白く稲光のように写っているところが梗塞箇所です。

MRAは脳の血管(動脈)の画像で、左脳の血管の影が薄くなっているところが梗塞箇所です。(わかりにくい…。)

興味ある方はご覧になって下さい。

もしかすると、全然見当違いの箇所の画像をアップしているかもしれないので、あしからず…。

素人が簡単に読影できたら、専門の技師さん、必要ないですもんね…。

(; ̄ー ̄川 アセアセ

画像はクリックすると拡大することができます。


MRIの画像(2×2)
MRIの画像(2×2)


MRIの画像(2×1)
MRIの画像(2×1)


MRAの画像(3×3)
MRAの画像(3×3)


CTの画像(4×3)
CTの画像(4×3)


・追記
K先生はアルツ君が今回の脳梗塞ではなく、過去にやったの脳梗塞で右側の目があまりよく見えていないのではないかということをおっしゃっていました。
『お父さん、右側の壁に体をぶつけたりしていなかった?』とおっしゃっていました。

別件で、今回の脳梗塞で、アルツ君が両目を閉じた時、ほんのちょっとですが、うっすら右目だけ開いていて、閉眼しないのが気になります。
顔面神経麻痺も有るかもしれませんね~。


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2014/12/06 | コメント (2) | トラックバック (0) | ホーム | ▲ Page Top

嚥下機能の改善に向けて ~ 入院15日目から17日目

2014/12/13 (土)  カテゴリー: 脳梗塞
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こんにちは。

アルツ君の息子ヤッチです。

省略している箇所もありますが、三日間の事をまとめて書くので長編です。

ストーレートネックにならないよう、また時々意識的にまばたきしながら読み進めて下さい。

さて、2014年12月09日の火曜日、アルツ君の入院15日目です。

アルツ君が夕食を食べてくれないということを姉からの電話で知り、この日からヤッチが食事介助をすることになりました。

その前にST(言語聴覚士)さんが、アルツ君の今の状態を教えて下さるということで、お昼過ぎに病院でお話を伺うことになりました。

▽引用
言語聴覚士とは
言語聴覚士(げんごちょうかくし、英: Speech-Language-Hearing Therapist (ST))は、医療従事者(コ・メディカルスタッフ)の一員であり、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、視能訓練士(ORT)と共に、リハビリテーション専門職と称されるうちの一つである。
定義
言語聴覚士法(1997年制定)に基づき、言語聴覚士(げんごちょうかくし)とは、厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいうと定義されている。
業務
言語聴覚士が対象とする主な障害は、ことばの障害(失語症や言語発達遅滞など)、きこえの障害(聴覚障害など)、声や発音の障害(音声障害や構音障害)、食べる機能の障害(摂食・嚥下障害)などがある。これらの障害は、生まれながらの先天性から、病気や外傷による後天性のものがあり、小児から高齢者まで幅広く現れる。
言語聴覚士は、このような障害のある者に対し、問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために様々なテストや検査を実施し、評価を行った上で、必要に応じて訓練、指導、助言その他の援助を行う専門職である。
△引用

ヤッチも顔面神経麻痺で入院したときに、STさんのリハビリを受けましたが、アルツ君の場合、主に失語、摂食・嚥下(えんげ~飲み込み)のリハビリを受け持つのが、このSTさんになると思います。

病院のデイルームで時間を潰していると、他の患者さんのリハビリを終えたアルツ君担当のSTさんがいらっしゃいます。

イメージしていたより、ずいぶんお若い印象…。

20代前半と思われるかわいらしい御嬢さんといった雰囲気です。

あいさつから始まり、さっそく話を始めます。

STさん:「お父様なんですけど、やはり、飲み込みの力が少し落ちているようですねえ。」

ヤッチ:「やはり、そうですか…。」

STさん:「お食事されている時のご様子を拝見したのですが、なにかを飲み込んだ時、『のどぼとけ』が男性の場合、動くと思うんですが、少しタイミングが通常と比べてずれるんですね。『ごっくん』とやった時に、上下するのですが、その動きが遅いようでして…。」

ヤッチ:「なるほど…。そう言えば、先日、父の意識が遠のいて、吐いたって聞いたんだけど、何か関係が有るんですかね?」

STさん:「私自身はその場に居合わせなかったので、聞いた話になりますが、『食べ物をのどに詰まらせて窒息しそうになられた』と伺っていますけど…。」

ヤッチ:「え?そうなの?じゃあ、やっぱり飲み込む力が弱くなってるっていうことなのかな?」

STさん:「聞いた話なので、この辺は何とも申し上げられないところですね…。よろしければ担当の医師から聞いてみてはいかがですか?」

ヤッチ:「了解です。」

ST:「で、私のほうはですね…。」

「食べる」しくみ01 「食べる」しくみ02

[ クリックで拡大できます ]

「食べる」しくみ03 「食べる」しくみ04


STさんは何かの本をコピーしたと思われる用紙を一枚、テーブルに広げます。

書かれている内容は人がものを食べる時のしくみ(摂食嚥下~せっしょくえんげ)のようです。

▽引用
摂食嚥下のメカニズム
目の前のものを食物と認識して口に入れ、噛み砕いて飲み込む一連の流れを摂食といいます。嚥下はその一部。食物が口から胃に至るまでの流れは、いくつかの段階に分けて考えると理解しやすいでしょう。

  1. 認知期(先行期)
    ★食物の認識
    目の前のものを食物として認識
    「おいしそう!これを食べよう」
  2. 捕食
    ★口への取り込み
    食物を運んで口内に入れ、唇を閉じる
    「ぱくっ」
  3. 準備期
    ★咀嚼と食塊形成(しょくかいけいせい)
    食物を噛み砕き、口の中でドロドロの塊(食塊)にする
    「もぐもぐ」
  4. 口腔期
    ★咽頭(いんとう)への送り込み
    食塊がのどの奥(いんとう)に送り込まれる
    「うーん」
  5. 咽頭期
    ★咽頭通過、食道への送り込み
    嚥下反射(えんげはんしゃ)が起き、食塊が食道に送り込まれる
    「ごっくん」
  6. 食道期
    ★食道通過
    食道の壁が収縮・弛緩(しかん)をくりかえしながら、食塊を下へ下へ送り、胃に到達させる
    「すっー」
STさんからもらった用紙から引用
△引用

STさん:「お父様の場合は、『1』の認知期に一番問題が有ると思います。食べ物を見て、『おいしそう』と認識できなくなっていると思うんですね。つまりは認知機能の低下です。」

ヤッチ:「まあ、たしかに、もともと食いしん坊でしたから、おっしゃられる通りですね…。」

STさん:「次に問題なのが、『4』と『5』の口腔期と咽頭期のところです。」

ヤッチ:「コウクウキなんていうと、空を飛びそうだね?」

STさん:「…。その口腔期に関しては、ベロの感覚ですね。」

ヤッチ:「味覚障害が有るっていうことですか?」

ST:「いえ、そういうことではなくて、ベロの動きですね。この動きが脳梗塞の影響で悪くなってしまわれている…。」

ヤッチ:「ふん、ふん。それで?」

STさん:「咽頭期のところは、パワー、筋力、タイミングですね。」

ヤッチ:「ん?どういうこと?」

STさん:「飲み込む時、『ごっくん』てやると、軟口蓋、早い話が『のどちんこ』が鼻の方に逆流しないように、上がるんですね。それと同時にのどに咽頭蓋というものが有るのですけれど、これが下がって気管の入り口にフタをして、食べ物が気管のほうに入らないようにするんですね。男性ですと、先ほど申し上げましたように、外から見ていると、『のどぼとけ』が下がるわけなんですよ…。これが嚥下反射と呼ばれるものなんです。」

『のどぼとけ』が上がると、おっしゃったかもしれません。

ヤッチ:「ちょっと待ってね?」

ヤッチ、自分の唾を飲んでみます。

画面の前で同じことをしたアナタ、『ハッピーアイスクリーム!』です。

死語?

ヤッチ:「ん…。言われればその通りかもしれないけど、イマイチ、『のどぼとけ』が上がってるんだか、下がってるんだかわかんないや。」

STさん:「たぶん、この動作を一秒かからない速さでやっていますから…。」

ヤッチ:「クリント・イーストウッドなら、もっと速いね?」

STさん:「…。」

ヤッチ:「すんません、ジジイしかわからない話です。それで?」

STさん:「お父様の場合、咽頭蓋が下がるのがすこし遅いんですね。そこで必要なのが、パワー、筋力、タイミングということなんです。」

ヤッチ:「なるほど…。」

STさん:「今、お父様にリハビリでこの辺を改善していただくよう、私もお手伝いさせていただいています。」

すみません…。

STさんがあまりにもかわいい御嬢さんだったもので、ヤッチ、舞い上がって具体的にどんなリハビリをしているのか、聞くのを忘れてしまいました…。

ヤッチ:「ありがとうございます。」

STさん:「ただ、どうしても『食べたい』という意欲がわかないと、飲み込んでもらえないので、この辺が難しいところです。」

ヤッチ:「そうですよね…。今日の夕飯から、私も親父がどんな風に食べているのか見させていただきますから、少しは協力できるとは思うんですけどね…。」

STさん:「どうもありがとうございます。で、お父様の飲み込みが少しずつ良くなってきたら、私のほうはケータイを変えようと思ってるんですよ???」

まだ初対面だし、俺に相談されてもな…。

ヤッチ:「どういうことですか?」

STさん:「食事の形態のことです。今はミキサー食にとろみをつけてお出ししていますが、キザミ食くらいまでは持って行きたいと考えてるんですよ。」

ヤッチ:「そのケータイね?なるほどなるほど…。」

STさん:「たぶん、今のミキサー食だと、食べていても、あまり楽しくないと思うんですよ…。」

ヤッチ:「そりゃあ、噛み応えが有った方がいいもんね?」

STさん:「そうなんです。キザミ食まで持って行きたいなあと…。」

ヤッチ:「そのためには、食べる意欲を起こさせるですか?ちょっと、今日の夜、試してみますわ。あと、失語の件なんですけど、STさんからご覧になってどうですか?」

STさん:「言葉が上手に組み立てられないというのは、若干あるかもしれないですけど、むしろ舌の動きが良くないので、こちらが聴き取りにくいということが起こっていると思います。こちらが申し上げることは、お見受けする限り、理解できていると思います。」

ヤッチ:「そうですか。そうおっしゃっていただけるとうれしいです。」

STさんから、このあとしばらく、どんな食品が飲み込みやすいかとか、日頃、簡単にできる発声練習などについて、説明を受けました。

STさんとの面談が終わり、ヤッチはアルツ君の病室に行きます。

病室が広くなったなと思ったら、アルツ君の足元に設置されていたモニタも、無くなっているし、点滴もぶら下がっていないためでした。

ミトンも着けていません。

入院後、二週間くらいしたら、点滴から飲み薬に切り換えると担当医師がおっしゃっていたので、その時期に来たのかもしれません。

相変わらず、口呼吸で、寝ております。

でも、すぐに目を覚ましました。

アルツ君:「ばあさんどうした?」

ヤッチ:「まさに寝ても覚めても『ばあさん』だね?」

アルツ君:「バカなこと言ってんじゃないよ。(まだ宇宙語訛りです。)」

そのキノコさん(ばあさん)ですが、自分のケアマネさんから宅配のお弁当を勧められたそうです。

介護保険を使って、一食300円だとか…。

キノコさん、肉の入っているものは全然食べられません。

あらかじめリクエストを出しておいたのに、宅配の弁当業者が間違えたらしく、最初の二回、連続肉料理のお弁当だったとか…。

これをアルツ君に聞かせると大笑いです。

かなり上機嫌な様子です。

夕食を食べてもらうための布石として、午後のうちからアルツ君のテンションをアップしておきました。

宇宙語訛りの会話形式で文章を書くと、臨場感を伝えられないので、今回もYouTubeで。

というより、ヤッチの手抜きです。

m(__)m



この後、アルツ君は疲れて眠ってしまいました。

時刻にして午後4時ごろだった思います。

ヤッチは一旦自宅に戻ろうと考えましたが、アルツ君の夕食は18時から…。

病院までは片道自転車で40~50分程度かかるので、帰ってしまうと夕食に間に合わなくなってしまいます。

仕方なくデイルームで時間を潰します。

午後5時半頃にアルツ君の病室に戻り、アルツ君を起こします。

食事が出されてから、アルツ君を起こしてすぐに食べさせるのはちょっとかわいそうだと思ったので、少し早目に起こしました。

18時よりちょっと前に食事が用意されました。

すべてミキサー食でとろみがついています。

ほうじ茶らしきものも吸い飲みで用意されましたが、これにもとろみがついています。

夕食のおかず類ですが、ヤッチも少しずつ手のひらに落として試食しましたが、微妙です。

普段自分の食事も塩分控えめにしていますが、少し薄く感じました。

おかずの品数は豊富な印象です。

むしろ年寄りがこんな食えるのかという印象です。

デザートは、パインか何かをミキサーしたもの、ヨーグルト、プリン…。

たぶん、こっちを先に食べたら、ヤッチの場合だったら、お腹いっぱいです。

アルツ君のベッドのリクライニングを起こし、用意されたエプロンを装着します。

アルツ君:「ばあさんは?」

ヤッチ:「ばあさんなら地下だよ。旦那さんのために、このメシを全部すりこぎで擦ってたよ。へとへとになって帰っちゃったかもな…。」

ヤッチは適当な方便を使います。

アルツ君:「そっか、そっか…。」

またしても、『ケンケン泣き』です。

ヤッチ:「泣くなよ。せっかく塩分控えめに作ってくれたのに、涙を垂らしたら、味が濃くなっちゃうだろ。」

アルツ君:「そっか、そっか…。」

ヤッチ:「とりあえず、水分が出ちゃったから、ちょっとだけお茶を飲みな。ゆっくりだよ。」

吸い飲みのお茶をアルツ君の口元に運びます。

飲めるじゃん。

そうとう吸引力が落ちていると思っていましたが、逆にズルッと口の中に入ったので、ちょっと焦ります。

次はいよいよメインの食事です。

用意されたアルツ君の食事のトレーにはスプーンが用意されていましたが、ヤッチ、どのくらいのおかずをスプーンに載せてよいのかわかりません。

ちょっと手さぐりで、少量を口に運ぶことに…。

ヤッチ:「旦那さん、ばあさんの愛情だぞ。口を開けてみん?」

アルツ君が口を開けます。

うん、ちょっと開けた口の印象がいつもと違うのは、STさんのおっしゃっていたように、舌に力が入っていないためのようです。

スプーンを口の中に入れます。

ここから先、アルツ君の言葉は宇宙語混じりですが、ヤッチが翻訳してお送りします。

アルツ君が口を閉じます。

ヤッチ:「美味いか?『ごっくん』ってできるか?」

アルツ君がうなずきます。

STさんや姉は『飲み込むのがやっとだ。』と言っていましたが、ヤッチにはそれほどでもない印象です。

スプーンに載せたおかずが少ないから?

ヤッチ:「どう味は?」

アルツ君:「ふつうだよ、ふつう…。」

ヤッチ:「今、苦しくならないっていうことは毒は入っていないようだな。」

アルツ君:「バカ!」

ヤッチ:「じゃあ、も少し多目に放り込んでみるか?そっちの方が美味いべ?」

アルツ君がうなずきます。

ヤッチ:「その前に俺がちょっくら毒味な?うん、大丈夫だ。死ぬほどのことは無い。気合で乗り切れ!」

アルツ君、口を開けて待っています。

ヤッチ:「あのなぁ…。その『よきにはからえ』的な姿勢はなに?もう少し遠慮っていうもんしろよ!」

アルツ君:「いいから、はやく食わせろ。」

ヤッチ:「味わって食えよ。ばあさんの愛情なんだから。」

少し多めに投入しましたが、むせずに飲み込むことができました。

このあとも、そのあとも、同量をアルツ君、ごっくん…。

ヤッチも段々、要領をつかんできました。

アルツ君の口にスプーンを運ぶとき、少し舌の奥の方におかずを運んであげる方が飲み込みが楽なようです。

あまり奥過ぎても、あぶないですが…。

また、味の薄いものと濃いものは、味が変にならなければ、混ぜてスプーンに載せるのも手かも?

ヤッチ:「どうだ?美味いべ?」

アルツ君がうなずきます。

途中、会社を終えた姉も合流します。

ヤッチ:「お客様、サービス料、高くつきますけど、延長のほうはいかがなさいますか?」

アルツ君:「いいから早く食わせろ。」

ヤッチ:「お客様、おかずの方は終了なので、キノコさんがフルーツの盛り合わせを注文しても良いかと言ってきていますけど?」

アルツ君に耳打ちします。

アルツ君がうなずきます。

アルツ君のテーブルの上にアルツ君が飲まなくてはならない薬が用意されています。

姉に聞くと、まだお茶や水で一緒に飲めないとの事。

看護師さんから『仕方ないので、食事の上に載せて、少しずつ飲ませ下さい。』と言われているそうです。

ヤッチ:「では、フルーツ盛りを注文させていただきま~す!」

アルツ君、ヨーグルトの酸味があまり得意ではないので、プリン、パイン(?)などのデザート類を同じ皿に入れ、ヨーグルトと一緒にかき混ぜます。

ヤッチ:「はい、抑肝散(服用薬)載せのデザートです。ちょっと苦いですけど、我慢してくださいね~。」

アルツ君:「にがーい。」

ヤッチ:「じゃあ、口直し、口直し。」

ヤッチは抑肝散の載っていないデザートをアルツ君の口に入れます。

アルツ君:「おまえ、死んじゃうよ~。」

ヤッチ:「だいじょうぶ!死んだら声なんて出ないから。」

アルツ君:「ばか!」

ヤッチ:「最後にお茶を飲んでください。ドンペリですよ、ドンペリ。」

アルツ君、お茶はあまり飲みたがらないようです。

アルツ君が全部食べ終わるまでに一時間程度かかったのではないでしょうか。

長丁場となったため、少々、途中経過は省略させていただきましたが完食です。

飲み込む力が弱いといえば弱いですけど、時間を掛けてゆっくり食事を摂れば、食べられそうな気配です。

ちょっと気になったのは、舌の右半分に少し麻痺が有るのか、食べ物を飲み込んだ後、口の右半分におかずが残ってしまうことが有るようです。

舌で上手くすくえないのか、顔面神経麻痺が有るのかもしれません。

あとは、アルツ君の食べる意欲の低下は、日中のリハビリのせいなのではないかと思います。

日中、午前と午後に1時間ずつリハビリをしているので、夕食時に疲れ果てて眠くなってしまうのでは…。

その証拠に、アルツ君、夕食時ほとんど目を開けません。

他に異常が有るのかもしれませんが、眠気も否定できません。

よく小さな子供が、ご飯を食べながらフラフラと眠ってしまう光景を目にしますが、あんな状態になる時があります。

見方によっては、これが『意欲低下』です。

まだ、口に水を含んで、ブクブクするのは無理な様子です。

自分の手でスプーンを持つのも進んでやろうという姿勢は見せません。

OTさんが麻痺側ではない左手でスプーンを持ってもらうようなリハビリもしてくださっているようですが…。

残念ながら、麻痺側(右側)の肩、腕までは力が入るようですが、指先は動かないままです。

まあ、たまたまなのか、わかりませんが、今まで食欲が無い、食事を摂りたがらなかったアルツ君ですが、完食です。

結局、入院16日目となる12月10日(水)、17日目となる12月11日(木)も夕食について、ヤッチが介助に行き、偶然にも完食することができました。

アルツ君の食事摂取量(12/09~12/11までの3日間)
12月09日(火)
朝 10
昼 7/4※
夜 10
12月10日(水)
朝 0
昼 6/7※
夜 10
12月11日(木)
朝 1/1※
昼 4/3※
夜 10
※ 主食/副食を示します。 完食した場合を10とし、7/4の『7』は主食を7/10、『4』は副食を4/10食べたという意味です。


ちなみにアルツ君ですが、前々から認知症であるという病識はありませんでした。

今回の脳梗塞について、自分が脳梗塞で入院したということはわかっていませんが、さすがに寝ているベッドから看護師さんやお医者さんの姿が目に入るので、なにかの病気をしたらしいという意識は少しだけあるようです。(自覚のない場面もありますが…。)

アルツ君いわく、(病気を)治しているのではなく、修理しているのだそうです。

この微妙なニュアンス、

アルツ君

さすがです…。

(; ̄ー ̄川 アセアセ


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2014/12/13 | コメント (0) | トラックバック (0) | ホーム | ▲ Page Top
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